2018年5月27日日曜日

ものごとの道理と正義に従い行動するということ自体には、上手も下手もなく失敗もないので、いかなる困難にあったとしても、この道に進むことを楽しむことができ、ことの成否や自分の死生も気にならなくなる。(西郷隆盛(1828-1877))

道を行う

【ものごとの道理と正義に従い行動するということ自体には、上手も下手もなく失敗もないので、いかなる困難にあったとしても、この道に進むことを楽しむことができ、ことの成否や自分の死生も気にならなくなる。(西郷隆盛(1828-1877))】
 普通は、行動の仕方の上手や下手、事の成り行きの成功と失敗を心配して、動揺してしまうものだ。しかし、ものごとの道理と正義に従い行動するということ自体には、上手も下手もなく、また失敗ということもない。このように行動する者は、ただひたすら、ものごとの道理と正義の道を楽しみ、また、このような道は、もとより困難にあうことが多いことも知っているので、いかなる困難にあったとしても、益々その道に進むことを楽しむことができ、ことの成否や自分の死生など、少しも気にすることはないのである。
 「二九 道を行ふ者は、固より困厄に逢ふものなれば、如何なる艱難の地に立つとも、事の成否身の死生抔に、少しも關係せぬもの也。事には上手下手有り、物には出來る人出來ざる人有るより、自然心を動す人も有れ共、人は道を行ふものゆゑ、道を蹈むには上手下手も無く、出來ざる人も無し。故に只管(ひたす)ら道を行ひ道を樂み、若し艱難に逢うて之を凌んとならば、彌々(いよ/\)道を行ひ道を樂む可し。予壯年より艱難と云ふ艱難に罹りしゆゑ、今はどんな事に出會ふ共、動搖は致すまじ、夫れだけは仕合せなり。」
(西郷隆盛(1828-1877)『遺訓』29(集録本『西郷南洲遺訓―附・手抄言志録及遺文』)pp.14-15、岩波文庫 (1939)、山田済斎(編))
(索引:道)
『遺訓』西郷隆盛(1828-1877)青空文庫

西郷南洲遺訓―附・手抄言志録及遺文 (岩波文庫)


(出典:wikipedia
西郷隆盛(1828-1877)(Collection of propositions of great philosophers)  「事大小と無く、正道を蹈み至誠を推し、一事の詐謀(さぼう)を用ふ可からず。人多くは事の指支(さしつか)ゆる時に臨み、作略(さりやく)を用て一旦其の指支を通せば、跡は時宜(じぎ)次第工夫の出來る樣に思へ共、作略の煩ひ屹度生じ、事必ず敗るゝものぞ。正道を以て之を行へば、目前には迂遠なる樣なれ共、先きに行けば成功は早きもの也。」
(西郷隆盛(1828-1877)『遺訓』7(集録本『西郷南洲遺訓―附・手抄言志録及遺文』)p.7、岩波文庫 (1939)、山田済斎(編))
『遺訓』西郷隆盛(1828-1877)青空文庫

西郷隆盛(1828-1877)
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次のことを、よく考えよ。〈天何の故にか我が身を生み出だし、我をして果して何の用にか供せしむる〉。自分の天職もわからず、ただうかうかと生きていているだけで良いのか。(佐藤一斎(1772-1859))

天職

【次のことを、よく考えよ。〈天何の故にか我が身を生み出だし、我をして果して何の用にか供せしむる〉。自分の天職もわからず、ただうかうかと生きていているだけで良いのか。(佐藤一斎(1772-1859))】
 「人間にはだれでも、次の事を反省し考察してみる必要がある。「天はなぜ自分をこの世に生み出し、何の用をさせようとするのか〈天何の故にか我が身を生み出だし、我をして果して何の用にか供せしむる〉。自分は天(神)の物であるから、必ず天職がある。この天職を果たさなければ、天罰を必ずうける」と。ここまで反省、考察してくると、自分はただうかうかとこの世に生きているだけではすまされないことがわかる。」
(佐藤一斎(1772-1859)『言志録』10(集録本『言志四録(1)言志録』)pp.35-36、講談社学術文庫(1979)、川上正光(訳注))
(索引:天、天職)

言志四録(1) 言志録 (講談社学術文庫)


(出典:wikipedia
佐藤一斎(1772-1859)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「天地間に起こる事がらは、昔から今まで、陰あり、陽あり、昼あり、夜あり、また太陽と月とが交互に世を照らし、四季が互いにめぐるなど、条理がすべて前から定まっている〈其の数皆な前に定れり〉。また人が富み栄えたり、貧乏したり、死んだり、生まれたり、長生きしたり、早死にしたり、もうけたり、損したり、栄誉をうけたり、はずかしめられたり、集まったり、ばらばらになったり、これらは皆、定まった運命でないものはない〈一定の数に非ざるは莫し〉。ただ、これを前もって知らないだけなのだ〈殊に未だ之れを前知せざるのみ〉。たとえば、あやつり人形の芝居のからくりはちゃんと具わっているのに、これを見る人が知らないようなものだ〈譬えば猶お傀儡の戯の機関已に具れども、而も観る者知らざるがごときなり〉。世間の人々はこのようなことを知らないで、自分の知恵力量は十分たのむに足りるものだとして、一生涯せっせと、きのうは東、今日は西と、栄誉・功名を探し求め、ついにやつれつかれて倒れてしまう。これはなんと、まどえるもはなはだしいといわざるを得ないのではないか。」
(佐藤一斎(1772-1859)『言志録』1(集録本『言志四録(1)言志録』)p.24、講談社学術文庫(1979)、川上正光(訳注))

佐藤一斎(1772-1859)
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2018年5月26日土曜日

すべての実体は、一つの全たき世界、神をうつす鏡、全宇宙をうつす鏡であり、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出している。また、実体は互いに表出することで、力を及ぼし合っている。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

一つの全たき世界、全宇宙をうつす鏡

【すべての実体は、一つの全たき世界、神をうつす鏡、全宇宙をうつす鏡であり、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出している。また、実体は互いに表出することで、力を及ぼし合っている。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
 すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出している。また、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、他のすべての実体に自分の力を及ぼしている。
 「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])
(索引:表出、一つの全たき世界、神をうつす鏡、全宇宙をうつす鏡)

前期哲学 (ライプニッツ著作集)


(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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全体体系において上位の学問や普遍学ないしは発見術をもとにして、当該学問の全体を再生できるような公理や経験則を基礎づけることで、全体系が整合する。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

諸学問の体系

【全体体系において上位の学問や普遍学ないしは発見術をもとにして、当該学問の全体を再生できるような公理や経験則を基礎づけることで、全体系が整合する。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
 ある学問は、その学問を生む機会と手段を与えた経験上の観察事項や精神の所見からなるごくわずかの命題に依存する。そのような命題は、仮にその学問が消失したとした場合に、再生させるのにはそれだけで十分足りるような命題である。また、その学問に十分専念しようと思った場合に、教師なしに学ぶためにはそれだけで足りるような命題である。そのような命題を、すでに知られているとされるある上位の学問の規則を結合しなければならない。その上位の学問とは、時には普遍学ないしは発見術であったり、時には他の学問であったりするところの、問題となっているその学問がその下位の部門であるような学問である。

上位の学問の規則
(普遍学ないしは発見術)
(他の学問)
   │
   ↓
経験上の観察事項や精神の所見からなるごくわずかの命題
(この命題を基礎にすれば、この学問全体を再生することができる命題)
(この命題を基礎にすれば、教師なしでも学ぶことができるような命題)

 「学問を発見する原理についていえば、重要なのは、おのおのの学問は普通、学問を生む機会と手段を与えた経験上の観察事項や精神の所見からなるごくわずかの命題に依存するということである。そのような命題とは、仮にその学問が消失したとした場合に、再生させるのにはそれだけで十分足りるような命題である。それはまた、その学問に十分専念しようと思った場合に、教師なしに学ぶためにはそれだけで足りるような命題である。ただし、そうするには普通は、そのような命題に、すでに知られているとされるある上位の学問の規則を結合しなければならない。その上位の学問とは、時には普遍学ないしは発見術であったり、時には他の学問であったりするところの、問題となっているその学問がその下位の部門であるような学問である。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『諸学問を進展させるための格率』、ライプニッツ著作集10、p.255、[小林道夫・1991])
(索引:諸学問の体系)

中国学・地質学・普遍学 (ライプニッツ著作集)



(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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命題から虚飾をはぎとり、相互依存の順序と主題の順序に従って配列する幾何学者の方法は、無秩序に増大する情報の増大に対処し、また各命題の発見者の名声を忘却から救う。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

幾何学者の方法

【命題から虚飾をはぎとり、相互依存の順序と主題の順序に従って配列する幾何学者の方法は、無秩序に増大する情報の増大に対処し、また各命題の発見者の名声を忘却から救う。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
 多くの発見、重要な考察、真理の探究のための熱意に事欠かない卓越した精神が、どれだけ多く存在するかを思うとき、われわれはもっと多くのことをなしうる状態にあり、学問に関する人類の状況は、わずかの間に様相を一変しうると思う。その一方、対立、敵意、構築するよりは破壊、協力よりは仲間を差し押さえ、論争、うわべだけのお話、無駄な好奇心の浪費などを考えると、自分たちの過ちのせいで、混乱と欠乏の状態に陥るのではないかと危惧する。
 さらに、たえず増えていく恐ろしいばかりのこの本の数、そして無秩序はほとんど乗り越えがたいものとなり、著者たちはすべて全き忘却にさらされかねない。古代の幾何学者のなかには、われわれがその作品を手にできない人々がいる。しかし、彼らの名声は、彼らのものとされるいくつかの命題によって保持されてきた。先に示した、普遍的学問と幾何学者の方法によって、各命題の発見者の名声を讃えながら、秩序と調和をもった知恵の体系を維持していくことが可能となる。
 「私は、われわれがどれだけ多くの発見を行なってきたか、どれだけ多くの堅固で重要な考察をもたらしてきたか、どれだけ多くの、真理の探究のための熱意に事欠かない卓越した精神が存在することか、ということに思いをこらすとき、われわれはもっと多くのことをなしうる状態にあり、学問に関する人類の状況はわずかの間に様相を一変しうると思う。しかし、他方で、人々の計画はほとんど一致せず、人々が取る方途は対立しており、一方の人々は他方の人々に敵意をむきだしにして、構築することよりは破壊することを考え、一緒に進むことよりは自分の仲間を差し押さえることを考えているのを見ると、そして最後には、実践は理論があたえる光をまったく活用せず、人々は論争の数を減らそうとはまったくせずむしろ増やそうと努めており、真面目で決定的な方法の変わりに、うわべだけのお話に満足しているということを考えるとき、私は、われわれが自分たちの過ちのせいで陥っている混乱と欠乏の状態に長くとどまろうとしているのではないかと恐れるのである。私はさらに、人々は、われわれの探究からわれわれの幸福のために重要な何らかの益を引き出すこともなしに好奇心を無駄に使い果たしたことから、学問に嫌気がさしているのではないか、また、決定的な絶望感から人間は再び野蛮状態に戻るのではないかとさえ危惧する。
 この怖れに、たえず増えていく恐ろしいばかりのこの本の数がおおいに加担しうるであろう。というのも、最後には本の無秩序はほとんど乗り越えがたいものとなり、わずかの間に著者の数が無数にものぼるために、著者たちはすべて全き忘却にさらされかねず、多くの人々を学問研究の仕事へと駆り立てる栄光に対する期待も一挙に止むであろう。」(中略)「古代の幾何学者のなかには、ニコメデスやディノストラトスのように、われわれがその作品を手にできない人々がいる。しかし、彼らの名声は、彼らのものとされるいくつかの命題によって保持されてきたのである。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『諸学問を進展させるための格率』、ライプニッツ著作集10、pp.242-244、[小林道夫・1991])
(索引:幾何学者の方法)

中国学・地質学・普遍学 (ライプニッツ著作集)



(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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およそ説くことの難しさは、説得しようとする相手の心を読みとって、こちらの説をそれに合わせることができるかというところにある。さて、内心では大きな利益を求めつつ表向きは高い名誉を求める相手には、どのように説得すれば良いか。(韓非(B.C.280頃-B.C.233))

説得の難しさ

【およそ説くことの難しさは、説得しようとする相手の心を読みとって、こちらの説をそれに合わせることができるかというところにある。さて、内心では大きな利益を求めつつ表向きは高い名誉を求める相手には、どのように説得すれば良いか。(韓非(B.C.280頃-B.C.233))】
 およそ説くことの難しさは、説得しようとする相手の心を読みとって、こちらの説をそれに合わせることができるかというところにある。
(1) 説得しようとする相手が高い名誉を求める心でいたとしよう。
 その相手に大きな利益を得る話をしたなら、相手はこちらのことを下品なやつで自分を俗物扱いにしていると考え、きっと見すてて遠ざけることであろう。
(2) 説得しようとする相手が大きな利益を求める心でいたとしよう。
 その相手に高い名誉を得る話をしたなら、相手はこちらのことを考えが足りなくて現実に疎いと見なし、きっと採用しないであろう。
(3) 説得しようとする相手が、内心では大きな利益を求めながら、表向きは高い名誉を求めるふりをしているとしよう。
 (3.1) その相手に高い名誉を得る話をしたなら、相手はうわべではこちらを受け容れながら、実際は遠ざけるだろう。
 (3.2) もし相手に大きな利益を得る話をしたなら、相手は陰ではこっそりこちらの話を採用しながら、表向きはこちらの身を見すてるだろう。
 「およそ説くことの難しさは、説得しようとする相手の心を読みとって、こちらの説をそれに合わせることができるかというところにある。説得しようとする相手が高い名誉を求める心でいたとしよう。それなのに、その相手に大きな利益を得る話をしたなら、〔相手はこちらのことを〕下品なやつで自分を俗物扱いにしていると考え、きっと見すてて遠ざけることであろう。〔反対に〕説得しようとする相手が大きな利益を求める心でいたとしよう。それなのに、その相手に高い名誉を得る話をしたなら、〔相手はこちらのことを〕考えが足りなくて現実に疎いと見なし、きっと採用しないであろう。説得しようとする相手が、内心では大きな利益を求めながら、表向きは高い名誉を求めるふりをしているとしよう。それなのに、その相手に高い名誉を得る話をしたなら、〔相手は〕うわべではこちらを受け容れながら、実際は遠ざけるだろう。もし相手に大きな利益を得る話をしたなら、〔相手は〕陰ではこっそりこちらの話を採用しながら、表向きはこちらの身を見すてるだろう。これはよくよく考えなければならないことである。」
(韓非(B.C.280頃-B.C.233)『韓非子』説難 第十二、(第1冊)pp.230-231、岩波文庫(1994)、金谷治(訳))
(索引:説得の難しさ)
(原文:12.説難韓非子法家先秦兩漢中國哲學書電子化計劃

韓非子 (第1冊) (岩波文庫)



(出典:twwiki
韓非(B.C.280頃-B.C.233)の命題集(Collection of propositions of great philosophers) 「国を安泰にする方策として七つのことがあり、国を危険にするやり方として六つのことがある。
安泰にする方策。第一は、賞罰は必ず事の是非に従って行うこと、第二は、禍福は必ず事の善悪に従ってくだすこと、第三は、殺すも生かすも法のきまりどおりに行うこと、第四は、優秀か否かの判別はするが、愛憎による差別はしないこと、第五は、愚か者と知恵者との判別はするが、謗ったり誉めたりはしないこと、第六は、客観的な規準で事を考え、かってな推量はしないこと、第七は、信義が行われて、だましあいのないこと、以上である。
 危険にするやり方。第一は、規則があるのにそのなかでかってな裁量をすること、第二は、法規をはみ出してその外でかってな裁断をくだすこと、第三は、人が受けた損害を自分の利益とすること、第四は、人が受けた禍いを自分の楽しみとすること、第五は、人が安楽にしているのを怯かして危うくすること、第六は、愛すべき者に親しまず、憎むべき者を遠ざけないこと、以上である。こんなことをしていると、人々には人生の楽しさがわからなくなり、死ぬことがなぜいやなのかもわからなくなってしまう。人々が人生を楽しいと思わなくなれば、君主は尊重されないし、死ぬことをいやがらなくなれば、お上の命令は行われない。」
(韓非(B.C.280頃-B.C.233)『韓非子』安危 第二十五、(第2冊)pp.184-185、岩波文庫(1994)、金谷治(訳))
(原文:25.安危韓非子法家先秦兩漢中國哲學書電子化計劃

韓非(B.C.280頃-B.C.233)
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4.他人を不愉快にさせるに違いないようなことは、決して口にしないこと。なぜなら、それは君自身にはかり知れぬ害をもたらすからである。(フランチェスコ・グィッチャルディーニ(1483-1540))

他人の悪口

【他人を不愉快にさせるに違いないようなことは、決して口にしないこと。なぜなら、それは君自身にはかり知れぬ害をもたらすからである。(フランチェスコ・グィッチャルディーニ(1483-1540))】
 「君が口を開くとき、必要でもないかぎり、他人を不愉快にさせるにちがいないようなことは決して口にせぬように注意をはらわなければならない。というのは、時と場所とをわきまえずにそのような発言をすれば、それは君自身にはかり知れぬ害をもたらすからである。この点については、じゅうぶん気をつけるように、と言っておく。というのも、用心ぶかい人間でも、このことではずいぶん失敗するものだからである。また、これを避けるのは至難のわざである。けれども、それがどれほどむずかしいことであっても、それを乗りこえる方法を知っている人にとっては、それだけ大きな報いがあるというものである。」
(フランチェスコ・グィッチャルディーニ(1483-1540)『リコルディ』(日本語名『フィレンツェ名門貴族の処世術』)C、7 発言に注意、p.52、講談社学術文庫(1998)、永井三明(訳))
(索引:他人の悪口)

フィレンツェ名門貴族の処世術―リコルディ (講談社学術文庫)



フランチェスコ・グィッチャルディーニ(1483-1540)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)
(出典:wikipedia
 「この書物の各断章を考えつくのはたやすいことではないけれども、それを実行に移すのはいっそうむずかしい。それというのも、人間は自分の知っていることにもとづいて行動をおこすことはきわめて少ないからである。したがって君がこの書物を利用しようと思えば、心にいいきかせてそれを良い習慣にそだてあげなければならない。こうすることによって、君はこの書物を利用できるようになるばかりでなく、理性が命ずることをなんの抵抗もなしに実行できるようになるだろう。」
(フランチェスコ・グィッチャルディーニ(1483-1540)『リコルディ』(日本語名『フィレンツェ名門貴族の処世術』)B、100 本書の利用のし方、p.227、講談社学術文庫(1998)、永井三明(訳))

フランチェスコ・グィッチャルディーニ(1483-1540)
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情報の信憑性の確認:(a)提供者の利害関係、(b)入手経路、(c)別の筋の情報、(d)裏づけ事実。入手先候補者:(a)当事者、(b)不平家、感情家、(c)大臣の談話、身振り表情、(d)見栄で話す人、(e)口の軽い人。(フランソワ・ド・カリエール(1645-1717))

情報の信憑性、情報の入手先

【情報の信憑性の確認:(a)提供者の利害関係、(b)入手経路、(c)別の筋の情報、(d)裏づけ事実。入手先候補者:(a)当事者、(b)不平家、感情家、(c)大臣の談話、身振り表情、(d)見栄で話す人、(e)口の軽い人。(フランソワ・ド・カリエール(1645-1717))】
   情報の信憑性の確認方法は、
(a)情報を提供した人たちの利害関係と情熱
(b)情報の対象になっている企みごとを、彼らがどうやって発見できたのか
(c)別の筋から知っていることと一致するか
(d)その情報を本当らしく思わせるような動きや準備が何かされているか
その他、問題の情報をめぐるすべての事情

 情報収集の相手方の候補者は、
(a)交渉家の誘惑にのるような直接の当事者
(b)憤懣を晴らすために時折は重大な事柄を洩らす不平家や感情家
(c)最も有能で忠実な大臣たちの不用意にした談話や身振り表情
(d)自分の洞察力を人に誉められたいために、喜んでとかく人に話してしまう連中
(e)しばしば言うべきでないことまでしゃべる口の軽い人間
 「有能な交渉家は、彼が受け取る情報を、すべてそのまま軽々に信じはしない。その前に、問題の情報をめぐるすべての事情や、情報を提供した人たちの利害関係と情熱や、情報の対象になっている企みごとを、彼らがどうやって発見できたのか、その情報は彼が同じ事柄の様子について別の筋から知っていることと一致するか、その情報を本当らしく思わせるような動きや準備が何かされているか、を検討する。」(中略)
 「交渉家は、任国の秘密を、国事にたずさわっている人々、または、その連中の打ち明け話しをきいている人々から探り出すことができる。交渉家の誘惑にのるような直接の当事者、しばしばいうべきでないことまでしゃべる口の軽い人間、憤懣を晴らすために時折は重大な事柄を洩らす不平家や感情家が、ほとんど必ずといってよいほどに、何人かは存在するものである。
 最も有能で忠実な大臣たちでさえも、常に身構えて用心しているとは限らない。君主と国家に対して一所懸命な大臣でも、不用意にした談話や身振り表情から、いちばん秘密にしていた利害の結びつきや色恋の関係までも、人に見破られた例がいくつかある。
 顧問会議のメンバーでない廷臣でも、その宮廷の政務を長年見聞してきた経験にものをいわせて、顧問会議で決定したことをかぎつけ、自分の洞察力を人に誉められたいために、喜んでとかく人に話してしまう連中がいる。」
(フランソワ・ド・カリエール(1645-1717)『外交談判法』第8章 交渉家の職務について、pp.62-64、岩波文庫(1978)、坂野正高(訳))
(索引:情報の信憑性、情報の入手先)

外交談判法 (岩波文庫 白 19-1)



(出典:wikipedia
フランソワ・ド・カリエール(1645-1717)の命題集(Collection of propositions of great philosophers) 「こうしたいろいろな交渉の仕方のいずれの場合にも、彼は、とりわけ、公明正大で礼儀にかなったやり方で成功を収めるようにするべきである。もし、細かい駆け引きを用い、相手よりもすぐれているつもりのおのれの才智にたよって、成功しようなどと思うならば、それはまず思い違いというものである。みずからの本当の利益を知る能力をそなえた顧問会議をもたないような君主や国家はない。いちばん粗野なようにみえる国民こそが、実は、自分の利益を最もよく理解して、ひとよりも一層粘り強くこれを追求する国民であることがしばしばある。であるから、どんなに有能な交渉家でも、そうした国民を、この点で欺こうなどと思ってはいけない。むしろ、彼が役目柄提案している事柄の中には、彼らにとって本当に有利な点がいろいろあることを分かってもらえるように、おのが知識と知力の限りを尽くして努力すべきである。人と人の間の友情とは、各人が自分の利益を追求する取引にほかならない、と昔のある哲人が言ったが、主権者相互の間に結ばれる関係や条約については、なおさら同じことが言える。相互的な利益を基礎においていない関係や条約は、存在しない。各主権者が相互に利益を見出さない場合には、条約は効力をほとんど持ち続けないで、自壊する。従って、交渉のいちばんの秘訣はかかる共通の諸利益を共存させ、できれば変わらぬ足どりで、前進させるための方法を見つけることである。」
(フランソワ・ド・カリエール(1645-1717)『外交談判法』第8章 交渉家の職務について、pp.58-59、岩波文庫(1978)、坂野正高(訳))


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2018年5月25日金曜日

命題から虚飾をはぎとり、それらを、幾何学者が行なうように、明白で簡潔なしかたで表わす。ついで、それらを、相互依存の順序と主題の順序に従って配列する。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

幾何学者の方法

【命題から虚飾をはぎとり、それらを、幾何学者が行なうように、明白で簡潔なしかたで表わす。ついで、それらを、相互依存の順序と主題の順序に従って配列する。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
 命題から虚飾をはぎとり、それらを、幾何学者が行なうように、明白で簡潔なしかたで表わす。ついで、それらを、相互依存の順序と主題の順序に従って配列する。すなわち、われわれは党派的精神を離れ、目新しさに対する熱意を捨てなければならない。そこで幾何学者たちを真似なければならない。
 「この混乱から抜け出すためには、われわれは党派的精神を離れ、目新しさに対する熱意を捨てなければならない。そこで幾何学者たちを真似なければならない。彼らにあっては、ユークリッドもアルキメデスもいないが、誰もがユークリッドに従い、誰もがアルキメデスに従う。」(中略)「そこで、そういう命題から虚飾をはぎとり、それらを、幾何学者が行なうように、明白で簡潔なしかたで表わしさえすればよい。ついで、それらを、相互依存の順序と主題の順序に従って配列しさえすればよい。そうすると、飛躍しないようにしさえすれば、それらの命題の結合関係はすぐにもひとりでに現われ、一つの命題がもう一つの命題から証明されることになる。そして、無意識のうちに人間がすでに獲得したすべての知識の構成要素を形成することになるであろう。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『諸学問を進展させるための格率』、ライプニッツ著作集10、pp.239-240、[小林道夫・1991])
(索引:幾何学者の方法)

中国学・地質学・普遍学 (ライプニッツ著作集)



(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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