ラベル 1931_ロジャー・ペンローズ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 1931_ロジャー・ペンローズ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年11月18日日曜日

仮説:この宇宙は、今の宇宙のビッグバンの前に「前の宇宙相」の未来の果てが存在し、この宇宙のはるか未来の時空の「向こう側」に「次の宇宙相」のビッグバンが存在するような、無限に連なる構造なのではないか。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

共形サイクリック宇宙論

【仮説:この宇宙は、今の宇宙のビッグバンの前に「前の宇宙相」の未来の果てが存在し、この宇宙のはるか未来の時空の「向こう側」に「次の宇宙相」のビッグバンが存在するような、無限に連なる構造なのではないか。(ロジャー・ペンローズ(1931-))】

(4)追加記載。

(1)ビッグバン直後の宇宙の状態
  ビッグバンの直後は極めて高温で、すべての粒子が事実上、光子のように質量がゼロと考えてもいいような時空構造であったと考えられる。この構造では、局所的なスケール変化の影響を受けない。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

 ビッグバンの直後、恐らくビッグバンの瞬間から10-12秒後あたりまで遡ると、温度は約1016Kを超えていて、物理学はスケール因子Ωをまったく気にしないものになり、共形幾何学が、その物理過程に適した時空構造になると考えられる。そのため、当時の物理的活動のすべては、局所的なスケール変化の影響を受けなかったと考えられる。

(2)はるか未来の宇宙の状態
  指数関数的な膨張が続く宇宙の未来は、宇宙マイクロ波背景放射とホーキング放射による光子、重力子、そして恐らく大量の「ダークマター」から構成され、局所的なスケール変化の影響を受けない構造となる。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

 正の宇宙定数Λをもつ宇宙モデルによれば、われわれの宇宙は最終的には指数関数的な膨張に落ち着くはずだ。それは、なめらかで空間的な未来の共形境界I+をもつだろう。その構成は、
 (a)非常に強く赤方遷移した星の光、宇宙マイクロ波背景放射
 (b)無数の巨大ブラックホールの質量エネルギーのほとんどすべてを、非常に低エネルギーの光子の形で運び去ってしまうホーキング放射
 (参照: ブラックホールは非常に小さな温度を持つ。宇宙の指数関数的な膨張が続くと、やがて宇宙の温度があらゆるブラックホールの温度より低くなる。ブラックホールはエネルギーを放射するようになり、最後は消滅する。(ロジャー・ペンローズ(1931-)))
 (c)重力子(グラビトン)
 (d)おそらく大量の「ダークマター」

(3)ビッグバン直後の宇宙の状態と、はるか未来の宇宙の状態に共通する性質
  宇宙の始めと遥か未来の状態の共通点:(1)質量のない粒子のみ存在する、(2)粒子にとって時間経過が無限に遅くなる、(3)局所的なスケール変化の影響を受けない、(4)始めと無限の未来の「向こう側」への時空の拡張可能性。(ロジャー・ペンローズ(1931-))
 (3.1)宇宙には、質量のない粒子しか存在しなくなる。
 (3.2)時間の経過が意味を持つためには、静止質量をもつ粒子が必要である。質量のない粒子にとっては、時間の経過が無限に遅くなる。すなわち、質量のない粒子は、その内なる時計が最初の時を刻む前に、宇宙においては永遠の時間が経過する。「永遠なんて、たいしたことじゃない」のである!
 (3.3)質量ゼロの粒子は、時空の計量がどのようなものであるかにあまり関心がなく、局所的なスケール変化の影響を受けない構造となる。
 (3.4)理論的には、ビッグバン超曲面をビッグバンの前、「向こう側」までなめらかに拡張することを許容しているように思われる。また、正の宇宙定数Λがあるときには、はるか未来の宇宙の時空を、無限の「向こう側」の未来方向に拡張できることが、数学的に強く支持されている。

(4)宇宙の構造についての、一つの可能性。
 (4.1)はるか未来の宇宙の時空を、無限の「向こう側」の未来方向に拡張した先に、「この」宇宙のビッグバン超曲面が「ぐるりと輪になって」存在しているのではないだろうか。しかし、このような時空には閉じた時間的曲線があるため、因果関係にパラドックスが生じるために、これは除外される。
 (4.2)はるか未来の宇宙の時空を、無限の「向こう側」の未来方向に拡張した先が、「次の宇宙相」の〈ビッグバン〉につながり、この宇宙のビッグバン超曲面をビッグバンの前の「向こう側」までなめらかに拡張したところには、「前の宇宙相」の未来の果てが存在しているのではないだろうか。そして、恐らく宇宙全体は、このようなビッグバンから指数関数的な果てしない膨張までのサイクルが、無限個連続した時空として存在しているのではないだろうか。

 「この点で、一つの可能性が立ち現われてくる。I+とB-が同じ一つのものである可能性はないのだろうか? ひょっとすると、われわれの宇宙は、共形多様体として単純に「ぐるりと輪になって」いるのではないだろうか? I+の先にはまたビッグバンから始まるわれわれの宇宙があって、トッドの提案にしたがい、共形的に引き延ばされてB-となるのではないだろうか? このアイディアの魅力は、その経済性にある。けれども私は個人的に、この提案には一貫性の点で深刻な問題があるため成り立たないと考えている。基本的に、そのような時空には閉じた時間的曲線があるため、因果関係にパラドックスが生じたり、少なくとも、行動に不愉快な制約を課したりするからだ。こうしたパラドックスや制約は、一貫性のある情報がI+/B-超曲面を横切れるかどうかにかかっている。第18章では、私がここで提案するような体系のなかで、このようなことが現実になる可能性があり、また、閉じた時間的曲線が本当に深刻な矛盾を引き起こすおそれがあることを見ていく。このような理由から、私はI+とB-が同じ一つのものであるとは考えない。」
(ロジャー・ペンローズ(1931-),『時間のサイクル』(日本語名『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』),第3部 共形サイクリック宇宙論,第13章 無限とつながる,新潮社(2014),p.173,竹内薫(訳))
(索引:)
 「だから私は次善の策を提案したい。B-の前には「前の宇宙相」の未来の果てにあたる物理的にリアルな時空領域があり、I+の先にも物理的にリアルな時空領域があって、「次の宇宙相」の〈ビッグバン〉が起こると考えるのだ。この提案に合わせて、われわれのB-から始まりI+まで続く宇宙相を「現イーオン〔訳注=aeonとは、はかり知れないほど長い年月のことである〕と呼び、宇宙全体は(おそらく無限に)連続するイーオンからなる、拡張された共形多様体として理解できると考えよう。図3-3を参照されたい。各イーオンの「I+」を次のイーオンの「B-」と同一視することで、前のイーオンと次のイーオンとの連続性が確保され、両者の結合は共形時空構造として完全になめらかなものとなる。
 読者諸氏は、未来の果てと〈ビッグバン〉の爆発を同一視することを不安に思われるかもしれない。未来の果てでは、放射の温度が下がってゼロとなり、膨張により宇宙の密度もゼロになるのに対して、〈ビッグバン〉では、放射の温度も密度も無限大であるからだ。けれども、〈ビッグバン〉での共形的な「引き伸ばし」は、無限大の密度と温度を有限の値まで引き下げ、無限遠の未来での共形的な「押しつぶし」は、ゼロだった密度と温度を有限の値まで引き上げる。これらは両者を一致させるための再スケーリングにすぎず、引き伸ばしも押しつぶしも、両側の物理学に対してなんの影響も及ぼさない。もう一つ言っておくべきことがある。クロスオーバー〔訳注=イーオンとイーオンが重なる部分〕の両側の物理的活動がとりうるすべての状態を記述する位相空間Pは(第3章参照)、共形不変な体積をもつ。その基本的な理由は、距離が減少するときには対応する運動量が増加し、距離が増加するときには対応する運動量が減少して、距離と運動量の積が再スケーリングによって完全に不変になっているからだ。この事実は、第16章で決定的に重要になる。私は、この宇宙論の体系を共形サイクリック宇宙論(conformal cyclic cosmology、CCC)と呼んでいる。」
(ロジャー・ペンローズ(1931-),『時間のサイクル』(日本語名『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』),第3部 共形サイクリック宇宙論,第13章 無限とつながる,新潮社(2014),pp.173-174,竹内薫(訳))
(索引:共形サイクリック宇宙論)

宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか


(出典:wikipedia
ロジャー・ペンローズ(1931-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「さらには、こうしたことがらを人間が理解する可能性があるというそのこと自体が、意識がわれわれにもたらしてくれる能力について何らかのことを語っているのだ。」(中略)「「自然」の働きとの一体性は、潜在的にはわれわれすべての中に存在しており、いかなるレヴェルにおいてであれ、われわれが意識的に理解し感じるという能力を発動するとき、その姿を現すのである。意識を備えたわれわれの脳は、いずれも、精緻な物理的構成要素で織り上げられたものであり、数学に支えられたこの宇宙の深淵な組織をわれわれが利用するのを可能ならしめている――だからこそ、われわれは、プラトン的な「理解」という能力を介して、この宇宙がさまざまなレヴェルでどのように振る舞っているかを直接知ることができるのだ。
 これらは重大な問題であり、われわれはまだその説明からはほど遠いところにいる。これらの世界《すべて》を相互に結びつける性質の役割が明らかにならないかぎり明白な答えは現れてこないだろう、と私は主張する。これらの問題は互いに切り離し、個々に解決することはできないだろう。私は、三つの世界とそれらを互いに関連づけるミステリーを言ってきた。だが、三つの世界ではなく、《一つの》世界であることに疑いはない。その真の性質を現在のわれわれは垣間見ることさえできないのである。」

    プラトン的
    /世界\
   /    \
  3      1
 /        \
心的───2────物理的
世界         世界


(ロジャー・ペンローズ(1931-),『心の影』,第2部 心を理解するのにどんな新しい物理学が必要なのか,8 含意は?,8.7 三つの世界と三つのミステリー,みすず書房(2001),(2),pp.235-236,林一(訳))

ロジャー・ペンローズ(1931-)
ロジャー・ペンローズの関連書籍(amazon)
検索(ロジャー・ペンローズ)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ

数学ランキング
ブログサークル

2018年9月23日日曜日

宇宙の始めと遥か未来の状態の共通点:(1)質量のない粒子のみ存在する、(2)粒子にとって時間経過が無限に遅くなる、(3)局所的なスケール変化の影響を受けない、(4)始めと無限の未来の「向こう側」への時空の拡張可能性。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

ビッグバン直後と遥か未来の宇宙の状態

【宇宙の始めと遥か未来の状態の共通点:(1)質量のない粒子のみ存在する、(2)粒子にとって時間経過が無限に遅くなる、(3)局所的なスケール変化の影響を受けない、(4)始めと無限の未来の「向こう側」への時空の拡張可能性。(ロジャー・ペンローズ(1931-))】

(1)ビッグバン直後の宇宙の状態
ビッグバンの直後は極めて高温で、すべての粒子が事実上、光子のように質量がゼロと考えてもいいような時空構造であったと考えられる。この構造では、局所的なスケール変化の影響を受けない。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

(2)はるか未来の宇宙の状態
指数関数的な膨張が続く宇宙の未来は、宇宙マイクロ波背景放射とホーキング放射による光子、重力子、そして恐らく大量の「ダークマター」から構成され、局所的なスケール変化の影響を受けない構造となる。(ロジャー・ペンローズ(1931-))
(3)ビッグバン直後の宇宙の状態と、はるか未来の宇宙の状態に共通する性質
 (3.1)宇宙には、質量のない粒子しか存在しなくなる。
 (3.2)時間の経過が意味を持つためには、静止質量をもつ粒子が必要である。質量のない粒子にとっては、時間の経過が無限に遅くなる。すなわち、質量のない粒子は、その内なる時計が最初の時を刻む前に、宇宙においては永遠の時間が経過する。「永遠なんて、たいしたことじゃない」のである!
 (3.3)質量ゼロの粒子は、時空の計量がどのようなものであるかにあまり関心がなく、局所的なスケール変化の影響を受けない構造となる。
 (3.4)理論的には、ビッグバン超曲面をビッグバンの前、「向こう側」までなめらかに拡張することを許容しているように思われる。また、正の宇宙定数Λがあるときには、はるか未来の宇宙の時空を、無限の「向こう側」の未来方向に拡張できることが、数学的に強く支持されている。

 「私はずっと、このような考えに鬱々としていたが、2005年の夏のある日、別の考えが頭に浮んだ。それは「宇宙が永遠の単調さに支配されたとき、そのことを退屈に感じる存在があるのだろうか?」という自問だった。その頃にはもちろん、われわれは存在していない。存在しているのは主として、光子や重力子のような質量のない粒子だろう。こうした粒子が意味のある経験をすることなどありえないが、たとえ光子や重力子がなにかを経験することができたとしても、彼らを退屈させるのは非常に難しい! なぜなら、質量のない粒子にとっては、時間の経過などなんでもないからだ。図2-22に示したように、質量のない粒子は、その内なる時計が最初の時を刻む前に永遠(つまりI+)に到達してしまう。だから、光子や重力子のような質量のない粒子にとっては、「永遠なんて、たいしたことじゃない」のである!
 換言すると、時計をつくるためには静止質量をもつ粒子が必要であるようだ。そのため、遠い未来に、静止質量をもつ粒子がほとんどなくなってしまったとしたら、時間の経過を測定できなくなってしまう(同時に、距離の測定もできなくなる。距離の測定も、時間の測定に依存しているからだ。第9章参照)。さきほども述べたように、質量ゼロの粒子は時空の計量がどのようなものであるかにあまり関心がなく、その共形(またはヌル円錐)構造しか尊重していないようである。それゆえ、質量ゼロの粒子にとって、最終的な超曲面I+は、ほかの領域と特に変わりない共形時空の一領域にすぎず、この共形時空をI+の「向こう側」まで拡張できると仮定したとき、粒子がそこに入っていくことを禁じていないように見える。さらに、ヘルムート・フリードリヒの重要な研究などにより、ここで考察したような一般的な状況において、正の宇宙定数Λがあるときには、時空を未来方向に共形的に拡張できることが数学的に強く支持されている。
 われわれはトッドの提案にもとづいてビッグバン超曲面での物理学について議論したが、その主旨はこれと同じだ。I+もB-も(それぞれ異なる理由により)、共形時空をこれらの超曲面の「向こう側」までなめらかに拡張することを許容しているように思われる。それだけではない。超曲面の両側にある物質は、本質的に質量がない物質であるかもしれない。そうした物質の物理的なふるまいは、基本的に共形不変な方程式に支配されるため、物質の活動は(共形)時空の仮説的な拡張部分のどちらの側にも続いていくことができるだろう。」
(ロジャー・ペンローズ(1931-),『時間のサイクル』(日本語名『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』),第3部 共形サイクリック宇宙論,第13章 無限とつながる,新潮社(2014),pp.172-173,竹内薫(訳))
(索引:ビッグバン直後の宇宙,未来の宇宙)

宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか


(出典:wikipedia
ロジャー・ペンローズ(1931-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「さらには、こうしたことがらを人間が理解する可能性があるというそのこと自体が、意識がわれわれにもたらしてくれる能力について何らかのことを語っているのだ。」(中略)「「自然」の働きとの一体性は、潜在的にはわれわれすべての中に存在しており、いかなるレヴェルにおいてであれ、われわれが意識的に理解し感じるという能力を発動するとき、その姿を現すのである。意識を備えたわれわれの脳は、いずれも、精緻な物理的構成要素で織り上げられたものであり、数学に支えられたこの宇宙の深淵な組織をわれわれが利用するのを可能ならしめている――だからこそ、われわれは、プラトン的な「理解」という能力を介して、この宇宙がさまざまなレヴェルでどのように振る舞っているかを直接知ることができるのだ。
 これらは重大な問題であり、われわれはまだその説明からはほど遠いところにいる。これらの世界《すべて》を相互に結びつける性質の役割が明らかにならないかぎり明白な答えは現れてこないだろう、と私は主張する。これらの問題は互いに切り離し、個々に解決することはできないだろう。私は、三つの世界とそれらを互いに関連づけるミステリーを言ってきた。だが、三つの世界ではなく、《一つの》世界であることに疑いはない。その真の性質を現在のわれわれは垣間見ることさえできないのである。」

    プラトン的
    /世界\
   /    \
  3      1
 /        \
心的───2────物理的
世界         世界


(ロジャー・ペンローズ(1931-),『心の影』,第2部 心を理解するのにどんな新しい物理学が必要なのか,8 含意は?,8.7 三つの世界と三つのミステリー,みすず書房(2001),(2),pp.235-236,林一(訳))

ロジャー・ペンローズ(1931-)
ロジャー・ペンローズの関連書籍(amazon)
検索(ロジャー・ペンローズ)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ

数学ランキング
ブログサークル

2018年9月9日日曜日

指数関数的な膨張が続く宇宙の未来は、宇宙マイクロ波背景放射とホーキング放射による光子、重力子、そして恐らく大量の「ダークマター」から構成され、局所的なスケール変化の影響を受けない構造となる。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

宇宙の未来の構造

【指数関数的な膨張が続く宇宙の未来は、宇宙マイクロ波背景放射とホーキング放射による光子、重力子、そして恐らく大量の「ダークマター」から構成され、局所的なスケール変化の影響を受けない構造となる。(ロジャー・ペンローズ(1931-))】

 正の宇宙定数Λをもつ宇宙モデルによれば、われわれの宇宙は最終的には指数関数的な膨張に落ち着くはずだ。それは、なめらかで空間的な未来の共形境界I+をもつだろう。その構成は、
 (a)非常に強く赤方遷移した星の光、宇宙マイクロ波背景放射
 (b)無数の巨大ブラックホールの質量エネルギーのほとんどすべてを、非常に低エネルギーの光子の形で運び去ってしまうホーキング放射
 (参照: ブラックホールは非常に小さな温度を持つ。宇宙の指数関数的な膨張が続くと、やがて宇宙の温度があらゆるブラックホールの温度より低くなる。ブラックホールはエネルギーを放射するようになり、最後は消滅する。(ロジャー・ペンローズ(1931-)))
 (c)重力子(グラビトン)
 (d)おそらく大量の「ダークマター」

 「ここで、まったく違ったことを考えてみよう。時間のもう一方の端、すなわち、はるか遠い未来に起こると予想されていることを検証するのだ。第7章で考察した正の宇宙定数Λをもつ宇宙モデルによれば、われわれの宇宙は最終的には指数関数的な膨張に落ち着くはずだ。そのモデルは図2-35の厳密な共形ダイヤグラムに酷似したものになり、なめらかで空間的な未来の共形境界I+をもつだろう。もちろん、われわれの宇宙には、現在、いくつかの種類のムラがある。高度な対称性をもつFLRWモデルの幾何学から局所的に最も大きく逸脱しているのは、ブラックホール、特に、銀河の中心部にある巨大質量のブラックホールだ。けれども、第11章の議論によれば、すべてのブラックホールは最終的には「ポン」と消滅してしまう(図2-40と、その厳密な共形ダイアグラムである図2-41を参照されたい)。とはいえ、最大級のブラックホールは、ポンと消滅するまでに1グーゴル(10100)年以上の時間を要するだろう。
 この気の遠くなるような時間における宇宙の物理的構成を考えるとき、粒子数が圧倒的に多いのは光子だろう。これらの光子は、非常に強く赤方遷移した星の光、宇宙マイクロ波背景放射、およびホーキング放射に由来している。ホーキング放射は、最終的には、無数の巨大ブラックホールの質量エネルギーのほとんどすべてを、非常に低エネルギーの光子の形で運び去ってしまう。光子のほかには重力子(グラビトン)もあるはずだ。重力子は重力波を構成する量子で、ブラックホールどうし、特に、銀河中心の巨大ブラックホールどうしの接近によって生成する。ブラックホールどうしの接近がわれわれにとって非常に重要な役割を果たすことについては、第18章で詳しく述べる。光子は質量をもたないが、重力子も質量をもたないため、第9章の図2-21で説明したとおり、どちらも時計の政策に利用することはできない。
 光子と重力子のほかに、おそらく大量の「ダークマター」も存在しているだろう。この謎めいた物質の正体がなんであろうと(ダークマターについて私自身が基本的にどのような提案をしているかについては第7章と第14章を参照されたい)、ブラックホールに捕まらずにすんだものが残存しているはずである。重力場を通してしか相互作用しないダークマターが、時計づくりにどのように役に立つのか、考えることは困難だ。けれども、そのような視点をもつことは、哲学的立場を微妙に変えることにつながる。第14章で見ていくように、このような微妙な変化は、少なくとも私がこれから提案する全体像にとっては、なくてはならないものである。結局のところ、われわれの宇宙が膨張の最終段階に入るときに物理的に意味があるのは、時空の共形構造だけかもしれない。」
(ロジャー・ペンローズ(1931-),『時間のサイクル』(日本語名『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』),第3部 共形サイクリック宇宙論,第13章 無限とつながる,新潮社(2014),pp.170-171,竹内薫(訳))
(索引:宇宙の未来の構造)

宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか


(出典:wikipedia
ロジャー・ペンローズ(1931-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「さらには、こうしたことがらを人間が理解する可能性があるというそのこと自体が、意識がわれわれにもたらしてくれる能力について何らかのことを語っているのだ。」(中略)「「自然」の働きとの一体性は、潜在的にはわれわれすべての中に存在しており、いかなるレヴェルにおいてであれ、われわれが意識的に理解し感じるという能力を発動するとき、その姿を現すのである。意識を備えたわれわれの脳は、いずれも、精緻な物理的構成要素で織り上げられたものであり、数学に支えられたこの宇宙の深淵な組織をわれわれが利用するのを可能ならしめている――だからこそ、われわれは、プラトン的な「理解」という能力を介して、この宇宙がさまざまなレヴェルでどのように振る舞っているかを直接知ることができるのだ。
 これらは重大な問題であり、われわれはまだその説明からはほど遠いところにいる。これらの世界《すべて》を相互に結びつける性質の役割が明らかにならないかぎり明白な答えは現れてこないだろう、と私は主張する。これらの問題は互いに切り離し、個々に解決することはできないだろう。私は、三つの世界とそれらを互いに関連づけるミステリーを言ってきた。だが、三つの世界ではなく、《一つの》世界であることに疑いはない。その真の性質を現在のわれわれは垣間見ることさえできないのである。」

    プラトン的
    /世界\
   /    \
  3      1
 /        \
心的───2────物理的
世界         世界


(ロジャー・ペンローズ(1931-),『心の影』,第2部 心を理解するのにどんな新しい物理学が必要なのか,8 含意は?,8.7 三つの世界と三つのミステリー,みすず書房(2001),(2),pp.235-236,林一(訳))

ロジャー・ペンローズ(1931-)
ロジャー・ペンローズの関連書籍(amazon)
検索(ロジャー・ペンローズ)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ

数学ランキング
ブログサークル

2018年9月5日水曜日

ビッグバンの直後は極めて高温で、すべての粒子が事実上、光子のように質量がゼロと考えてもいいような時空構造であったと考えられる。この構造では、局所的なスケール変化の影響を受けない。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

ビッグバン直後の状態

【ビッグバンの直後は極めて高温で、すべての粒子が事実上、光子のように質量がゼロと考えてもいいような時空構造であったと考えられる。この構造では、局所的なスケール変化の影響を受けない。(ロジャー・ペンローズ(1931-))】

 ビッグバンの直後、恐らくビッグバンの瞬間から10-12秒後あたりまで遡ると、温度は約1016Kを超えていて、物理学はスケール因子Ωをまったく気にしないものになり、共形幾何学が、その物理過程に適した時空構造になると考えられる。そのため、当時の物理的活動のすべては、局所的なスケール変化の影響を受けなかったと考えられる。

 「はるかな昔、ビッグバン直後の物質宇宙は、物理的にどのようなものだったのだろうか? 確実にわかっているのは、高温だったということだ。ただの高温ではなく、おそろしく高温だった、と言うべきだろう。当時、宇宙を飛び回っていた粒子の運動エネルギーはあまりにも大きく、比較的小さな静止エネルギー(静止質量mの粒子ではE=mc2)を完全に圧倒していた。そのため、粒子の静止質量はほとんど問題にならず、これに関連した力学過程においては事実上ゼロと言ってよいほどだった。ごく初期の宇宙は、事実上質量のない粒子からできていたと言ってよい。
 このことを別の言葉で表現するために、心にとめておくべきことがある。それは、基本粒子の質量の起源に関する現在の素粒子物理学理論によると、素粒子の静止質量は、ヒッグス・ボソンと呼ばれる特別な粒子(ひょっとすると、特別な粒子のファミリー)の作用を通じて生じてきたと考えられるということだ。ヒッグス粒子と関連した量子場があり、量子力学的な「対称性の破れ」という不思議な過程を通じて、ほかの素粒子に質量を与えたというのが、自然界の任意の基本粒子の静止質量の起源に関する標準理論になっている。つまり、これらの素粒子はヒッグス粒子がなかったら質量をもたなかったと考えられるのに対して、ヒッグス粒子は独自の質量(静止質量)をもっていることになる。けれども、ごく初期の宇宙では、温度があまりにも高く、ヒッグス粒子の静止質量を大幅に上回る運動エネルギーを付与するため、標準理論によれば、すべての粒子が、事実上、光子のように質量がゼロであったということになる。
 第9章の議論を思い出してほしい。質量のない粒子は、時空の計量の「全体像」にはあまり関心がなく、その共形(またはヌル円錐)構造しか尊重していないように見える。もう少し明確に(そして慎重に)説明するため、原初の質量ゼロの粒子であり、今日も質量がないままである光子について考えよう。光子を正しく理解するためには、量子力学(より正確には「場の量子論」)という、奇妙だが厳密な理論のなかで考える必要があるが、ここで場の量子論を詳細に説明しているわけにはいかない(ただし、第16章では量子論の基本的な問題をいくつかとりあげることになる)。われわれが主に興味をもっているのは、光子が量子的な構成要素となるような物理場である。この場がマックスウェルの電磁場で、第12章で説明したようにテンソルFにより記述される。マックスウェル方程式は、完全に共形不変であることがわかっている。これは次のような意味である。計量gを共形的に関連した計量g^に置き換えて、
 gg^
とする。(非一様に)再スケーリングされる新しい計量g^は、
 g^2g
と書ける。ここでΩは、正の値をとり、時空のなかをなめらかに変化するスカラー量である。(第9章参照)。このとき、すべての操作をgではなくg^によって定義すれば、マックスウェル場のテンソルFについても、その源である電荷・電流ベクトルJについても、適当なスケール因子を見つけて、以前とまったく同じマックスウェル方程式が成り立つようにすることができるのだ。それゆえ、特定の共形スケールを選択した場合のマックスウェル方程式の任意の解は、ほかの共形スケールを選択した場合に完全に対応する解に変換することができる(この点については第14章でもう少し詳しく説明し、補遺A6でもっとしっかり説明する)。さらに根本的なレベルでは、粒子(光子)の記述との一致が「^」のついた計量g^にもあてはまり、個々の光子が個々の光子に対応するという点で、これは場の量子論と矛盾しない。ゆえに、光子そのものは、局所的なスケールが変更されたことに「気づきもしない」のだ。
 マックスウェルの理論は、この強い意味で共形不変であり、電荷を電磁場に結びつける電磁相互作用も、スケールの局所的な変更に気がつかない。光子も、光子と荷電粒子の相互作用も、その方程式が組み立てられるためには、時空がヌル円錐構造(つまり共形時空構造)をもつことを必要とするが、実際の計量を相互に区別し、このヌル円錐構造と矛盾しないようなスケール因子は必要としない。さらに、まったく同じ不変性がヤン=ミルズ方程式にも成り立つ。ヤン=ミルズ方程式は、強い相互作用だけでなく弱い相互作用も支配する。強い相互作用とは、核子(陽子と中性子)や、核子を構成するクォークや、これらに関連したその他の粒子との間ではたらく力のことで、弱い相互作用とは、放射性崩壊を引き起こす力のことである。ヤン=ミルズ理論は、数学的にはマックスウェルの理論に「余分な内部添字」をつけて(補遺A7参照)、一個の光子を粒子の多重項に置き換えたものにすぎない。強い相互作用では、クォークとグル―オンと呼ばれるものが、それぞれ電磁気理論における電子と光子に相当している。グル―オンには質量がないが、クォークには質量があり、その質量はヒッグス粒子と直接関係していると考えられている。弱い相互作用の標準理論(現在は電磁気理論もこの理論に組み込まれているため「電弱理論」と呼ばれている)では、光子はほかの三つの粒子(W+、W-、Z)を含む多重項の一部と考えられている。W+、W-、Zは質量をもっていて、、これらの質量もヒッグス粒子と結びついていると考えられる。」(中略)「まとめると、ビッグバンの直後、おそらくビッグバンの瞬間から10-12秒後あたりまでさかのぼると、温度は約1016Kを超えていて、物理学はスケール因子Ωをまったく気にしないものになり、共形幾何学が、その物理過程に適した時空構造になると考えられる。そのため、当時の物理的活動のすべては、局所的なスケール変化の影響を受けなかったと考えられる。」
(ロジャー・ペンローズ(1931-),『時間のサイクル』(日本語名『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』),第3部 共形サイクリック宇宙論,第13章 無限とつながる,新潮社(2014),pp.164-167,竹内薫(訳))
(索引:ビッグバン直後の状態)

宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか


(出典:wikipedia
ロジャー・ペンローズ(1931-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「さらには、こうしたことがらを人間が理解する可能性があるというそのこと自体が、意識がわれわれにもたらしてくれる能力について何らかのことを語っているのだ。」(中略)「「自然」の働きとの一体性は、潜在的にはわれわれすべての中に存在しており、いかなるレヴェルにおいてであれ、われわれが意識的に理解し感じるという能力を発動するとき、その姿を現すのである。意識を備えたわれわれの脳は、いずれも、精緻な物理的構成要素で織り上げられたものであり、数学に支えられたこの宇宙の深淵な組織をわれわれが利用するのを可能ならしめている――だからこそ、われわれは、プラトン的な「理解」という能力を介して、この宇宙がさまざまなレヴェルでどのように振る舞っているかを直接知ることができるのだ。
 これらは重大な問題であり、われわれはまだその説明からはほど遠いところにいる。これらの世界《すべて》を相互に結びつける性質の役割が明らかにならないかぎり明白な答えは現れてこないだろう、と私は主張する。これらの問題は互いに切り離し、個々に解決することはできないだろう。私は、三つの世界とそれらを互いに関連づけるミステリーを言ってきた。だが、三つの世界ではなく、《一つの》世界であることに疑いはない。その真の性質を現在のわれわれは垣間見ることさえできないのである。」

    プラトン的
    /世界\
   /    \
  3      1
 /        \
心的───2────物理的
世界         世界


(ロジャー・ペンローズ(1931-),『心の影』,第2部 心を理解するのにどんな新しい物理学が必要なのか,8 含意は?,8.7 三つの世界と三つのミステリー,みすず書房(2001),(2),pp.235-236,林一(訳))

ロジャー・ペンローズ(1931-)
ロジャー・ペンローズの関連書籍(amazon)
検索(ロジャー・ペンローズ)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ

数学ランキング
ブログサークル

2018年9月3日月曜日

ブラックホールは非常に小さな温度を持つ。宇宙の指数関数的な膨張が続くと、やがて宇宙の温度があらゆるブラックホールの温度より低くなる。ブラックホールはエネルギーを放射するようになり、最後は消滅する。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

ブラックホールの温度の宇宙の未来

【ブラックホールは非常に小さな温度を持つ。宇宙の指数関数的な膨張が続くと、やがて宇宙の温度があらゆるブラックホールの温度より低くなる。ブラックホールはエネルギーを放射するようになり、最後は消滅する。(ロジャー・ペンローズ(1931-))】

(1)一般相対論によれば、ブラックホールは完全に真っ黒でなければならない。
(2)一般相対論に場の量子論の効果を考慮すると、ブラックホールは非常に小さな温度Tをもたなければならない。(スティーヴン・ホーキング、1974年)
 太陽質量の10倍のブラックホールの温度は、6×10-9K
 銀河系の中心部にある太陽質量の400万倍だと、約1.5×10-14K程度
 これは、宇宙マイクロ波背景放射の約2.7Kと比べると、ブラックホールははるかに冷たい。
(3)ところが、宇宙の指数関数的な膨張が無限に続き、宇宙マイクロ波背景放射の温度がどこまでも下がっていくと、どうなるだろうか。
 (3.1)やがて、宇宙マイクロ波背景放射の温度が、宇宙に存在しうる最大のブラックホールの温度より低くなる。
 (3.2)ブラックホールは周囲の空間にエネルギーを放射するようになり、アインシュタインのE=mc2の式によれば、エネルギーを失うことで質量も失うことになる。
 (3.3)ブラックホールは質量を失いながら高温になり、信じられないほど長い時間をかけて少しずつ縮んでゆき、ついには「ポン」と爆発して消滅してしまう。(今日の最大級のブラックホールなら、おそらく10100年、つまり「1グーゴル年」程度)。

 「第16章では、ブラックホールのもう一つの特徴を論じるつもりだ。その特徴は、今日では非常に小さな効果しか及ぼさないが、究極的にはわれわれにとって非常に重要な意味をもつことになる。アインシュタインの一般相対論は古典物理学であり、この理論によれば、ブラックホールは完全に真っ黒でなければならない。けれどもスティーヴン・ホーキングは、1974年に行なった分析により、背景の曲がった時空における場の量子論の効果を考慮すると、ブラックホールは非常に小さな温度Tをもたなければならないことを明らかにした。この温度は質量に反比例する。たとえば、質量が10Mのブラックホールの温度は6×10-9K程度となるが、これは、2006年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが達成した最低温度の記録(約10-9K)に近い、非常に低い温度である。今日のブラックホールはだいたいこの程度の温度だろうと考えられていて、まだまだ温かいほうだ。より大きなブラックホールはもっと低温で、銀河系の中心部にある質量約400万Mのブラックホールの温度は約1.5×10-14K程度しかないと考えられている。われわれを取り巻く宇宙の温度、すなわち、現時点の宇宙マイクロ波背景放射は約2.7Kなので、ブラックホールに比べればはるかに高温だ。
 それでも、もっと長い目でものごとを見るようにして、宇宙の指数関数的な膨張が無限に続き、宇宙マイクロ波背景放射の温度がどこまでも下がっていくと考えるなら、その温度は宇宙に存在しうる最大のブラックホールの温度より低くなるかもしれない。その後、ブラックホールは周囲の空間にエネルギーを放射するようになり、アインシュタインのE=mc2の式によれば、エネルギーを失うことで質量も失うことになる。ブラックホールは質量を失いながら高温になり、信じられないほど長い時間をかけて(今日の最大級のブラックホールなら、おそらく10100年、つまり「1グーゴル年」程度の時間をかけて)少しずつ縮んでゆき、ついには「ポン」と爆発して消滅してしまう。この最後の爆発は大砲の砲弾が破裂する程度のエネルギーしかなく、「バン」と呼べるような激しいものではない。これだけ長く待ったあとに起こる現象としては、なんとも拍子抜けである!」
(ロジャー・ペンローズ(1931-),『時間のサイクル』(日本語名『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』),第2部 ビッグバンの奇妙な特殊性,第12章 ビッグバンの特殊性を理解する,新潮社(2014),pp.141-142,竹内薫(訳))
(索引:ブラックホールの温度)

宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか


(出典:wikipedia
ロジャー・ペンローズ(1931-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「さらには、こうしたことがらを人間が理解する可能性があるというそのこと自体が、意識がわれわれにもたらしてくれる能力について何らかのことを語っているのだ。」(中略)「「自然」の働きとの一体性は、潜在的にはわれわれすべての中に存在しており、いかなるレヴェルにおいてであれ、われわれが意識的に理解し感じるという能力を発動するとき、その姿を現すのである。意識を備えたわれわれの脳は、いずれも、精緻な物理的構成要素で織り上げられたものであり、数学に支えられたこの宇宙の深淵な組織をわれわれが利用するのを可能ならしめている――だからこそ、われわれは、プラトン的な「理解」という能力を介して、この宇宙がさまざまなレヴェルでどのように振る舞っているかを直接知ることができるのだ。
 これらは重大な問題であり、われわれはまだその説明からはほど遠いところにいる。これらの世界《すべて》を相互に結びつける性質の役割が明らかにならないかぎり明白な答えは現れてこないだろう、と私は主張する。これらの問題は互いに切り離し、個々に解決することはできないだろう。私は、三つの世界とそれらを互いに関連づけるミステリーを言ってきた。だが、三つの世界ではなく、《一つの》世界であることに疑いはない。その真の性質を現在のわれわれは垣間見ることさえできないのである。」

    プラトン的
    /世界\
   /    \
  3      1
 /        \
心的───2────物理的
世界         世界


(ロジャー・ペンローズ(1931-),『心の影』,第2部 心を理解するのにどんな新しい物理学が必要なのか,8 含意は?,8.7 三つの世界と三つのミステリー,みすず書房(2001),(2),pp.235-236,林一(訳))

ロジャー・ペンローズ(1931-)
ロジャー・ペンローズの関連書籍(amazon)
検索(ロジャー・ペンローズ)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ

数学ランキング
ブログサークル

2018年8月28日火曜日

(a)前意識状態における確率論的計算性 (b)自己調整性 (c)状態の非局所性 (d)前意識状態から意識への確定の計算不可能性 (e)時間の一方向に進む「意識の流れ」 (f)なお、500msのコヒーレント時間に関与するニューロン数は約1000個。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

意識に量子論が関係すると思われる理由

【(a)前意識状態における確率論的計算性 (b)自己調整性 (c)状態の非局所性 (d)前意識状態から意識への確定の計算不可能性 (e)時間の一方向に進む「意識の流れ」 (f)なお、500msのコヒーレント時間に関与するニューロン数は約1000個。(ロジャー・ペンローズ(1931-))】

(1)前意識的なプロセスにおいては、コヒーレントな量子的重ね合わせとそれに基づく計算が、マイクロチューブル内のチューブリンで起こる。
 (1a)チューブリンの初期状態
 (1b)量子的な振動を制御するマイクロチューブル関連蛋白質(MAPs)が、「自己調整」する。
 (1c)(1a)、(1b)により、チューブリンがどのような状態になるかの確率が決まる。
 (1d)この量子的状態は、非局所的である。すなわち、収縮を誘発する質量の移動が小さな領域で起こることによっても生ずるし、あるいは大きな領域にわたって均一に起こることによっても生ずる。
 (1e)ノイズにあふれ、混沌とした細胞内の環境で果たして量子的コヒーレントな状態が維持できるのかという疑問がある。この点については、生化学的なラディカルのペアが、細胞質内で分離した後も相関を保つという、肯定的なデータがある。また、蛋白質の中のコヒーレントな励起状態の証拠が報告されている。
(2)前意識的な状態は、古典的に定義された状態へと落ち込む。この過程は、計算不可能である。すなわち、これらの状態は、量子的計算の最初の状態から、アルゴリズムに基づいて決定することはできない。このように、(1b)により「自己調整」されたこの収縮過程を、「調節された客観的収縮」(Orch OR)と呼ぶ。
(3)定量的な評価:T = h/2πE
 T:重ね合わされた状態が自己収縮するまでの寿命。「コヒーレント時間」と呼ぶ。
 E:二つの分布の間の差に対応する重力的自己エネルギー。
 T=500msとして見積もると(リベットらによって、前意識的なプロセスを特徴づける時間)
  チューブリン数:約109
  各ニューロンの中の10%のチューブリンがコヒーレントな量子的重ね合わせに参加しているとすると、
       ニューロン数:約103
 T=50msだと、ニューロン数:約104
 T=5ms だと、ニューロン数:約105
(4)一つ一つの自己組織化された「Orch OR」を、単一の意識的イベントとみなす。
(5)このようなイベントが次々と起こることによって、「意識の流れ」が形成され、また、一方向に進む時間の流れを形成する。

 「私たちが提出しているモデルは、次のような内容を含んでいる。
(1) 量子力学のさまざまな側面(たとえば量子的コヒーレンス)と、前に示唆したような自己収縮の過程(客観的収縮、「OR」)は意識において本質的な役割を果たしている。これらの過程は、脳のニューロンの中で、細胞骨格のマイクロチューブルをはじめとする構造の中で起こっている。
(2) マイクロチューブルを構成するチューブリンの構造は、内部の量子状態と関連している。そして、チューブリン同士が共同的に相互作用することによって、古典的および量子的な計算が行なわれている。
(3) 量子的なコヒーレントな重ね合わせがチューブリンの間に起こる際には、環境からの熱的エネルギーと、生体分子からの生化学的エネルギーが関与する(この際、フレーリッヒが提案したようなメカニズムが働いているかもしれない)。最近になって、蛋白質の中のコヒーレントな励起状態の証拠が報告されている。
 さらに、マイクロチューブルの表面付近の水分子は、ランダムではなく、ある秩序の下に、蛋白質の表面と相互作用していると考えられる。マイクロチューブルの中の中空の構造は、量子的な波の伝導管として働き、量子的にコヒーレントな光子を作り出すかもしれない(ちょうど、「超光放射」(super-radiance)や、「自己誘導透明化」(self-induced transparancy)の現象のように)。コヒーレントな状態は、周りの環境から隔離された形で、最大数百ミリ秒にわたって保たれる必要がある。このようなコヒーレントな状態は、
 (a)マイクロチューブルの筒の中の中空
 (b)チューブリンの疎水性のポケット
 (c)コヒーレントに秩序づけられた水分子
 (d)ゾル-ゲル層
 の中で起こる可能性がある。
 ノイズにあふれ、混沌とした細胞内の環境で果たして量子的コヒーレントな状態が維持できるのかという疑問があるだろう。この点については、生化学的なラディカルのペアが、細胞質内で分離した後も相関を保つという、肯定的なデータがある。
(4) 前意識的なプロセスにおいては、コヒーレントな量子的重ね合わせとそれに基づく計算が、マイクロチューブル内のチューブリンで起こる。この重ね合わせの状態は、チューブリンの固有状態の間の質量分布の差が量子重力のしきい値に達するまで維持される。しきい値に達したとき、自己収縮(OR)が起こる。
(5) 自己収縮(OR)の結果、マイクロチューブル内のチューブリンは、古典的に定義された状態へと落ち込む。「OR」に関するある種の理論によれば、結果として生ずる古典的な状態は、計算不可能である。つまり、これらの状態は、量子的計算の最初の状態から、アルゴリズムに基づいて決定することはできない。
(6) 「OR」の結果、チューブリンがどのような状態になるかの確率は、チューブリンの初期状態や、量子的な振動を制御するマイクロチューブル関連蛋白質(MAPs)の状態によって決まる。このような理由で、私たちはマイクロチューブル内で自己調節しながら起こる「OR」のプロセスを、「調節された客観的収縮」(Orch OR)と呼ぶのである。
(7) ペンローズによって提出された「OR」に関する議論によれば、重ね合わされた状態は、それぞれが独自の時空構造の幾何学を持つことになる。コヒーレントな質量-エネルギー分布の違いが、十分に大きい時空の幾何学の分離をもたらしたときに、システムは単一の状態へと自己崩壊を起こす。こうして、「Orch OR」は、基本的な時空構造の幾何学における自己選択を含む。
(8) 十分によく定義された質量分布を持つ二つの状態が重ね合された状態から「Orch OR」が起こるプロセスを定量的に評価するためには、二つの分布の間の差に対応する重力的自己エネルギーEを求めればよい。ここから、重ね合わされた状態が自己収縮するまでの寿命Tが、
  T = h/2πE
 という式で求められる。私たちは、Tを、重ね合わせがコヒーレントに維持される時間=「コヒーレント時間」と呼ぶことにする。ここで、Tの大きさとして、T=500ミリ秒という値を採用してみよう。これは、リベットらによって、前意識的なプロセスを特徴づける時間とされてきた値である。この値からEを計算すると、コヒーレントな状態を500ミリ秒保つために必要なチューブリンの数が推定できる。答えは、約109個のチューブリンということになる。
(9) 典型的な脳のニューロンは、約107個のチューブリンを持っている。もし各ニューロンの中の10%のチューブリンがコヒーレントな量子的重ね合わせに参加しているとすると、約103個のニューロンが、コヒーレントな状態を500ミリ秒保つために必要とされることになる。
(10) 私たちは、一つ一つの自己組織化された「Orch OR」を、単一の意識的イベントとみなす。このようなイベントが次々と起こることによって、「意識の流れ」が形成される。もし、何らかの理由によって、生体が脅かされたり、興奮したとしよう。この時には、コヒーレントな量子的状態が速く現れ、たとえば、1010個のチューブリンが50ミリ秒以内に「Orch Or」を起こすと考えられる。もし、1011個のチューブリンが参加すれば、5ミリ秒で「Orch Or」が起こる。
 たとえば、あなたの前に突然ベンガル虎が現れたとすると、1012個のチューブリンが、0.5ミリ秒以内に「Orch OR」を起こすことになるかもしれない。もちろん、より遅い時間経過をたどるコヒーレント状態もあるだろう。ちなみに、単一の電子は、自己収縮を起こすために、宇宙の年齢以上の時間を要する。
(11) 量子的状態は、非局所的である。その理由は、量子的状態が、「巻き込み」(entanglement)を、すなわち、EPR(Einstein-Podolsky-Rosen)パラドックスのような効果を起こしうるからだ。収縮の過程では、このような非局所的な状態が、一気に一つの状態に落ち込む。非局所的な収縮は、収縮を誘発する質量の移動が小さな領域で起こることによっても生ずるし、あるいは大きな領域にわたって均一に起こることによっても生ずる。個々の瞬間的な「Orch Or」のイベントは、空間的、時間的な広がりを持つ重ね合わせの自己エネルギーが、特定の瞬間にしきい値に達することによって生ずる。情報は、このような瞬間的なイベント(意識の中での心理的な「今」)に結びついて表現される。このような一連の「Orch Or」が、私たちにとってなじみの深い「意識の流れ」を形成し、また、一方向に進む時間の流れを形成する。」
(ロジャー・ペンローズ(1931-),『影への疑念を超えて』(日本語名『ペンローズの量子脳理論』),意識は、マイクロチューブルにおける波動関数の収縮として起こる,5「Orch OR」による意識のモデルの要約,徳間書店(1997),pp.156-162,茂木健一郎(訳))
(索引:量子力学,意識)

ペンローズの量子脳理論―21世紀を動かす心とコンピュータのサイエンス (Naturaーeye science)


(出典:wikipedia
ロジャー・ペンローズ(1931-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「さらには、こうしたことがらを人間が理解する可能性があるというそのこと自体が、意識がわれわれにもたらしてくれる能力について何らかのことを語っているのだ。」(中略)「「自然」の働きとの一体性は、潜在的にはわれわれすべての中に存在しており、いかなるレヴェルにおいてであれ、われわれが意識的に理解し感じるという能力を発動するとき、その姿を現すのである。意識を備えたわれわれの脳は、いずれも、精緻な物理的構成要素で織り上げられたものであり、数学に支えられたこの宇宙の深淵な組織をわれわれが利用するのを可能ならしめている――だからこそ、われわれは、プラトン的な「理解」という能力を介して、この宇宙がさまざまなレヴェルでどのように振る舞っているかを直接知ることができるのだ。
 これらは重大な問題であり、われわれはまだその説明からはほど遠いところにいる。これらの世界《すべて》を相互に結びつける性質の役割が明らかにならないかぎり明白な答えは現れてこないだろう、と私は主張する。これらの問題は互いに切り離し、個々に解決することはできないだろう。私は、三つの世界とそれらを互いに関連づけるミステリーを言ってきた。だが、三つの世界ではなく、《一つの》世界であることに疑いはない。その真の性質を現在のわれわれは垣間見ることさえできないのである。」

    プラトン的
    /世界\
   /    \
  3      1
 /        \
心的───2────物理的
世界         世界


(ロジャー・ペンローズ(1931-),『心の影』,第2部 心を理解するのにどんな新しい物理学が必要なのか,8 含意は?,8.7 三つの世界と三つのミステリー,みすず書房(2001),(2),pp.235-236,林一(訳))

ロジャー・ペンローズ(1931-)
ロジャー・ペンローズの関連書籍(amazon)
検索(ロジャー・ペンローズ)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ

数学ランキング
ブログサークル

2018年8月27日月曜日

量子力学の法則と、観測結果とを結びつける明確な理解に、私たちは未だ到達していない。観測過程を客観的な時間発展の結果として記述できるような法則の解明には、私たちの意識の理解が関わっていると思われる。(ロジャー・ペンローズ(1931-))

量子力学と意識

【量子力学の法則と、観測結果とを結びつける明確な理解に、私たちは未だ到達していない。観測過程を客観的な時間発展の結果として記述できるような法則の解明には、私たちの意識の理解が関わっていると思われる。(ロジャー・ペンローズ(1931-))】

1.(U)波動関数の時間発展(シュレーディンガー方程式)
 量子的コヒーレントな重ね合わせ。収縮は起こらない。
2.(R、SR)収縮、主観的収縮
 通常の量子力学(コペンハーゲン解釈)。環境との巻き込み観測。意識を持つ観測者による観測。
3.(OR)客観的収縮
 新しい物理学(Penrose 1994)。自己収縮。量子重力によって引き起こされる(Penrose,Doisi他)。
4.(Orch OR)調節された客観的収縮
 意識(この論文)。自己収縮。マイクロチューブルにおける量子重力的しきい値がMAPsなどによって調節される。

 「現在の物理学は、なぜ、どのようにして波動関数の収縮「R」が起こるのかを明確に説明することができないと断言してよいだろう。1930年代を通して、実験的あるいは理論的な証拠に基づく物理学者たち(たとえば、シュレーディンガー、ディラック、フォン・ノイマンその他)の考えは、量子力学におけるコヒーレントな重ね合わせは、時間的にはいつまでも続きうるというものだった。したがって、原理的には、ミクロなスケールからマクロのスケールまで重ね合わせが維持されうると考えられた。あるいは、意識を持つ観測者によって観測が行なわれ、その結果波動関数が収縮するまで、重ね合わせは維持されると考えられた。このような波動関数の収縮を、主観的収縮、「SR」(subjective reduction)と呼ぼう。「RS」の考え方によれば、マクロな物体でさえ、もし観測されないまま放っておかれれば、重ね合わせの状態のままでいることになる。このような考えがいかに馬鹿げているかを示すために、エルヴィン・シュレーディンガーは、有名な「シュレーディンガーの猫」の思考実験を提出した。つまり、観測者が箱を開けて見るまで、中の猫は死んでいる状態と生きている状態の重ね合わせ状態にとどまっているという常識では受け入れがたい結論だ。
 このような困った状況を避けるために、客観的な基準による波動関数の収縮(客観的収縮、「OR」)のメカニズムが最近になって提案されている。このようなメカニズムに基づくと、重ね合わせられた状態は、時間発展して、やがてしきい値に達し、そこで波動関数の収縮、すなわち「OR」が、急速に起こる。これらのメカニズムのうちのいくつかは、重力の効果が「OR」を引き起こすとしている。」

(以下、p.139の図1(波動関数の収縮メカニズムの分類)を元に、意味を変えずに記載し直してある。)
1.(U)波動関数の時間発展(シュレーディンガー方程式)
 量子的コヒーレントな重ね合わせ。収縮は起こらない。
2.(R、SR)収縮、主観的収縮
 通常の量子力学(コペンハーゲン解釈)。環境との巻き込み観測。意識を持つ観測者による観測。
3.(OR)客観的収縮
 新しい物理学(Penrose 1994)。自己収縮。量子重力によって引き起こされる(Penrose,Doisi他)。
4.(Orch OR)調節された客観的収縮
 意識(この論文)。自己収縮。マイクロチューブルにおける量子重力的しきい値がMAPsなどによって調節される。
(ロジャー・ペンローズ(1931-),『影への疑念を超えて』(日本語名『ペンローズの量子脳理論』),意識は、マイクロチューブルにおける波動関数の収縮として起こる,2 時間と空間:量子力学とアインシュタインの重力理論,徳間書店(1997),pp.137-139,茂木健一郎(訳))
(索引:量子力学,意識,観測,主観的収縮,客観的収縮)

ペンローズの量子脳理論―21世紀を動かす心とコンピュータのサイエンス (Naturaーeye science)


(出典:wikipedia
ロジャー・ペンローズ(1931-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「さらには、こうしたことがらを人間が理解する可能性があるというそのこと自体が、意識がわれわれにもたらしてくれる能力について何らかのことを語っているのだ。」(中略)「「自然」の働きとの一体性は、潜在的にはわれわれすべての中に存在しており、いかなるレヴェルにおいてであれ、われわれが意識的に理解し感じるという能力を発動するとき、その姿を現すのである。意識を備えたわれわれの脳は、いずれも、精緻な物理的構成要素で織り上げられたものであり、数学に支えられたこの宇宙の深淵な組織をわれわれが利用するのを可能ならしめている――だからこそ、われわれは、プラトン的な「理解」という能力を介して、この宇宙がさまざまなレヴェルでどのように振る舞っているかを直接知ることができるのだ。
 これらは重大な問題であり、われわれはまだその説明からはほど遠いところにいる。これらの世界《すべて》を相互に結びつける性質の役割が明らかにならないかぎり明白な答えは現れてこないだろう、と私は主張する。これらの問題は互いに切り離し、個々に解決することはできないだろう。私は、三つの世界とそれらを互いに関連づけるミステリーを言ってきた。だが、三つの世界ではなく、《一つの》世界であることに疑いはない。その真の性質を現在のわれわれは垣間見ることさえできないのである。」

    プラトン的
    /世界\
   /    \
  3      1
 /        \
心的───2────物理的
世界         世界


(ロジャー・ペンローズ(1931-),『心の影』,第2部 心を理解するのにどんな新しい物理学が必要なのか,8 含意は?,8.7 三つの世界と三つのミステリー,みすず書房(2001),(2),pp.235-236,林一(訳))

ロジャー・ペンローズ(1931-)
ロジャー・ペンローズの関連書籍(amazon)
検索(ロジャー・ペンローズ)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ

数学ランキング
ブログサークル

人気の記事(週間)

人気の記事(月間)

人気の記事(年間)

人気の記事(全期間)

ランキング

ランキング


哲学・思想ランキング



FC2