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2018年5月23日水曜日

13.反乱の防止法(フランシス・ベーコン(1561-1626))

反乱の防止法

反乱の防止法(フランシス・ベーコン(1561-1626))


(1)反乱の諸原因

(a)宗教における革新
(b)重税
(c)法律や慣例の変更、特権の廃止
(d)一般的圧政
(e)くだらない人物の抜擢
(f)他国人
(g)食糧不足
(h)除隊兵士
(i)どうにもならなぬ派閥争い
(j)国民を怒らせて共通の目的のために集合団結させる全て


(2)上層階級と一般大衆の両方に不満を抱かせないこと。とくに、上層階級の人たちの不満が危険である。
(a)国民の不満の危険性は大きくない。
(b)一般大衆は上層階級によって扇動されない限り、動きがにぶい。
(c)上層階級は群衆が自ら動き出そうとしない限り、微力である。

(3)貧富の差を大きくし過ぎないこと。

(a)欠乏と貧困を防止する。
(b)財宝と金銭が少数の手に集まらないようにする。
(c)暴利をむさぼる高利貸し、独占、大牧場などを抑制する。


(4)国民に適度の自由を与えること。
 苦痛や不満を解消させるために、適度の自由を与えること。


(5)国民に希望を抱かせ続けること。
 巧みに希望を抱かせつづけ、人々を希望から希望へ進ませること。

(6)政策の真の意図を隠しておくこと


(7)反対派のリーダーを作らない。
 不満を抱く人々が頼りにし、彼らの団結の中心になれる有望な頭首がいないように用心し予防する。

(8)反対派のリーダーを国家の側に引き入れること。
 傑出して名声もあり信頼されている人物は国家の側に、しっかりした間違いのない仕方で引き入れて、これと妥協する。

(9)反対派にもう一人のリーダーを立て、反対派を分裂させること。
 力のあるリーダーに対抗させるために、同派の他の誰かと対決させて、その名声を二分しなければならない。

(10)反対派を分裂、分断し、お互いに反目させること。
 一般に、国家に敵対する全ての党派や同盟を分裂させたり分断したりして、彼らを互に反目させ、少なくとも信用しないようにすること。
(11)実力による担保も必要だ。


(1)反乱の諸原因

(a)宗教における革新
(b)重税
(c)法律や慣例の変更、特権の廃止
(d)一般的圧政
(e)くだらない人物の抜擢
(f)他国人
(g)食糧不足
(h)除隊兵士
(i)どうにもならなぬ派閥争い
(j)国民を怒らせて共通の目的のために集合団結させる全て

 「反乱の原因と動機は、宗教における革新、重税、法律や慣例の変更、特権の廃止、一般的圧政、くだらない人物の抜擢、他国人、食糧不足、除隊兵士、どうにもならなぬ派閥争い、そのほか国民を怒らせて共通の目的のために集合団結させるすべてである。
 対策について言えば、一般的予防法がいくつかあるかもしれない。それについて述べることにしよう。適切な治療について言えば、それは個々の病弊に応えなければならない。したがって、それは規則よりむしろ思慮に委ねなければならない。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.73、[渡辺義雄・1983])
(索引:反乱の防止法)

(2)上層階級と一般大衆の両方に不満を抱かせないこと。とくに、上層階級の人たちの不満が危険である。
(a)国民の不満の危険性は大きくない。
(b)一般大衆は上層階級によって扇動されない限り、動きがにぶい。
(c)上層階級は群衆が自ら動き出そうとしない限り、微力である。

 「これらの一つが不満である時、危険は大きくない。一般大衆は上層階級によって扇動されない限り、動きがにぶいし、また上層階級は群衆がみずから動き出そうとしない限り、微力だからである。上層階級が下層階級の間に騒動が持ち上がるのをひたすら待ち望み、いよいよとなったら態度を表明しかねない時が危険である。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.75、[渡辺義雄・1983])

(3)貧富の差を大きくし過ぎないこと。

(a)欠乏と貧困を防止する。
(b)財宝と金銭が少数の手に集まらないようにする。
(c)暴利をむさぼる高利貸し、独占、大牧場などを抑制する。

 「第一の対策もしくは予防法は、前述した反乱の材料となる原因をあらゆる手段を尽くして取り除くことである。それは国内の欠乏と貧困である。」(中略)

「何よりもまず、国家の財宝と金銭が少数の手に集まらないように、適切な政策が取られなければならない。さもなければ、国家に大きな蓄えがあっても、飢えることがありうるからである。

また金銭は肥料のようなものであって、ばら蒔かなければ役には立たない。

そうするには真っ先に、暴利をむさぼる高利貸し、独占、大牧場などを抑制すること、少なくともきびしく取り締まることである。」

(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.74、[渡辺義雄・1983])

(4)国民に適度の自由を与えること。
 苦痛や不満を解消させるために、適度の自由を与えること。
 「苦痛や不満を解消させるために適度の自由を与えることは、(そのために度はずれの尊大とか横柄とかにならない限り)安全な方法である。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.75、[渡辺義雄・1983])

(5)国民に希望を抱かせ続けること。
 巧みに希望を抱かせつづけ、人々を希望から希望へ進ませること。

 「時宜をはかって巧みに希望を抱かせつづけ、人々を希望から希望へ進ませることは、不満という毒に対する最上の解毒剤の一つである。

人々の心を満足によって引きつけられなくても、希望によって引きつけられるとしたら、またどんな害悪もはけ口の希望が少しもないほど、避けられぬものではないと思わせるように、事態を処理できるとしたら、それは賢明な統治と行政の確かなしるしである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、pp.75-76、[渡辺義雄・1983])

(6)政策の真の意図を隠しておくこと

 「私は王侯の口からふと洩れた才気走った辛辣な言葉が、反乱を燃え立たせたことに気づいている。」(中略)

確かに、微妙な事件や不安定な時代に対処するには、王侯は自分の言うことに気をつける必要がある。

とくに短い言葉に気をつけなければならない。それは矢のように飛び出し、彼らの秘密の意図から発射されたと思われる。

くだくだしい談話は、かえって退屈なものであって、それほど注意されないからである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.77、[渡辺義雄・1983])

(7)反対派のリーダーを作らない。
 不満を抱く人々が頼りにし、彼らの団結の中心になれる有望な頭首がいないように用心し予防する。

(8)反対派のリーダーを国家の側に引き入れること。
 傑出して名声もあり信頼されている人物は国家の側に、しっかりした間違いのない仕方で引き入れて、これと妥協する。

(9)反対派にもう一人のリーダーを立て、反対派を分裂させること。
 力のあるリーダーに対抗させるために、同派の他の誰かと対決させて、その名声を二分しなければならない。

(10)反対派を分裂、分断し、お互いに反目させること。
 一般に、国家に敵対する全ての党派や同盟を分裂させたり分断したりして、彼らを互に反目させ、少なくとも信用しないようにすること。

 「不満を抱く人々が頼りにし、彼らの団結の中心になれる有望な、あるいは適当な頭首がいないように用心し予防することも、衆知の、しかしすぐれた注意事項である。

私の言う適当な頭首とは、傑出して名声もあり、不満を抱く一派に信頼があり、彼らの注目の的となり、当人自身にも不満があると思われる人のことである。

この種の人物は国家の側に、しっかりした間違いのない仕方で引き入れて、これと妥協するか、さもなければこれに対抗させるために、同派の他の誰かと対決させて、その名声を二分しなければならない。一般に、国家に敵対するすべての党派や同盟を分裂させたり分断したりして、彼らを互に反目させ、少なくとも信用しないようにすることは、一考の余地がある対策である。国家の行政を支持する人々が、仲たがいや派閥争いに明け暮れ、反対する連中が仲よく団結しているならば、それは絶望的な状況だからである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.76、[渡辺義雄・1983])

(11)実力による担保も必要だ。

 「最後に、王侯は万一に備え、反乱を初期のうちに鎮圧するために、武勇に秀でた誰か傑出した人物を、一人またはそれ以上、必ずそば近くにおくがよい。そうしないと、騒動が突発した初期に、宮廷内に相応以上に、動揺が起こるにきまっているからである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『ベーコン随想集』一五、p.77、[渡辺義雄・1983])

ベーコン随想集 (岩波文庫 青 617-3)


(出典:wikipedia
フランシス・ベーコン(1561-1626)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「不死こそ、子をうみ、家名をあげる目的であり、それこそ、建築物と記念の施設と記念碑をたてる目的であり、それこそ、遺名と名声と令名を求める目的であり、つまり、その他すべての人間の欲望を強めるものであるからである。そうであるなら、知力と学問の記念碑のほうが、権力あるいは技術の記念碑よりもずっと永続的であることはあきらかである。というのは、ホメロスの詩句は、シラブル一つ、あるいは文字一つも失われることなく、二千五百年、あるいはそれ以上も存続したではないか。そのあいだに、無数の宮殿と神殿と城塞と都市がたちくされ、とりこわされたのに。」(中略)「ところが、人びとの知力と知識の似姿は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのである。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行動をひきおこし意見をうむからである。それゆえ、富と物資をかなたからこなたへ運び、きわめて遠く隔たった地域をも、その産物をわかちあうことによって結びつける、船の発明がりっぱなものであると考えられたのなら、それにもまして、学問はどれほどほめたたえられねばならぬことだろう。学問は、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎと、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるのである。
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)


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