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2018年1月14日日曜日

9.無限とは、わたしたちがまだ理解し得ていないもの、数え得ていないものに対して、暫定的に与えられた属性にすぎないように思われる。光速度 c、プランク定数 h、プランク長Lp、そして果てはないが有限な大きさを持つ宇宙。(カルロ・ロヴェッリ(1956-))

無限とは何か?

【無限とは、わたしたちがまだ理解し得ていないもの、数え得ていないものに対して、暫定的に与えられた属性にすぎないように思われる。光速度 c、プランク定数 h、プランク長Lp、そして果てはないが有限な大きさを持つ宇宙。(カルロ・ロヴェッリ(1956-))】
 「無限」とは何か? 無限とは、わたしたちがまだ理解し得ていないもの、数え得ていないものに対して、わたしたちが与えた名前にすぎない。自然界に存在すると思われていたさまざまな「無限」に、限界があることが分かってきた。自然について多くを学べば学ぶほど、自然はわたしたちに、本当に無限なものなど存在しないと語りかけてくるようである。クオーク、陽子、原子、さまざまな構造をもつ化学物質、山、星、太陽、銀河、銀河の一群、宇宙そのもの。これらは複雑でとてつもなく巨大ではある、しかし「有限」である。例をあげる。
 最大の速さ、光速度 c :特殊相対性理論は「あらゆる物理的な系が共有する最大速度」を発見した。
 プランク定数 h :量子力学は「あらゆる物理的な系が共有する情報の最小単位」を発見した。
 最小の長さ プランク長Lp :量子重力理論は、これよりも小さい長さ(空間)が存在しないことを予測する。
 また、宇宙空間は、一般相対性理論により「果てはないが有限」であることが分かった。現在の計測によれば、宇宙の全長は千億光年を超えるとのことである。これは、プランク長のおよそ1060倍に相当する。
 参考: 検索(光速度)検索(プランク定数)検索(プランク長)検索(宇宙の大きさ)

 「無限に限界を設定することは、現代物理学に繰り返し登場するテーマである。

特殊相対性理論の内容を一言に圧縮するなら、「あらゆる物理的な系が共有する最大速度(つまり光速)の発見」ということになる。

同じように、量子力学は、「あらゆる物理的な系が共有する情報の最小単位の発見」と要約できる(情報は次章のテーマである)。

最小の長さはプランク長Lpであり、最大の速さは光速cであり、情報の最小単位はプランク定数hによって規定される。」
(中略)

「三つの定数をもとに自然を描写することは、たんなる形式上の変化に留まらない深遠な意味をもっている。

これら三つの定数が特定されることによって、それまで自然界に存在すると思われていたさまざまな「無限」に、限界が設定されたからである。

無限であるように見えるものは、実際には、わたしたちがまだ理解していなかった(または数えられていなかった)ものでしかないことを、これらの定数は繰り返し示してきた。

わたしが思うに、これは普遍的な真実である。「無限」とは、つまるところ、未知の事物にわたしたちが与えた名前にすぎない。自然について多くを学べば学ぶほど、自然はわたしたちに、本当に無限なものなど存在しないと語りかけてくるようである。

 もうひとつ、人間の思索をつねに惑乱させてきた「無限」がある。それは、宇宙空間の無限の広がりである。

しかし、第3章で解説したとおり、アインシュタインの理論のおかげで、「果てはないが有限な宇宙」について考えるための方法が明らかになった。

現在の計測によれば、宇宙の全長は千億光年を超えるとのことである。これが、わたしたちの住まう宇宙に存在する最大の長さである。これは、プランク長のおよそ1060倍に相当する。1060とは、1のあとに0が六十個つづく数値である。

プランクのスケールと宇宙のスケールのあいだには、数字にして六十桁もの莫大な開きがある。大変な違いである。それでも、プランク長と宇宙の大きさを比較するのに、「無限」をもち出す必要はない。

 クオークも、陽子も、原子も、さまざまな構造をもつ化学物質も、山も、星も、太陽のような天体が千億個も集まってできる銀河も、銀河の一群も……いまだにわたしたちはその一側面しか理解できていない、目もくらむほどに複雑な宇宙全体が、この大きさのなかに収まっている。

宇宙は巨大であり、しかし同時に、有限である。」
(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第11章 無限の終わり、pp.229-231、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))