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2018年4月21日土曜日

機会から大きな利益を得る取引を引き出す情報の重要性:秘匿情報はその存在さえも悟られてはならない、目論見に反しない情報提供で相手の信頼を獲得する、話したい欲望や見栄による発言を自制する、腹を立て自説を根拠づけようと発言するなど危険きわまりない。(フランソワ・ド・カリエール(1645-1717))

交渉における情報の重要性

【機会から大きな利益を得る取引を引き出す情報の重要性:秘匿情報はその存在さえも悟られてはならない、目論見に反しない情報提供で相手の信頼を獲得する、話したい欲望や見栄による発言を自制する、腹を立て自説を根拠づけようと発言するなど危険きわまりない。(フランソワ・ド・カリエール(1645-1717))】
 交渉において、訪れる機会を一層上手に利用し、取引からいちばん大きな利益を得るのに最も重要なのは、相手よりも限界が広い情報である。交渉家相互の間では、情報の交換が行われ、情報を貰いたければ、与えざるをえない。このような状況で大切なことは、以下のことである。
 (1) 洩らして然るべき時機までは、秘密を見抜かれるようなことをしない。そればかりではなく、何かを隠しているということを、交渉相手に悟られてはならない。
 (2) 秘密を守ってくれる相手だという信頼をおいていることを示し、その確かな証拠として、こちらの目論見に反しない程度の事柄を、交渉相手に打ち明けるべきである。そうすると、向こうもこちらを信頼している証拠として、いろいろなことを、しばしば、こちらが洩らしたことよりもっと重要な事柄を、お返しに教えようという気持ちになるものである。
 (3) しゃべりたくてむずむずしても、その欲望に抵抗できるような自制心を持つ。相手の提案に対して、即座に、よく考えもしないで、返答をしようと見栄を張らないことである。
 (4) ましてや、相手の反駁に対して腹を立て、自説を根拠づけようとして、大切な秘密を話してしまうなどの失敗は、もってのほかである。
「立派な交渉家にとって、就中、必要なことは、何をいうべきかをよく自分で検討してみない中は、しゃべりたくてむずむずしても、その欲望に抵抗できるような自制心を持つことである。相手の提案に対して、即座に、よく考えもしないで、返答をしようと見栄を張らないことである。現代のあるよその国の有名な大使は、議論の最中に腹を立てやすい人で、相手が反駁して彼を怒らせると、自説を根拠づけようとして、しばしば大切な秘密をしゃべってしまったが、この大使のような過ちを犯さないように気をつけることである。」(中略)
「腕利きの交渉家は、洩らして然るべき時機までは、秘密を見抜かれるようなことをしない。そればかりではない。何か隠しているということを、交渉相手に悟られてはならない。秘密を守ってくれる相手だという信頼をおいていることを示し、その確かな証拠として、こちらのもくろみに反しない程度の事柄を、打ち明けるべきである。そうすると、向こうもこちらを信頼している証拠として、いろいろなことを、しばしば、こちらが洩らしたことよりもっと重要な事柄を、お返しに教えようという気持ちになるものである。交渉家相互の間では、情報の交換が行われる。情報を貰いたければ、与えざるをえない。この取引からいちばん大きな利益を得るのは、相手よりも限界が広いので、訪れる機会を一層上手に利用できる人である。この人こそ、最も敏腕な交渉家である。」
(フランソワ・ド・カリエール(1645-1717)『外交談判法』第3章 交渉家の資質と行状について、pp.21-22、岩波文庫(1978)、坂野正高(訳))
(索引:交渉における情報の重要性)

外交談判法 (岩波文庫 白 19-1)




(出典:wikipedia
「こうしたいろいろな交渉の仕方のいずれの場合にも、彼は、とりわけ、公明正大で礼儀にかなったやり方で成功を収めるようにするべきである。もし、細かい駆け引きを用い、相手よりもすぐれているつもりのおのれの才智にたよって、成功しようなどと思うならば、それはまず思い違いというものである。みずからの本当の利益を知る能力をそなえた顧問会議をもたないような君主や国家はない。いちばん粗野なようにみえる国民こそが、実は、自分の利益を最もよく理解して、ひとよりも一層粘り強くこれを追求する国民であることがしばしばある。であるから、どんなに有能な交渉家でも、そうした国民を、この点で欺こうなどと思ってはいけない。むしろ、彼が役目柄提案している事柄の中には、彼らにとって本当に有利な点がいろいろあることを分かってもらえるように、おのが知識と知力の限りを尽くして努力すべきである。人と人の間の友情とは、各人が自分の利益を追求する取引にほかならない、と昔のある哲人が言ったが、主権者相互の間に結ばれる関係や条約については、なおさら同じことが言える。相互的な利益を基礎においていない関係や条約は、存在しない。各主権者が相互に利益を見出さない場合には、条約は効力をほとんど持ち続けないで、自壊する。従って、交渉のいちばんの秘訣はかかる共通の諸利益を共存させ、できれば変わらぬ足どりで、前進させるための方法を見つけることである。」
(フランソワ・ド・カリエール(1645-1717)『外交談判法』第8章 交渉家の職務について、pp.58-59、岩波文庫(1978)、坂野正高(訳))

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