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2018年6月25日月曜日

人間の自由意志は、人間がなす驚異の原因であり、また同時に、誤りと無秩序の原因でもある。しかしこの無秩序も、この全宇宙の原理とその秩序に従っている。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

自由意志とミクロコスモス

【人間の自由意志は、人間がなす驚異の原因であり、また同時に、誤りと無秩序の原因でもある。しかしこの無秩序も、この全宇宙の原理とその秩序に従っている。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】

(再掲)
(1) 真の完全なモナド(一般的な至高の原因)は、無数の存在者の集まりである。
(2) 各存在者は、一つの全たき世界、神をうつす鏡、全宇宙をうつす鏡であり、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出している。
(3) 表出は、以下の二つのものからなる。
 (3.1) その各々の存在者を真の「一」にさせる能動的原理、非物質的なもの、魂。
 (3.2) 受動的で有機的身体、物質的なもの。
(4) それら個々の魂が表出するものはすべて、ただ自己の本性から引き出されるものであり、他の個々の存在者から直接には影響されない。
(5) 個々の存在者が独立しているにもかかわらず、自然のうちに認められる秩序、調和、美がもたらされるのは、各々の魂が、その本性を、一般的な至高の原因から受け取り、それに依存しているからに他ならない。これが、予定調和である。
(6) 個々の存在者の表出が、その存在者の物質的な身体と自発的に一致する理由も、この予定調和による。

上記(2)~(5)の追加説明。
 人間はそれ自身の固有の世界における小さき神のごときものであり、それぞれが自分なりの仕方で支配しているミクロコスモスである。
(a) 人間は、「存在と力と生命と理性」を与えられている。
(b) 人間は、その小さな管轄内でなすがままにさせておかれる。
(c)「人間に関わるものにおいて見られる無秩序」の理由は、(b)である。
 例えば、ときどき驚異をなし、その技巧はしばしば自然を模倣し、また大きな誤りも犯す。「神はこの小さな神々と(いわば)戯れ、これらを産み出して良かったと思っている。これはちょうど、子供と遊びながら内心でこうさせたいとかこうさせたくないと思っている通りに子供が夢中に取り組んでくれているというようなものである。」
(d) 小さき世界の悪、欠陥、一見歪んでいるものは、より大きな世界から見ると、「大なる世界の美の中に再統合され、無限に完全な宇宙の原理の統一性に何ら背馳することはない。むしろ反対に、悪をより大なる善に役立たせる神の知恵に対して一層大きな賛嘆をもたらすことになる。」

 「ここにまた、人間に関わるものにおいて見られる無秩序の特別の理由がある。つまり、神は、人間に叡智を与えることによって神の似姿を現前させたのである。神は人間を、その小さな管轄内で〈手中に収めたスパルタを飾り立てるために〉なすがままにさせておく。神は隠れた仕方でのみそこに入り込んでいく。なぜなら神は存在と力と生命と理性を与えながら自らを見せることはないからである。ここにおいてこそ、自由意志(franc arbitre)が働くのである。神はこの小さな神々と(いわば)戯れ、これらを産み出して良かったと思っている。これはちょうど、子供と遊びながら内心でこうさせたいとかこうさせたくないと思っている通りに子供が夢中に取り組んでくれているというようなものである。それゆえ人間はそれ自身の固有の世界における小さき神のごときものであり、それぞれが自分なりの仕方で支配しているミクロコスモスである。人間はときどき驚異をなす。その技巧はしばしば自然を模倣する。」(中略)「しかし人間は大きな誤りも犯している。なぜなら、人間は感情の赴くままになっているし、神も人間を感覚の虜にさせてしまっているからである。神はそのことで人間を罰しもする。それは、子供を鍛え懲らしめる父親や教師のようなときもあれば、自分を忌避する者に罰を加える正当な裁判官のようなときもある。悪が最も数多く生ずるのは、こうした叡智的な者やその小さき世界が互いに衝突するときである。人間は、間違いをするに応じて自らが悪なる者だと感ずる。しかし神はこれらの小さき世界の欠陥のすべてを驚くべき仕方で神の大世界の最大の装飾に転じてしまう。これはいわば歪画法の発明である。歪画法においては、いくら美しい構図でも、それが正しい視点に関連づけられ、一定のガラス板や鏡によって見るのでないならば、混乱でしかない。それが部屋の飾りになるのは、然るべきところに置かれ然るべく取り扱われたときだけである。こうして、われわれの小さき世界においては一見歪んでいるものも、それは、大なる世界の美の中に再統合され、無限に完全な宇宙の原理の統一性に何ら背馳することはない。むしろ反対に、悪をより大なる善に役立たせる神の知恵に対して一層大きな賛嘆をもたらすことになる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『弁神論』本論[第二部]一四七、ライプニッツ著作集6、pp.252-254、[佐々木能章・1990])
(索引:自由意志、ミクロコスモス)

ライプニッツ著作集 (6) 宗教哲学『弁神論』 上


(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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