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2019年11月4日月曜日

戦争の悲惨さと不条理を知り、平和のうちに生きる権利が憲法9条により守られてきたという信念をもつ者にとって、9条の改変は、戦争、テロ、諸権利が蹂躙される国などを強迫的に想起させ、強い恐れと不安をもたらす。(橋本佳子)

戦争体験者の精神的苦痛

【戦争の悲惨さと不条理を知り、平和のうちに生きる権利が憲法9条により守られてきたという信念をもつ者にとって、9条の改変は、戦争、テロ、諸権利が蹂躙される国などを強迫的に想起させ、強い恐れと不安をもたらす。(橋本佳子)】

原告らの被害
(1)戦争の地獄の苦しみ
 戦地での地獄を経験した戦闘経験者、戦火を逃げ惑い命の危険にさらされた戦争被害者は言うに及ばず、戦後生まれの者も、親から子、子から孫へと確実に、戦争の悲惨さと不条理とが語り継がれている。
(2)平和、憲法9条への思い
 (2.1)原告らは戦後、平和に暮らせることがどんなに幸せかを噛みしめて生きてきた。
 (2.2)原告らの基本的な信念
  (a)平和のうちに生きる権利とは、日常生活を安心して過ごせるということである。これは、何ものにも代えがたい基礎的な権利である。
  (b)平和のうちに生きる権利を保障してくれているのが、憲法であり第9条である。
(3)安保法制の制定による被害
 (3.1)安保法制の制定により、基本的な信念となっている平和のうちに生きる権利が、侵害されるのではないかという恐れと不安が発生した。この恐れと不安は、根拠のないものではない。なぜなら、この権利を保障していた第9条が実質的に壊されてしまったからである。
 (3.2)特に、戦争体験者や戦争の悲惨さと非条理が信念の一部となっている原告にとっては、この恐れと不安は、単に抽象的で漠然としたものではなく、精神的ではあるが極めて具体的な危害を、原告らに与えている。
 (3.3)発生する可能性が否定できない諸々の事象:国内米軍基地への攻撃、報復テロの発生、特に原発へのテロ、秘密保護法、共謀罪法など戦前日本への逆戻り、戦争。
  (a)「今後日本はアメリカに追随する国と見なされ、テロに巻き込まれる危険」
  (b)「朝鮮半島で戦争になればアメリカの基地が集中する日本は確実に戦場になってしまう」
  (c)「安保法制後戦争参加の体制を整えつつある。平和の保障はもうなくなり、休まることのない不安を背負った生活になってしまった」
  (d)「自衛隊と米軍との一体化が進み、その報復としてテロの恐怖が高まっている」
  (e)「安保法制以降、北朝鮮や中国の脅威をあおり、自衛隊の装備を拡大して米軍一体化が強まりテロの恐怖がつのる」
  (f)「侵略戦争を行うアメリカに追随することで、日本へのテロの不安・恐怖観念に苛まれている。それが、憲法改正手続きの国民投票の手続きを経ずに行われたことで怒りがより強くなる」
  (g)「基地の近くに住んでおり自衛隊基地が狙われれば大勢の市民が被害を受ける」
  (h)「安保法制後の米艦防護の動きとともに言論統制の動きも恐れる」
  (i)「秘密保護法、安保法制、共謀罪法と戦前の日本に戻りつつある」
  (j)「特に原発を幾つも持つ日本は爆弾を落とされたら国は壊滅することから1日として平安な日はない」
  (k)「副総理が『憲法改正はナチスのやり方を見習ったらどうか』と言ったことが安保法制後同様に進行しているように思う。一気に物を言えない治安維持法の時代に変ってしまう恐ろしさ。」
  (l)「死ぬ時は一緒と命からがらソ連から逃げてきたのに副総理がナチスのやり方をまねせよなど戦争が準備されていく恐怖」
(4)教員の精神的苦痛
 戦前の教育の反省から「教え子を再び戦場に送らない」のスローガンを受け継いできたが、安保法制により教え子たちが戦場に行く現実が目の前に迫っている。
(5)子や孫が戦争に巻き込まれることの不安
(6)民主主義違反と憲法改正決定権の侵害

「2 多数の陳述書に通底し、 浮かびあがってくる原告らの被害
(1) 戦争の地獄の苦しみ
 多くの戦争体験者が命からがら逃げ、命をつなぐことができた体験と戦後の極貧の苦しみを訴えています。戦争の悲惨さと不条理が、戦地での地獄を経験した戦闘経験者、戦火を逃げ惑い命の危険にさらされた戦争被害者は当然、戦後生まれの者も親から子、子から孫へと確実に語り継がれていることが明かとなります。多くの原告が、祖父母や両親から悲惨極まる戦争のはなしと「戦争だけは絶対にしてはならない」と繰り 返され、自分の血肉となっているのです。
(2) 平和、 憲法9条への思い
 あの悲惨を極めた戦争を経験して、またはその話しを聞き、原告らは戦後を平和に暮らせることがどんなに幸せかを噛みしめて生きてきたのです。日常生活を安心して過ごせることの喜びが何よりも代えがたいものであること、これが自分の平和のうちに生きる権利であり、自分の人格と一体となっていることを訴えています。それを支えているのが憲法であり、9条であるという確信に充ち満ちています。「平和憲法が、9条があるのだから戦争になることはないと信じて生きてきた」この言葉が陳述書に最も多く出てくる言葉です。
 「平和憲法は自分の生き方の指針であり、憲法が踏みにじられたことは生き方を全否定された精神的苦しみである」「世界に対して平和憲法を持つことは自分の誇り」ともいいます。そして多くの原告には、この平和憲法はあのアジアを含めたすべての戦争犠牲者の遺言であり、自分達が守らなければという思いがあります。
(3) 安保法制の制定による被害
 安保法制によって受ける被害としては、戦争をする国になってしまったことへの不安、恐怖をそれぞれの考え、立場から、具体的に語られています。「祖母から戦争の悲惨さ恐ろしさを聞かされて育った。営々として守られてきた9条を亡き者にされた。安保法制により、「戦前」と呼ばれる時代に入ってしまった。」「戦争体験者は戦争の地獄の苦しみを思い出すだけで身が震える」「祖父が獄死した家族は、再び歯ぎしりするような不条理の影が忍びよるに不安に駆られる」などと訴えています。重要なことは、原告らの戦争の不安・恐怖というものが単に抽象的で漠然としたものではないということです。
 「平和の願いを踏みにじるものであり胸が張り裂ける思い」「平和な憲法とともに生きてきた人生のそのものを否定された」という思いとともに、それぞれ、自分の経験や立ち位置で、以下のとおり具体的にその理由を述べています。「今後日本はアメリカに追随する国と見なされ、テロに巻き込まれる危険」「朝鮮半島で戦争になればアメリカの基地が集中する日本は確実に戦場になってしまう」「安保法制後戦争参加の体制を整えつつある。平和の保障はもうなくなり、休まることのない不安を背負った生活になってしまった」「自衛隊と米軍との一体化が進み、その報復としてテロの恐怖が高まっている」「安保法制以降、北朝鮮や中国の脅威をあおり、自衛隊の装備を拡大して米軍一体化が強まりテロの恐怖がつのる」「侵略戦争を行うアメリカに追随することで、日本へのテロの不安・恐怖観念に苛まれている。それが、憲法改正手続きの国民投票の手続きを経ずに行われたことで怒りがより強くなる」「基地の近くに住んでおり自衛隊基地が狙われれば大勢の市民が被害を受ける」「安保法制後の米艦防護の動きとともに言論統制の動きも恐れる」「秘密保護法、安保法制、共謀罪法と戦前の日本に戻りつつある」「特に原発を幾つも持つ日本は爆弾を落とされたら国は壊滅することから1日として平安な日はない」「副総理が『憲法改正はナチスのやり方を見習ったらどうか』と言ったことが安保法制後同様に進行しているように思う。一気に物を言えない治安維持法の時代に変ってしまう恐ろしさ。」「死ぬ時は一緒と命からがらソ連から逃げてきたのに副総理がナチスのやり方をまねせよなど戦争が準備されていく恐怖」などです。
(4) 教員の精神的苦痛
 教員の陳述書が多数あります。戦前の教育の反省から「教え子を再び戦場に送らない」のスローガンを受け継いできたが、安保法制により教え子たちが戦場に行く現実が目の前に迫っている、卒業生やその子どもたちに平和な世界を繋げない苦しさ、とりわけ、「自衛隊員が外国で人を殺し、殺されるようなことになれば子どもたちに顔向けできないと苦しんでいる」という陳述は共通しております。
(5) 子や孫が戦争に巻き込まれることの不安
 多くの陳述書に現れているのが、子や孫の世代が戦争に巻き込まれることの心配と苦しみについて書いて います。あの戦争を経て平和憲法の下、自分達が現在までは平和に過ごしてきたのに、平和憲法が踏みにじ られ、自分の子や孫が戦争に巻き込まれることの確率が高いと感じている。とりわけ、自衛隊の現状から貧 困層の経済的徴兵制が進むのではないか、さらには本格的徴兵制への危険を感じ、子や孫の未来への不安が つのる。当然、これも救済されなければならない被害です。
(6) 民主主義違反と憲法改正決定権の侵害
 多くの怒りが集中しているのが、安保法制の国会での強行採決に対する怒り・憤りであります。内容とともに、その成立過程も自分たちの主権を蔑ろにされたことへの憤りは、多くの原告が国会前やテレビで固唾を飲んで見守る前で文字通り暴力的な強行採決がなされたのであり、当然であります。
 「集団的自衛権の閣議決定には涙し、安保法制の強行採決には怒りで震えた」 「9条を持つ誇りが失われ、安保法制の強行採決の時には3日間の断食をした」と訴えております。
 次ぎに、憲法に定められた憲法改正の手続き、国民投票もなしに違憲の安保法制が制定されてしまったこと対する怒りについても多くの原告が訴えています。「安保法制は憲法を改正しなければできない法律なのに一票を投ずる機会を奪われたままである」「国民の主権がないがしろにされて戦争に向かう法律が通ってしまった」「特定秘密保護法、安保法制が作られる過程は歯ぎしりするほどの怒りと、戦争体験が呼び戻され苦しい毎日を送っている」憲法改正手続きの国民投票も行われず違憲の安保法制の強行採決は原告らの主権を根底から侵害するものであり、原告らの不安、憤り、絶望感は、紛れもなくその侵害による精神的苦痛です。」
(出典:国家賠償請求訴訟 平成28年(ワ)13525号 2019年4月12日 第10回 口頭弁論  報告集会資料(代理人意見陳述)裁判資料・国家賠償請求訴訟安保法制違憲訴訟の会
(索引:戦争体験者の精神的苦痛,日本国憲法第9条,安保法制)

(出典:安保法制違憲訴訟の会
安保法制違憲訴訟の会(2016-)(Collection of propositions of great philosophers)
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