放射性廃棄物の管理を難しくする4つの理由
【放射性廃棄物の管理を難しくする理由(a)毒性が非常に強い。(b)半減期が非常に長い。(c)熱を発生し続けるので、小さく集めて管理できない。(d)化学的性質が違う多くの元素を含むので、処理や保管が難しい。(高木仁三郎(1938-2000))】放射性廃棄物の管理を難しくする4つの理由
(a)毒性が非常に強い。
(b)半減期が非常に長い。
(c)熱を発生し続けるので、小さく固めて集めて管理できない。
(d)化学的性質が違う多くの元素を含むので、処理や保管が難しい。
「放射性廃棄物の特徴は、まず第一に毒性がプルトニウムと同じように非常に強いことです。第二に非常に長生きです。第三に非常にやっかいな特徴として、熱を発生し続けるという、発熱性の問題があります。
廃棄物が熱を発生しなければもう少し処理がしやすいのです。一カ所に固めて置いておけばいいのですが、それができないのは発熱性があるからです。原発から出てくる廃棄物を一つにまとめたら小さくなるという話がありますが、一つにまとめられない。もしまとめたら、そのとたんに内部から溶けていきます。地中に埋める場合でもこの点が問題になります。
さらに、成分が雑多という第四の特徴があります。成分が雑多というのは、化学的性質が違う多くの元素がからんでくるという意味です。セシウムという元素もあればルテニウム、プルトニウム、ストロンチウムなどの元素もある。
産業廃棄物もやっかいですが、たとえばクロムならクロムの性質をうまく理解してそれにあった器に入れたり化学処理を考えてやればいいのですから、クロムを閉じ込めたり処分することができます。
放射性廃棄物がやっかいなのは、化学的性質を単一に決めることができない点です。学校時代に習った元素の周期律表の端から端までの雑多な元素を含んでいますから、その全部にあった処理方法はなかなかないわけです。それがいろいろなトラブルを起こしてしまう原因です。」
(高木仁三郎(1938-2000)『高木仁三郎著作集 第二巻 脱原発へ歩みだすⅡ』反原発、出前します! Ⅳ 核燃料サイクル、pp.387-388)
(索引:放射性廃棄物の管理の困難さ)
友へ―――高木仁三郎からの最後のメッセージ
「「死が間近い」と覚悟したときに思ったことのひとつに、なるべく多くのメッセージを多様な形で多様な人々に残しておきたいということがありました。そんな一環として、私はこの間少なからぬ本を書き上げたり、また未完にして終わったりしました。
未完にして終わってはならないもののひとつが、この今書いているメッセージ。仮に「偲ぶ会」を適当な時期にやってほしい、と遺言しました。そうである以上、それに向けた私からの最低限のメッセージも必要でしょう。
まず皆さん、ほんとうに長いことありがとうございました。体制内のごく標準的な一科学者として一生を終わっても何の不思議もない人間を、多くの方たちが暖かい手を差しのべて鍛え直して呉れました。それによってとにかくも「反原発の市民科学者」としての一生を貫徹することができました。
反原発に生きることは、苦しいこともありましたが、全国、全世界に真摯に生きる人々とともにあることと、歴史の大道に沿って歩んでいることの確信から来る喜びは、小さな困難などをはるかに超えるものとして、いつも私を前に向って進めてくれました。幸いにして私は、ライト・ライブリフッド賞を始め、いくつかの賞に恵まれることになりましたが、繰り返し言って来たように、多くの志を共にする人たちと分かち合うものとしての受賞でした。
残念ながら、原子力最後の日は見ることができず、私の方が先に逝かねばならなくなりましたが、せめて「プルトニウム最後の日」くらいは、目にしたかったです。でもそれはもう時間の問題でしょう。すでにあらゆる事実が、私たちの主張が正しかったことを示しています。なお、楽観できないのは、この末期的症状の中で、巨大な事故や不正が原子力の世界を襲う危険でしょう。JCO事故からロシア原潜事故までのこの一年間を考えるとき、原子力時代の末期症状による大事故の危険と結局は放射性廃棄物が垂れ流しになっていくのではないかということに対する危惧の念は、今、先に逝ってしまう人間の心を最も悩ますものです。
後に残る人々が、歴史を見通す透徹した知力と、大胆に現実に立ち向かう活発な行動力をもって、一刻も早く原子力の時代にピリオドをつけ、その賢明な終局に英知を結集されることを願ってやみません。私はどこかで、必ず、その皆さまの活動を見守っていることでしょう。
私から一つだけ皆さんにお願いするとしたら、どうか今日を悲しい日にしないでください。
泣き声や泣き顔は、私にはふさわしくありません。
今日は、脱原発、反原発、そしてより平和で持続的な未来に向っての、心新たな誓いの日、スタートの楽しい日にして皆で楽しみましょう。高木仁三郎というバカな奴もいたなと、ちょっぴり思い出してくれながら、核のない社会に向けて、皆が楽しく夢を語る。そんな日にしましょう。
いつまでも皆さんとともに
高木 仁三郎
世紀末にあたり、新しい世紀をのぞみつつ」
(高木仁三郎(1938-2000)『高木仁三郎著作集 第四巻 プルートーンの火』未公刊資料 友へ―――高木仁三郎からの最後のメッセージ、pp.672-674)
高木仁三郎(1938-2000、物理学、核化学)
原子力資料情報室(CNIC)
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認定NPO法人 高木仁三郎市民科学基金|THE TAKAGI FUND for CITIZEN SCIENCE
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高木仁三郎 略歴・業績<Who's Who<arsvi.com<立命館大学生存学研究センター
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