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2018年8月27日月曜日

両方の海馬構造が損傷している患者は、顕在記憶を失っているが、意識経験があることは、自覚ある想起の証拠を必要としない心理認知テストで確認できる。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

海馬を損傷した患者の意識経験

【両方の海馬構造が損傷している患者は、顕在記憶を失っているが、意識経験があることは、自覚ある想起の証拠を必要としない心理認知テストで確認できる。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

(3)両方の海馬構造が損傷した患者の事例
 (3.1)今起こったばかりの出来事について、実際想起できるアウェアネスがまったく無い。
 (3.2)しかしながら、今現在と、自身について自覚する能力を維持している。起こったばかりのことを覚えられない自分の能力の欠陥についても自覚しており、これが生活の質に深刻な損害を与えている、と苦痛さえ訴える。また、潜在的なスキルの学習能力もある。
 (3.3)顕在記憶とは関係なく意識経験が発生するとしても、意識に必要な最低0.5秒間持続する活動についての、短期記憶がなければ意識経験は発生しないのではないか。「どのような短命の記憶であっても、依然としてそれはアウェアネスが生じる潜在的な基盤となる」。実際、両方の海馬を損傷した患者でも「1分程度だったら、この患者はものを覚えている」。

          記憶の想起と内観報告に代えて、
          自覚ある想起の証拠を必要としない
          心理認知テスト
            ↑
意識的な皮膚感覚──この感覚の短期記憶があるはず
 ↑
アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間
 ↑(これが、顕在記憶そのものではあり得ない。)
 │
単発の有効な皮膚への刺激パルス

 「両方の海馬を喪失していても、ある事象の後、最低でも0.5秒間存続する宣言記憶が形成されるのかということについては、まだ疑問があります。どのような短命の記憶であっても、依然としてそれはアウェアネスが生じる潜在的な基盤となるからです。先ほど述べた患者を研究した研究者であるロバート・ドーティは、「1分程度だったら、この患者はものを覚えている」と自信を持って言います。その一方、同様の患者に対しては通常、自覚ある想起の証拠を必要としない心理認知テストが使われます(たとえば、ドラックマンとアービット(1966年))。したがって、実際に観察される短期記憶は、ある非宣言的な潜在記憶の証拠に実質的になり得るのです。だとすれば、(短期記憶はたとえ患者で観察されたとしても)意識経験の遅延に記憶が果たす役割、という疑問とは関係がなくなります。〔訳注=このあたり、著者の論旨がわかりにくいかもしれない。海馬損傷による記憶障害の患者は、健常な潜在記憶を持ち、また日常生活でのアウェアネスにも異常がない。したがって患者の潜在記憶がアウェアネスを支えている、という議論が成立しそうに思えるかもしれない。しかし、アウェアネスに関係するのは(定義上)顕在記憶のほうだから、こうした記憶障害のケースを根拠に、0.5秒以上の神経活動というアウェアネスの必要条件が「意識経験は記憶に依存する」ことの反映にすぎないと結論はできない、と著者は言っている。〕いずれにせよ、記憶プロセス分野の指導的研究者であるラリー・スクワイアは、意識経験は記憶形成プロセスとは無関係である(私信)、という意見を主張しています。すると、新たな顕在記憶を形成する能力を深刻に損なった人がアウェアネスを保持できるということは、アウェアネスの現象は記憶プロセスの機能では《ない》ことを示していると思われます。この基本的な考え方は、アウェアネスは記憶形成に関係があるとしているすべての仮説と矛盾することになります。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.72-73,下條信輔(訳))
(索引:海馬を損傷した患者の意識経験)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

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2018年8月20日月曜日

意識経験を生み出す0.5秒間の脳の活性化は、海馬が媒介する顕在記憶や、非宣言的記憶や潜在記憶と同じものではない。すなわち、意識経験と記憶とは別の現象である。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

意識経験と記憶

【意識経験を生み出す0.5秒間の脳の活性化は、海馬が媒介する顕在記憶や、非宣言的記憶や潜在記憶と同じものではない。すなわち、意識経験と記憶とは別の現象である。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

(1)宣言記憶、顕在記憶
 意識的な想起や報告が可能で、側頭葉の海馬組織が生成を媒介している。
(2)非宣言的記憶、潜在記憶
 事象についての意識的なアウェアネスがまったくなくても形成され、想起や報告ができない。
(3)両方の海馬構造が損傷した患者の事例
 (3.1)今起こったばかりの出来事について、実際想起できるアウェアネスがまったく無い。
 (3.2)しかしながら、今現在と、自身について自覚する能力を維持している。起こったばかりのことを覚えられない自分の能力の欠陥についても自覚しており、これが生活の質に深刻な損害を与えている、と苦痛さえ訴える。また、潜在的なスキルの学習能力もある。

(b)疑問:アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間というのは、単にある事象の短期記憶を生み出すのにかかる時間を反映しているだけではないか。
(c1)可能な仮説1:記憶痕跡の発生そのものが、アウェアネスの「コード」である。
 (c1.1)潜在記憶の生成そのものが、意識経験を生み出しているわけではない。なぜなら、潜在記憶は想起や報告ができないからだ。

          これは想起できない
            ↑
意識的な皮膚感覚    │
 ↑          │
アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間
 ↑(これが、潜在記憶そのもの?)
 │
単発の有効な皮膚への刺激パルス

 (c1.2)顕在記憶の生成そのものが、意識経験を生み出しているわけではない。なぜなら、両方の海馬を損傷して顕在記憶を失った患者でも、意識的な経験を確かに持っているからだ。

意識的な皮膚感覚
 ↑
アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間
 ↑(これが、顕在記憶そのもの?)
 │
単発の有効な皮膚への刺激パルス

(c2)可能な仮説2:ある事象のアウェアネスは遅延無しに発生するが、それが報告可能になるには、0.5秒間の長さの活性化が必要である。


 「人間の被験者を観察した報告が、アウェアネスを生み出す上での記憶形成の役割について大きな論争を提供します。人間も、それ以外の動物でも、いわゆる宣言記憶、または顕在記憶の形成の媒介機構として、大脳半球の側頭葉の中にある特定の構造が必要になります。こうした種類の記憶は、意識的な想起や報告が可能です。これらは、非宣言的記憶や潜在記憶と区別されています。潜在記憶は、事象についての意識的なアウェアネスがまったくなくても形成されますが、想起や報告ができません。これらは機械的・知的両方のスキルを習得する際に主に機能します。〔訳注=宣言記憶とは命題の形で書けるような知識の記憶を指す。たとえば歴史上の事実についての記憶がそれである。それ以外の記憶を非宣言的記憶といい、手続き記憶やプライミング、条件づけなどがこれに含まれる。手続き記憶とは、自転車の乗り方やチェスのプレーの仕方など、またプライミングとは、一度経験すると後の同じ刺激の処理がより効率的になる効果を指す。〕
 側頭葉の海馬組織は、顕在記憶の生成を媒介するために必要な神経コンポーネントです。片半球の海馬が損傷しても、損なわれていない反対半球の構造が、記憶プロセスを実行できます。しかしもし、両方の海馬構造が損傷すると、その人は新しい顕在記憶を形成する能力の深刻な喪失に陥ります。このような人には、今起こったばかりの出来事について、実際想起できるアウェアネスがまったくありません。ある事象が起こった直後でも、その事象の内容をこの人は語ることができないのです。
 このような喪失は、両方の側頭葉の病的な損傷が原因です。より厳密に言うと、この左右相称の喪失は海馬内のてんかん病巣を除去する外科手術で、間違って健常な海馬部位まで除去してしまった場合に起こりました。この手術ミスが起こった当時は、どちら側の海馬に欠陥があるかを判断するのは難しいことでした。そのため、患者の良いほうの部分を除去してしまい、もう片方の機能していない病巣構造を残してしまったのです。この間違いが、顕在記憶の形成における、海馬構造の役割の発見につながりました。
 ここで、私たちの現在の目的に見合った、以下のような興味深い観察ができます。両方の海馬構造を喪失した人は、事実上、今起こったばかりのどのような事象や感覚像についても、まったく想起可能なアウェアネスがありません(一方、損傷を受ける前に形成された長期記憶は、失われることはありません)。しかしながら、このような人は今現在と、自身について自覚する能力を維持しています。
 このタイプの喪失を持つある患者についての映画を観ると、この人は機敏で話好きです。彼は自分の周囲の環境と、自分をインタヴューしている心理学者をはっきり自覚しています。またさらに彼は、起こったばかりのことを覚えられない自分の能力の欠陥についても自覚しており、これが生活の質に深刻な損害を与えている、と苦痛さえ訴えました。
 この患者は、実際にはすべての記憶機能を喪失したわけではありませんでした。彼はコンピュータの前に座って、スキルを競うゲームの遊び方を覚えることができました。しかし、どのようにそのスキルを覚えたのかは、彼には説明ができませんでした。学習したスキルの記憶は明らかに、潜在タイプであり、海馬構造の機能を必要としません。つまり、これは海馬とはまた別の神経経路の働きであるに違いありません。しかし(当然のことながら)潜在記憶と結びついたアウェアネスはありません。したがって、記憶にはアウェアネスを生み出す役割がある、という主張に潜在記憶を利用することはできないわけです。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.69-71,下條信輔(訳))
(索引:意識経験,記憶,顕在記憶,潜在記憶)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

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2018年8月14日火曜日

8.疑問:アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間というのは、単にある事象の短期記憶を生み出すのにかかる時間を反映しているだけではないか。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

短期記憶と意識

【疑問:アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間というのは、単にある事象の短期記憶を生み出すのにかかる時間を反映しているだけではないか。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

(a)明らかに、被験者がそのアウェアネスを想起し報告するには、ある程度の短期記憶の形成が起こらなければならない。

          記憶の想起と内観報告
            ↑
意識的な皮膚感覚──この感覚の短期記憶があるはず
 ↑
アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間
 ↑
単発の有効な皮膚への刺激パルス

(b)疑問:アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間というのは、単にある事象の短期記憶を生み出すのにかかる時間を反映しているだけではないか。
(c1)可能な仮説1:記憶痕跡の発生そのものが、アウェアネスの「コード」である。
(c2)可能な仮説2:ある事象のアウェアネスは遅延無しに発生するが、それが報告可能になるには、0.5秒間の長さの活性化が必要である。

 「0.5秒間の活性化の持続がアウェアネスに必要であることをどう説明するのかという問いには、また別の大きな問題があります。それは、記憶形成の果たしうる役割です。

 主観的なアウェアネスの唯一の有効な証拠とは、実際それを経験した個人のアウェアネスについての内観報告のみであることを、すでに述べました。

しかし明らかに、被験者がそのアウェアネスを想起し、報告するには、ある程度の短期記憶の形成が起こらなければなりません。

ついでに言えば、短期記憶、または「ワーキング」メモリーというのは、ある事象の数分後にその情報を想起するという人間の能力のために働いている記憶を指します。一度見ただけで7桁から11桁の電話番号を想起する能力が、このタイプの記憶の良い例です。さらに訓練を重ねなければ、人はその番号を数分で忘れるものです。

長期記憶では、その上にさらにニューロンのプロセスが関与するおかげで、その効果が数日や数ヶ月、数年間持続します。

 学者によっては、アウェアネスに必要な0.5秒間の活動持続時間というのは、単にある事象の短期記憶を生み出すのにかかる時間を反映しているだけではないか、と主張します(リベット(1993年)におけるデネットの議論を参照)。

この記憶形成が作用するとしたら、少なくとも二つのやり方があります。一つは、記憶痕跡の発生そのものが、アウェアネスの「コード」である場合です。

もう一つは、ある事象のアウェアネスは意味のある遅延などまったくなしに発生するが、それが報告可能になるには、0.5秒間の長さの活性化が必要であるとう場合です。

これらの選択肢のいずれについても、それを反証する実験結果があります。それについて簡単に説明します。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.68-69,下條信輔(訳))
(索引:短期記憶,意識)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

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2018年8月12日日曜日

7.信号に対する反応時間は、200~300msである。被験者に100ms、意図的に反応を引き延ばすよう指示すると、結果は600~800msになる。これは、刺激を意識化するのに必要な約500msで説明可能だ。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

意図的な引き延ばしによる反応時間

【信号に対する反応時間は、200~300msである。被験者に100ms、意図的に反応を引き延ばすよう指示すると、結果は600~800msになる。これは、刺激を意識化するのに必要な約500msで説明可能だ。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

(a)通常の反応時間(RT)測定
 (a1)被験者への指示
  前もって決められた信号が現れたらできるだけ早くボタンを押すこと。
 (a2)結果
  採用した信号の種類によって、200~300ms
(b)意識的な引き延ばしによる反応時間(RT)測定
 (b1)被験者への指示
  前もって決められた信号が現れたら、100ms程度、意図的に引き延ばしてボタンを押すこと。
 (b2)結果
  採用した信号の種類によって、600~800ms

(a)通常の反応時間(RT)測定では、反応のために刺激へのアウェアネスは必要ない。実際、アウェアネスの発生前に、反応が起こるという直接的な証拠がある。

意識的感覚
 ↑      反応…………………
 │       ↑     ↑
感覚皮質の活性化 │   200~300ms
 ↑       │     │
 ├───────┘     │
刺激………………………………………

(b)意図的なプロセスによってRTを引き延ばしたい場合、被験者はまず刺激に気がつかなくてはならない。

        反応…………………
         ↑     ↑
 ┌───────┘   600~800ms
意識的感覚          │
 ↑             │
 │             │
感覚皮質の活性化       │
 ↑意識感覚を生み出すために │
 │500ms以上の持続が必要  │
刺激………………………………………

 「三番目の証拠は、思いがけず、カリフォルニア大学バークレー校の心理学の教授アーサー・ジェンセン(1979年)の一見関連性のない実験から現われました。

ジェンセンは、異なるグループの被験者の反応時間(RT)を測定していました。通常のテストでは、前もって決められた信号が現れたらできるだけ早くボタンを押すように、被験者に指示していました。ジェンセンの実験の被験者が示したRTは、採用した信号の種類によって、200~300ミリ秒間の範囲でした。

別の被験者グループの間で平均RTに差があったため、ジェンセンは、ある被験者が意図的にRTを引き延ばそうとすることによってある程度の差が生じる可能性を排除しようと考えました。

そこで彼は、すべての被験者に、以前のRTよりも100ミリ秒間程度、意図的に引き延ばしてRTを繰り返すように指示しました。

彼が驚いたことに、指示通りにできた被験者は一人もいませんでした。その代わり、被験者が記録したのは指示されていた小さい延長分よりもずっと長い、600~800ミリ秒間のRTでした。

 ジェンセンが、私たちの意識を伴う感覚的なアウェアネスの500ミリ秒間の遅れについて聞いたとき、彼は自分の奇妙な発見がこれで説明がつくに違いない、と気づきました。

意図的なプロセスによってRTを引き延ばしたい場合、被験者はまず刺激に気がつかなくてはならない、と推測できます。通常のRTテストで被験者が反応した瞬間には、刺激へのアウェアネスはおそらく必要なく、そこでは反応への意図的な操作は問題にはなりません。

(実際、通常のRTは刺激へのアウェアネスなしに、またはアウェアネスの起こる前に発生するという、直接的な証拠があります。)

しかし、意図的に遅らせた反応の前にアウェアネスが生じるには、約500ミリ秒間の活動というアウェアネスを生み出すための必要条件が、そのぶんだけ反応を遅らせます。

これで、意図的に反応を遅らせることを試みた場合、300~600ミリ秒間増えるRTの非連続的なジャンプの説明がつきます。このことが、ジェンセンの発見についての唯一、筋が通った説明となります。また、感覚的なアウェアネスにおける0.5秒間の遅れについての、さらに説得力のある証拠となります。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.63-64,下條信輔(訳))
(索引:意図的な引き延ばしによる反応時間)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
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2018年8月11日土曜日

6.遅延刺激による遡及性の促進効果:遅延刺激が皮質への直接的な微弱な刺激の場合には、最大400msの遅れた刺激でも、先行刺激を遡及して強める。すなわち遅延刺激は、条件によってマスキング効果と促進効果の両方を持つ。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

遅延刺激による遡及性の促進効果

【遅延刺激による遡及性の促進効果:遅延刺激が皮質への直接的な微弱な刺激の場合には、最大400msの遅れた刺激でも、先行刺激を遡及して強める。すなわち遅延刺激は、条件によってマスキング効果と促進効果の両方を持つ。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

     2番目の刺激S2
     S1より強く感じられる
          ↑
          │
感覚皮質の活性化─促進
 ↑       ↑
2番目の刺激    │
 S2       │
 │       │
 │    3番目の刺激
 │       │
 │       │
  50~1000ms遅れ

(a)遅延する条件刺激は皮質への刺激
 1番目の刺激(テスト刺激の大きさを評価するための対照刺激)
  皮膚へ微弱な単発のパルスを与える。S1
 2番目の刺激(テスト刺激)
  1番目と同じ、皮膚へ微弱な単発のパルスを与える。S2
  1番目の刺激から、5秒間の間隔を置いている。
 3番目の刺激(条件刺激)
  電極を使って、皮質へ連発したパルスを与える。
  このパルスは、マスキングの時より、小さい刺激である。
  2番目の刺激S2から、50~1000ms遅れて与える。
 結果
  S2の後、最大400ms以上遅れていたとしても、S1よりもS2の刺激のほうが強く感じされると被験者は報告する。

 「また私たちは、遅延刺激が最初の皮膚感覚をマスキングする代わりに遡及的に促進、または強化することができるという、驚くべき発見をしました。

これは、遅延刺激を生み出すのに、より小さい電極を使って感覚皮質に接触したときに発見しました。

この実験では、最初の微弱な皮膚パルスとして、5秒間の間隔を置いた同一のパルスを二回送ります。被験者は、二番目の皮膚刺激(S2)が一番目(S1)と比べて同じか、弱いか、強く感じられるかを報告するように指示を受けます。二番目の皮膚パルスS2の後、50~1000ミリ秒間の間隔をおいて、遅延皮質刺激を与えます。

ほとんどの試行において、皮質刺激が始まると、それがS2の後、最大400ミリ秒以上遅れていたとしても、S1よりもS2の刺激のほうが強く感じされると被験者は報告します。

〔訳注=S1はS2に対して通常抑制的な効果を持ち、したがってS2は、S2を単独で提示した場合に比べ、弱く感じられる。しかし、この場合、皮質連発刺激によってS2はS1による抑制効果から解放され、より強く感じられる。先行刺激S1の有無と電極の大きさなどの要因によって、マスキングが起こるか促進が起こるかが決まる。〕

 その後、私たちは、テスト刺激と条件刺激の両方が、同じ電極を経て指の皮膚に与えられた場合の遡及性の促進(または強化)について、ピエロンとシーガル(1939年)がすでに報告していたことを発見しました。

最初の刺激、または(二番目の)テスト刺激が閾値より下である場合に、効果が見られます。テスト刺激の後、20~400ミリ秒間の間隔を置いて閾値より上の条件刺激が続く場合、知覚可能になります。

 これは明らかに、微弱な皮膚パルスによって生じた意識感覚が、約500ミリ秒間遅れた二番目の入力によって遡及的に修正され得ることになります。このことは、皮膚刺激のアウェアネスを生み出す0.5秒間の脳の活動、という私たちが仮定した必要条件を十分にサポートします。

 遡及性の促進という発見が、重要な理論上の要因として、こうした考えをさらに支持することになりました。

遡及性のマスキング/抑制については、遅れた皮質刺激がそれに先立つ皮膚刺激の記憶の形成を単に混乱させているだけだ、という主張がありました。この主張は、脳の広範な領域への全体的な強い電気刺激が(電気ショック療法の場合のように)最新の記憶を破壊するという事実に、ある程度基づくものです。

しかし難治性のうつ病に罹っている患者への治療目的で与えられるこのような電撃によるショック療法では、脳の大部分が強く興奮するため、結果として発作が生じます。

私たちが扱っている遡及性の効果を得る場合は、皮質の中に局所的な発作を起こすのに必要な強さよりもはるかに微弱な力で、感覚皮質の小さな領域に限局して、遅延刺激が与えられています。従って、遡及効果のあるマスキングが記憶を破壊するという主張は、非常に弱いものです。

しかも、遡及性の促進では、記憶の喪失はまったくありません。被験者は二番目の皮膚刺激を、一番目の条件刺激よりも強いものとして記憶しているのです。」

(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.60-63,下條信輔(訳))
(索引:遅延刺激による遡及性の促進効果)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

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2018年8月10日金曜日

5.遅延刺激によるマスキング効果:最大で100ms遅れた刺激は、先行する刺激の意識化を抑制する。遅延刺激が皮質への直接的な刺激の場合には、200~500ms遅れた刺激でも、先行刺激の意識化を抑制する。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

遅延刺激によるマスキング効果

【遅延刺激によるマスキング効果:最大で100ms遅れた刺激は、先行する刺激の意識化を抑制する。遅延刺激が皮質への直接的な刺激の場合には、200~500ms遅れた刺激でも、先行刺激の意識化を抑制する。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

(a)1番目の刺激による意識的な感覚が生じるのに十分な脳の活性化が完了する前に、2番目の刺激を与えると、2番目の刺激に妨げられて、1番目の刺激が意識されなくなる。

       1番目の刺激は
       意識されない
          ↑
          │
感覚皮質の活性化─妨げられる
 ↑       ↑
1番目の刺激    │
 小さな微弱な  │
 光の点     │
 │    2番目の刺激
 │    1番目の刺激を囲む、
 │    より強く大きな閃光
 │       │
  最大100ms遅れ

(b)両腕の皮膚刺激による実験
 1番目の刺激
  一方の前腕の皮膚に、閾値の強さのテスト刺激(電気刺激)を与える。
 2番目の刺激
  もう一方の前腕に、条件刺激を与える。
 結果:テスト刺激の閾値が上がる。
  最大100ms遅れても効果がある。500ms遅れると効果はない。
(c)条件刺激を、皮質への刺激に変えた実験
 1番目の刺激
  皮膚へ微弱な単発のパルスを与える。
 2番目の刺激
  電極を使って、皮質へ連発したパルスを与える。
 結果
  200~500ms遅れた皮質刺激でも、意識をブロックできる。
  皮質刺激が、100ms以下の連発刺激や単発のパルスでは、意識をブロックできない。

 「二番目の証拠というのは、最初にテストしたものに続いて遅れた二番目の刺激の、逆行性の遡及効果に基づくものです。

二つの末梢の感覚刺激の間に、逆行性、または遡行するマスキング効果があることが、よく知られています。最初の小さな微弱な光の点を囲む二番目のより強く大きな閃光は、最初の光に対する被験者のアウェアネスを遮断することができます。

最初の微弱な閃光の後、最大限100ミリ秒間の遅れがあったとしても、二番目の閃光にはこうした効果があります(例としてクロウフォード(1947年)参照)。

 遡及性のマスキングはまた、皮膚への電気刺激においても報告されてきました(ホーリデイとミンゲイ(1961年))。

一方の前腕に閾値の強さのテスト刺激を与え、閾値より上の条件刺激をもう一方の前腕に与えると、テスト刺激の閾値が上がります〔訳注=閾値が上がるとはすなわち、刺激強度を上げないと検出しにくくなるということ。〕

テスト刺激の100ミリ秒後でも、この条件刺激は効果がありますが、500ミリ秒後では効果がありません。この、100ミリ秒の感覚での逆行性マスキングは、中枢神経系によって媒介されているに違いありません。なぜなら、テスト刺激と条件刺激は、それぞれ異なる感覚経路(つまり逆側の腕)を経由して伝達されるからです。

 この逆行性マスキングは、感覚的なアウェアネスについて私たちが仮定した遅れとどのような関係にあるのでしょうか? 

もし、アウェアネスを生み出すために、適切な神経活動が脳内で最大0.5秒間継続しなければならないのならば、その必要条件である時間感覚の間に二番目の刺激が伝達されると、この神経活動の正常な完了を妨げることになるでしょう。そして、これは感覚的なアウェアネスをブロックすることになるでしょう。

末梢の感覚組織ではなく、脳レベルで(刺激に)反応する組織において、このようなマスキングが生じることを私たちは立証したいと考えました。

またさらに、遡及性の効果を生み出す二つの刺激の間の時間的間隔が、私たちが主張する0.5秒間という必要条件に何とか近い値まで上げることができるかを検討したいと思いました。

 こうした目的を達成するために、私たちは体性感覚皮質に直接、遅延した条件刺激を与えました。

最初の(テスト)刺激は、皮膚への微弱な単発のパルスでした。続いて、1センチ以上の大きなディスク電極を使って、皮質への遅延刺激を与えました。この刺激は比較的強く、皮膚へのパルスから生じる感覚の領域とオーバーラップする、(ほぼ同じ)皮膚領域で感覚が生じました。

被験者は、この二つの感覚を、質感と強さ、また関与する皮膚の領域によって難なく区別できました。

 実際、皮膚パルスの後、200~500ミリ秒までの間に皮質刺激が始まったとしても、この遅延皮質刺激が皮膚のアウェアネスをマスクまたはブロックし得ることを、私たちは発見しました。

ついでに言えば、遅延皮質刺激は、連発したパルスから成ります。100ミリ秒以下の皮質への連発刺激、または単発のパルスには、この遡及性のある抑制効果が《ありません》。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.58-60,下條信輔(訳))
(索引:遅延刺激によるマスキング効果)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

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2018年8月9日木曜日

4.皮膚への単発の有効な刺激に対して、14~50ms後に初期EP(誘発電位)が生じ、その後ERP(事象関連電位)が生じる。初期EPは、意識感覚の必要条件でも十分条件でもない。ERPが意識感覚と関連している。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

初期誘発電位(初期EP)と事象関連電位(ERP)

【皮膚への単発の有効な刺激に対して、14~50ms後に初期EP(誘発電位)が生じ、その後ERP(事象関連電位)が生じる。初期EPは、意識感覚の必要条件でも十分条件でもない。ERPが意識感覚と関連している。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

意識的な皮膚感覚
 ↑
 │
事象関連電位(ERP)と呼ばれる皮質の一連の電気変化
 ↑意識感覚を生み出すために、500ms以上の間持続することが必要である。
 │全身麻酔状態にある場合、ERPは消失する。
 │皮膚パルスの強さを、意識できないレベルまで下げると、ERPは突然消失する。
 │
皮膚領域が「投射する」感覚皮質の特定の小さな領域で、初期EP(誘発電位)が局所的に発生する。
 ↑短い経路で14~20ms、長い経路で40~50ms後。
 │初期EPが無くとも、意識感覚は生み出せる。
 │初期EPがあっても、意識感覚は生み出せない。
 │
 │速い特定の投射経路を通っていく。
 │
単発の有効な皮膚への刺激パルス

 「第一番目の証拠は、皮膚への単発の《有効な》刺激に対する大脳皮質の電気反応についてです。

各々の単発のパルスによって、誘発電位(EP)または事象関連電位(ERP)と呼ばれる皮質の一連の電気変化が生じることは、すでに見つかっていました。これらのERPが、皮質内での神経細胞の反応を反映していることは研究によって示されています。

 ここにはさまざまな重要なコンポーネントがあります。まず、刺激を受けた皮膚領域が「投射する」感覚皮質の特定の小さな領域で、初期EPが局所的に発生します。

この初期EPを起こす入力が、前に述べた速い特定の投射経路を通っていくのです。初期EPは、皮膚パルスの後、ほんの数十ミリ秒間の遅れの後に始まります。たとえば頭からのように、距離の短い経路の場合、14~20ミリ秒間の遅延の後に始まり、足からの長い経路の場合は40~50ミリ秒間かかることがあります。初期EPのサイズまたは振幅は皮膚からの入力の強さに関係して決まります。

 初期EPの驚くべき特性というのは、これが意識感覚を引き出すための必要条件でも十分条件でもないことです。

必要でないことがわかった理由は、感覚皮質の表面に微弱な刺激を与えると意識感覚を引き出すことができることでした。この皮質刺激は、初期EPと同等の、いかなる誘発電気反応も生み出しません。初期EPは下から感覚経路を通って皮質に伝えられる入力によってのみ、生じるのです。

 一方、特定の感覚経路のうち《脳の中に位置する部分》のどこにでも《単発の》刺激パルスを与えると、感覚皮質の初期EP反応を確かに引き出します。しかし、この単発のパルスは主観的な感覚をまったく引き出しません。

これは、パルスが比較的強く、誘発された初期EP反応が大きかった場合ですら、このことには変わりがありません(リベット他(1968年))。第一次感覚経路からの反応が(単発で)意識感覚を引き出すことができないことを、ジャスパーとバートランド(1966年)も観察しています。

すでに述べてきたように、意識を伴う感覚を得るには、感覚皮質へ刺激を与える場合と同じように、この経路に刺激パルスが反復的に与えられなければならないのです。

(皮膚へのパルス刺激に対して)最初に起こる皮質の初期反応によって意識感覚が生じない以上、アウェアネスを実現するには後から起こるいくつかの反応コンポーネントが必要ということになります。

実際、皮膚への単発のパルスは、記録された皮質の電気反応の中で、最初に誘発された反応に加えて、後に続くコンポーネントを引き出します。

人間が全身麻酔状態にある場合には、初期EPは拡大する場合さえある一方、後に続くERPのコンポーネントは消失します。しかし、当然ながら患者にはどのような感覚も生じません。

同様に、単発の皮膚パルスの強さを、覚醒した健常な被験者が何も感じないと報告するレベルにまで下げた場合、後に続くERPコンポーネントは突然になくなりますが、はっきりとわかる初期EP反応は依然として感覚皮質で記録することができるのです(リベット他(1967年))。

 したがって、《皮膚への単発のパルス》の後に生じる大脳皮質の《後からの》反応が、意識感覚を生み出すのに必要であるらしい、ということになります。これらの遅い反応は、事実上、仮定されているアウェアネスの遅れに必要な活性化をするのに十分な、0.5秒以上の間持続します。そしてこの現象は皮膚への正常な感覚刺激でも起こります。

しかしながら、意識感覚に必要な、後から誘発されるコンポーネントの実際の最小限の時間の長さがどれほどかは、まだ立証されていません。また後からの反応のうち特定のコンポーネントが、アウェアネスの特別な作用因子である可能性も、まだ証明されていません。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.54-58,下條信輔(訳))
(索引:初期誘発電位,初期EP,事象関連電位,ERP)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
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2018年8月8日水曜日

3.感覚皮質への刺激が意識経験を生じさせるのに、約0.5sの持続時間が必要だとすれば、通常の皮膚への刺激などによって意識感覚が生じるためには、刺激から約0.5sの遅れがあるはずである。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

意識感覚の遅れ

【感覚皮質への刺激が意識経験を生じさせるのに、約0.5sの持続時間が必要だとすれば、通常の皮膚への刺激などによって意識感覚が生じるためには、刺激から約0.5sの遅れがあるはずである。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】
(再掲)
(a)感覚皮質への刺激
 感覚皮質に、約0.1~0.5msのパルス電流を20~60p/sの周波数で与え、閾値レベルの微弱な意識感覚を生じさせるには、約0.5sの持続時間が必要である。高周波数では閾値の強度は低くなるが、約0.5sの持続時間は不変である。
(b)皮膚への刺激
 皮膚への刺激は、単発で微弱な電気パルスからでさえ、意識感覚が生じる。
 すると(a)から、皮膚感覚を意識するためには、0.5秒間の遅れがあるはずである。

意識的な皮膚感覚 0.5秒間の遅れがあるはず。
 ↑
十分な長さ(0.5秒間)の脳の活性化
 ↑
単発の有効な皮膚への刺激パルス

 「感覚経路の脳レベルでの直接的な活性化のためには時間的な必要条件がある、というこの新しい発見は、しかし、皮膚への刺激や、皮膚から脊髄への神経線維の刺激の必要条件とは合致しないようです。

皮膚へ(または、皮膚から神経線維へ)の単発で微弱な電気パルスからでさえ、意識感覚が生じることは長い間知られていました。

では、いったい何が起こっているのでしょうか? アウェアネスが生じるまでの相当の遅延に対する私たちの提案は、皮膚からの通常の場合には通用しないのでしょうか?

 この疑問を検討するには、末梢的な(皮膚)入力での必要条件と、皮膚からの入力によって生じる脳プロセスでの必要条件の違いを区別する必要があります。すなわち、意識的な皮膚感覚が現れるには、単発の有効な皮膚への刺激パルスによって十分な長さ(0.5秒間)の脳の活性化が生じていなければならないでしょう。

そのため、以下の記述内容が真実であるかを検証する方法を私たちは検討しました。「皮膚への単発パルス入力によって生じた、意識を伴う感覚的なアウェアネスにおいても、0.5秒間の遅れがあるか?
  ――正常な感覚入力に伴う、アウェアネスの実際の遅延――
 皮膚、または感覚神経への単発で微弱なパルスでも、意識感覚を十分に引き出すことができます。

このことは、前節で述べた証拠に一見反論しているように見えます。その研究では、意識感覚が生じるには最大約0.5秒間の脳の活性化が必要であることがわかりました。これが皮膚への刺激にも当てはまるのならば、意識を伴った皮膚感覚が現れるには、単発な刺激パルスによって十分な長さ(0.5秒間)の脳の活性化が生じていなければならないことになります。

 すると、質問は以下のようなものになります。「そのパルスが意識感覚を引き出した場合、皮膚への単発パルスは、約0.5秒間は続かなければならない脳の活性化を生みだしていただろうか?」これはすなわち、神経メッセージが皮膚の正常なソースへの単発で微弱なパルスによって始まった場合、やはり感覚的なアウェアネスに実際の遅延があるだろうか、ということです。」

(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.52-54,下條信輔(訳))
(索引:意識感覚の遅れ)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

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2018年7月29日日曜日

2.感覚皮質に、約0.1~0.5msのパルス電流を20~60p/sの周波数で与え、閾値レベルの微弱な意識感覚を生じさせるには、約0.5sの持続時間が必要である。高周波数では閾値の強度は低くなるが、約0.5sの持続時間は不変である。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

意識経験を生じさせるのに必要な刺激時間

【感覚皮質に、約0.1~0.5msのパルス電流を20~60p/sの周波数で与え、閾値レベルの微弱な意識感覚を生じさせるには、約0.5sの持続時間が必要である。高周波数では閾値の強度は低くなるが、約0.5sの持続時間は不変である。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】
(1)実験方法
 (1.1)短いパルス電流(実験によってそれぞれ約0.1~0.5ミリ秒間持続する)による刺激を、1秒あたり20パルスから60パルスの範囲で反復する。
 (1.2)1秒あたりのパルス数を決めたら、電流の強さは、意識感覚を生じるような最低限のレベルまで下げる。
(2)実験結果
 (2.1)閾値レベルの微弱な感覚を引き出すには、反復的な刺激パルスを約0.5秒間継続しなければならない。
 (2.2)1秒間あたり30パルス(pps)から60パルスという、より周波数の高い刺激パルスにすると、閾値の強度が低くなる。すなわち、弱い電流でも意識経験が生じる。
 (2.3)しかし、60ppsで意識感覚を引き出すために必要な最小限の連発持続時間が0.5秒間で、変わらない。すなわち、与えられた周波数ごとに決まる閾値強度を用いている限りは、0.5秒間の連発時間という最小限の必要条件は、周波数または刺激パルスの回数には影響を受けず、不変である。

以下、補足説明。(ただし、図は概念的なものである。)
(a)被験者の報告する意識感覚の長さも変わる。
││││││││││││││││││││
┼┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┼
│←─5~0.5秒───────────→│

(b)閾値レベルの微弱な感覚を引き出すには、反復的な刺激パルスを約0.5秒間継続しなければならない。
││││││││││
┼┴┴┴┴┴┴┴┴┼
│←─0.5秒 ──→│

(c)連発した閾値の刺激を0.5秒以下に短縮すると、感覚が消失する。
│││││││││
┼┴┴┴┴┴┴┴┼
│←0.5秒 より→│
   短時間

(d)パルスの強度(ピーク電流)が十分に上がっていればどうにか意識的感覚を引き出すことができる。しかし、強度をより強くしていくと、人間の通常の日常生活ではそう簡単には出会わないであろうレベルの末梢感覚インプットの範囲に達する。
││││
││││
││││
││││
││││
┼┴┴┴

(e)ほんの数回、または単発のパルスでも反応が生じるほどの強度の刺激を体性感覚皮質に与えた場合には、手または腕の筋肉のわずかな痙攣が発生し、被験者の報告に影響を与える。すなわち、感覚皮質への刺激だけから、意識的感覚が生み出されたかどうかを判断することができなくなる。
││
││
││
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││
││
││
││
││
┼┴

 「それでは、感覚皮質にあらゆる種類の多様な刺激を与えた結果、何が発見されたでしょうか(リベット他(1964年)、リベット(1973年)参照)。

短いパルス電流(実験によってそれぞれ約0.1~0.5ミリ秒間持続する)による刺激を、1秒あたり20パルスから60パルスの範囲で反復します。

その結果、時間的要因が、意識経験を引き出すための最も興味深い必要条件であることがわかりました。閾値レベルの微弱な感覚を引き出すには、反復的な刺激パルスを約0.5秒間継続しなければなりません。この必要条件は、神経機能としては驚くほど長い時間です。

 では、これをどのように計測したのでしょうか? 0.5秒間持続する《一連》のパルスで最も微弱な意識感覚を生み出すには、そのために必要な《最低限の》レベルまで強度(各パルスの電流の強さ)を上げなければなりません。

この閾値の強度で連発したパルスを5秒以下に短縮すると、被験者が報告する意識感覚の長さもまた短縮します。しかし、被験者が知覚している感覚の強さは変わりません。

さらに、連発した閾値の刺激を0.5秒以下に短縮すると、感覚が消失します。

一方、連発時間が短くても(0.5秒以下)、パルスの強度(ピーク電流)が十分に上がっていればどうにか意識的感覚を引き出すことができました。

しかし、強度をより強くしていくと、人間の通常の日常生活ではそう簡単には出会わないであろうレベルの末梢感覚インプットの範囲に達します。

 それでは、刺激強度を上がることによってどうして、0.5秒以下の連発したパルスでも効果が得られるようになるのでしょうか? より高い強度であれば、間違いなくより多くの神経線維を興奮させ、これらの神経線維からインプットを受ける数多くの神経細胞に影響を与えます。

あるいは、強度が上がると、(興奮する神経細胞の数は増えないにしても)より低い閾値の刺激強度に反応する共通のニューロン群の多くで、発火の頻度が増加します。

これと関連して、たとえば、1秒間あたり30パルス(pps)から60パルスというより周波数の高い《刺激》パルスにすると、閾値の強度が低くなります。

しかし、60ppsで意識感覚を引き出すために必要な《最小限の連発持続時間》が0.5秒間であることには《変わりありませんでした》。

つまり、与えられた周波数ごとに決まる閾値強度を用いている限りは、0.5秒間の連発時間という最小限の必要条件は、周波数または刺激パルスの回数には影響を受けず、不変であることが示されています。

 刺激の強度を上げていくと、(結果の解釈上)込み入った要因が関わってくることになります。すなわち、より直径の細い、さまざまな神経線維までもが発火し得るのです。

これがどのように、受容体ニューロン群の反応に影響を与えるかについてはまだ明らかになっておらず、(結果を予測する上で)取り扱いが難しいのです。

 ほんの数回、または単発のパルスでも反応が生じるほどの強度の刺激を体性感覚皮質に与えた場合には、さらに込み入った問題が生じます。

しかし、これらの反応は、手または腕の筋肉のわずかな痙攣も含みます。したがって、こうした高い強度においては観察可能な運動反応が見られるわけです。患者が報告した内容は、筋肉中または周辺にある受容体から実際の末梢感覚メッセージを生み出すこの筋肉の痙攣と明らかに関係があるのです。

(したがって、500ミリ秒以下で自覚報告が得られても、先の原則の反証にはならないのです)。

こうした運動反応があるせいで、(末梢からのいかなる感覚フィードバックもなしで)単発あるいはほんのわずかな回数の強いパルスが意識感覚を直接引き出せるかどうかを決定することはできないのです。」

(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第2章 意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延,岩波書店(2005),pp.45-47,下條信輔(訳))
(索引:意識経験を生み出すのに必要な刺激時間)

マインド・タイム 脳と意識の時間


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ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
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