信号の無意識の検出
【信号の無意識の検出を示す例:例えばアスリートたちの、感覚信号に対する迅速な運動反応は、信号への気づきの前に起こる。感覚信号を、後続する刺激でマスキングした場合にも、反応時間が同じ可能性がある。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】信号の無意識の検出を示す例
(1)感覚信号に対する迅速な運動反応は、信号の100~200ms後に起こり、信号への気づきはその後に続く。
(1.1)偉大なアスリートたちは概して、意識的な心に妨げられることなく、彼らの無意識の心に主導権を委ねている。
(1.2)「芸術・科学・数学といったすべての創造的なプロセスにもこれがあてはまる」。
(2)反応時間を測定している最初の信号に引き続き、遅延したマスキング刺激を与えることで、最初の信号への気づきをマスキングする。この場合でも、「与えられた信号への反応時間は同じである可能性があることが示されて」いる。
「(4) 感覚信号に対する迅速な行動、すなわち運動反応は、すべて無意識に行なわれています。これらは、信号の100~200ミリ秒後から、信号へのアウェアネスが生じるよりはかなり前までの間に起こり得る反応です。スポーツの中でも多くの活動がこのカテゴリにあてはまります。プロのテニス選手は、時速100マイル(約160キロ)の軌跡の曲がったサーブに反応しなければなりません。こうしたプロの選手たちは、対戦相手のサーブの動きのパターンを自覚していると報告しています。しかし、サービスリターンを打ったときのボールの位置については、彼らは即座には自覚していません。」(中略)「偉大なアスリートたちは概して、意識的な心に妨げられることなく、彼らの無意識の心に主導権を委ねることができる、と付け加えてもよいでしょう。迅速な反応について「考える」(自覚する)ようにすると、あまりうまくいかなくなるとアスリートたちは言います。実のところ、芸術・科学・数学といったすべての創造的なプロセスにもこれがあてはまるというふうに一般化したいと私は考えます。
信号への迅速な反応は、反応時間(RT)の研究によって定量的に測定できます。RT研究において実際の反応は無意識に行なわれ、信号へのアウェアネスはその後に続くと推測されています。実際、信号へのアウェアネスが完全に消されている場合でも、与えられた信号への反応時間は同じである可能性があることが示されています。このアウェアネスの消失は、反応時間を測定している最初の信号に続く遅延したマスキング刺激を与えることで引き起こすことができます(テイラーとマックロスキー(1990年))。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第3章 無意識的/意識的な精神機能,岩波書店(2005),pp.127-129,下條信輔(訳))
(索引:信号の無意識の検出)
(出典:wikipedia)
「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)
ベンジャミン・リベット(1916-2007)
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