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2019年11月4日月曜日

防衛大臣の権限に基づく自衛隊機の運航という事実行為も、基地周辺住民に騒音等の被害の受忍を義務づけるものとして、公権力の行使、すなわち行政事件訴訟法上の「処分」といえる。(厚木基地行政訴訟最高裁判決)(福田護)

公権力の行使

【防衛大臣の権限に基づく自衛隊機の運航という事実行為も、基地周辺住民に騒音等の被害の受忍を義務づけるものとして、公権力の行使、すなわち行政事件訴訟法上の「処分」といえる。(厚木基地行政訴訟最高裁判決)(福田護)】

「1 厚木基地行政訴訟最高裁判決と本件の処分性
 本件の最大の争点は、現在のところ、差止め対象行為の処分性にあります。
 原告らは、本件において、集団的自衛権の行使等の事実行為が、国民の平和的生存権等の権利を侵害し、その受忍を強いるものとして、国民に対する公権力の行使、すなわち処分であることを主張して、その差止め等を請求しています。
 しかし被告は、その請求の内容の審理に入ることなく却下すべきことを求め、基本的な理由として、集団的自衛権の行使等が行政事件訴訟法3条2項の「処分」に当たらないから、本件審理の対象にならないと主張しているものです。
 ところで最高裁は、昨年12月8日、厚木基地における自衛隊機の運航の差止めを行政訴訟で求めた事件において、東京高裁が夜間の一部差止めを認めたのに対し、防衛大臣の自衛隊機の運航は裁量権の範囲内だとして差止めの結論は否定しましたが、自衛隊機の運航を行政事件訴訟法上の「処分」として、同法3条7項の差止めの訴えを起こすことができること自体は明確にしました。
 その法的構成は、防衛大臣の権限に基づく自衛隊機の運航という事実行為が基地周辺住民に対する関係で、騒音等の被害の受忍を義務づける公権力の行使に当たるとするもので、それは、本件で原告らが主張する法的構成とパラレルな関係にあります。したがって、本件のような「処分」の捉え方と、これに対する差止めの訴えという訴訟類型を採ることが、最高裁判例として肯定されたということになります。
 被告は、厚木基地訴訟の場合は、「自衛隊機の運航に必然的に伴う騒音等が、周辺住民の法的地位に直接的に影響を及ぼす事案」であるのに対し、本件の集団的自衛権の行使等は「原告らの権利義務に何ら直接的な影響を及ぼさない」から、事案を異にすると主張しています。
 しかし、厚木基地判決において公権力性を示すものとされる「受忍義務」というのも、周辺住民に何らの作為・不作為を求めるものでもないし、最高裁調査官の判例解説でも、住民は「運航に伴う不利益な結果を受忍すべき一般的な拘束を受けている」と解説されているところであり、それは、航空機騒音を曝露されている周辺住民の「法的地位」に何ら影響を及ぼすものではありません。それは、事実行為としての公権力の行使によって不利益な結果を受ける事実状態に置かれるということにほかならず、「法的な権利義務関係に直接的な影響を及ぼさない」という点では、本件と厚木基地航空機騒音のケースとで違いはないのです。」
(出典:平成28年(行ウ)第169号安保法制違憲・差止請求事件 2017年4月14日 第3回口頭弁論 報告会資料(意見陳述全文掲載)裁判資料・差止請求訴訟安保法制違憲訴訟の会
(索引:公権力の行使)

(出典:安保法制違憲訴訟の会
安保法制違憲訴訟の会(2016-)(Collection of propositions of great philosophers)
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