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2018年8月9日木曜日

側頭葉のV4野は、色の処理に特化しており、損なわれると、世界全体から色が消えてしまう。視覚野のうち、MT野とV4野以外の大部分の領域は、その機能があまり明瞭にあらわれてこない。(ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-))

色覚中枢のV4野

【側頭葉のV4野は、色の処理に特化しており、損なわれると、世界全体から色が消えてしまう。視覚野のうち、MT野とV4野以外の大部分の領域は、その機能があまり明瞭にあらわれてこない。(ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-))】
(再掲) 視覚は、多数の視覚野で実現されており、各視覚野はそれぞれ視覚の異なる諸面に特化しているらしい。一例として、側頭葉のMT野は、運動視に関与しており、MT野が損なわれると運動盲が発生する。  他の例として、側頭葉のV4野は、色の処理に特化しており、損なわれると、世界全体から色が消えてしまう。
 ほかの大部分の視覚野は、損傷を受けた場合にも、画像や電気刺激などを用いた研究でも、その機能があまり明瞭にあらわれてこない。理由としては、
(a)それらの領野が、それほど狭く特化していないためかもしれない。
(b)その機能が、ほかの領域で容易に補われるためかもしれない。
(c)一つの機能を構成する要素について、まだ私たちの定義が未だ曖昧だからなのかもしれない。

 「同様に、側頭葉にあるV4と呼ばれる領野は、色の処理に特化していると思われる。この領野が両側とも損傷されると、世界全体から色が消えて白黒映画のようになってしまうが、そのほかの視覚機能はまったくそこなわれないらしく、動きの知覚、顔の認知、文字を読むことなどには、なんの問題もみられない。そしてMT野の場合と同じように、単一ニューロンの研究や脳機能画像や直接的な電極刺激など、多方面から、V4野が「色覚中枢」であることを示す所見が得られる。
 残念ながらMT野やV4野とはちがって、霊長類のほかの大部分の視覚野は、損傷を受けた場合にも、画像や電気刺激などを用いた研究でも、その機能があまり明瞭にあらわれてこない。これは、それらの領野がそれほど狭く特化していないためかもしれないし、その機能が(障害物を回避して流れる水のように)ほかの領域で容易におぎなわれるためかもしれない。あるいは、一つの機能を構成する要素についての私たちの定義があいまいだからなのかもしれない(コンピュータ科学者の言う「不良設定」問題なのかもしれない)。」
(ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-),『物語を語る脳』,第2章 見ることと知ること,(日本語名『脳のなかの天使』),角川書店(2013),p.96,山下篤子(訳))
(索引:色覚中枢,V4野)

脳のなかの天使



(出典:wikipedia
ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「バナナに手をのばすことならどんな類人猿にもできるが、星に手をのばすことができるのは人間だけだ。類人猿は森のなかで生き、競いあい、繁殖し、死ぬ――それで終わりだ。人間は文字を書き、研究し、創造し、探究する。遺伝子を接合し、原子を分裂させ、ロケットを打ち上げる。空を仰いでビッグバンの中心を見つめ、円周率の数字を深く掘り下げる。なかでも並はずれているのは、おそらく、その目を内側に向けて、ほかに類のない驚異的なみずからの脳のパズルをつなぎあわせ、その謎を解明しようとすることだ。まったく頭がくらくらする。いったいどうして、手のひらにのるくらいの大きさしかない、重さ3ポンドのゼリーのような物体が、天使を想像し、無限の意味を熟考し、宇宙におけるみずからの位置を問うことまでできるのだろうか? とりわけ畏怖の念を誘うのは、その脳がどれもみな(あなたの脳もふくめて)、何十億年も前にはるか遠くにあった無数の星の中心部でつくりだされた原子からできているという事実だ。何光年という距離を何十億年も漂ったそれらの粒子が、重力と偶然によっていまここに集まり、複雑な集合体――あなたの脳――を形成している。その脳は、それを誕生させた星々について思いを巡らせることができるだけでなく、みずからが考える能力について考え、不思議さに驚嘆する自らの能力に驚嘆することもできる。人間の登場とともに、宇宙はにわかに、それ自身を意識するようになったと言われている。これはまさに最大の謎である。」
(ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-),『物語を語る脳』,はじめに――ただの類人猿ではない,(日本語名『脳のなかの天使』),角川書店(2013),pp.23-23,山下篤子(訳))

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