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2020年3月19日木曜日

原因が先に起こり結果はその後で起こるという原理(因果律)と、ある場所で起きる出来事は、遠く離れた別の場所で起きる出来事に瞬時に影響を与えることはないという原理(局所性)に反する現象は、見つかっていない。(谷村省吾(1967-))

因果律と局所性

【原因が先に起こり結果はその後で起こるという原理(因果律)と、ある場所で起きる出来事は、遠く離れた別の場所で起きる出来事に瞬時に影響を与えることはないという原理(局所性)に反する現象は、見つかっていない。(谷村省吾(1967-))】
 「局所性とは【ある場所で起きる出来事は,遠く離れた別の場所で起きる出来事に瞬時に影響を与えることはない(本誌 p.39)】という,自然現象なら当然そうなっていると思われる性質のことをいう。ただ,そもそも影響とは何か?と問い質すと,なかなか厄介ことになるので,そこは常識的な意味で捉えておいてほしい。
 因果律とは【原因が先に起こり結果はその後で起こる(本誌 p.40)】,時間を遡って未来から過去に影響が及ぶことはない,という法則である。ここでも,そもそも原因とは何か?結果とは何か?影響とは何か?過去と未来とは何か?と疑い出すと,因果律の明瞭な定義を与えるのはじつは難問であり,哲学の問題としても物理学の問題としてもいまだに議論は決着していない,と私は思う。しかし,ここでは原因・結果などの定義は問い質さないでおこう。」
(中略)
「本誌記事では,マクロ古典物理の常識である実在概念・局所性・因果律を前提としてベル不等式を導いた。そして,実験ではベル不等式が破れていることが判明したので,実在概念・局所性・因果律のどれかは実際には成り立っていないはずだと指摘し,とくに実在概念を疑い,物理量の値の実在性を放棄しなければならないと結論した。さらに,量子論では物理量の掛け算は非可換であり,物理量の値がなくても正しい計算ができることを示した。しかし,これらの検討の過程で(本誌 p.41~43)局所性と因果律はあまりしつこく疑わなかった。局所性と因果律を許容して,実在性だけを疑うのはなぜか?という疑問を持たれるのも当 然だと思うので,その点について説明を補っておく。
局所性と因果律に関して次のような事実が知られている:
 1) 局所性と因果律はマクロな古典世界で何度も確かめられている常識である。
 2) ミクロ世界の物理法則である相対論的場の量子論は局所性と因果律を尊重するようにできている。
 3) その理論が合わない現象はない。
 4) 超光速粒子(もしあれば局所性と因果律を破る)は実験家たちが探しているけれども一度も見つかっていない。
 以上のような理由から局所性と因果律はおいそれと放棄するわけにはいかないのである。それに比して,「測定しなかった物理量が,測定したときと同様に測定値を持っている」という実在概念は,古典物理の世界では一度も確かめられていない信念である。字句意義からして,「測らなかった値が,測った値に等しいかどうか」は確かめようがない。だからこそ実在概念が疑われるのである。
 ベルの不等式とクラウザーたちの思考実験とアスペの実験の驚くべきところは,局所性と因果律が正しいと仮定した上で「測らなかった値が,測ったときと同じように実在しているか」という,肯定も否定もできなさそうな問いを物理実験でテスト可能にしたところにある。しかもアスペ実験は明確に否定的な答えを出した。
 局所性や因果律が成り立たない世界を想定すると,我々が住み慣れた世界とはかなり異なった世界になる。そのような理論を作ってもよいが,「何でもありな理論」になりがちだ。そのような理論はアスペ実験を説明できるかもしれないが,いままでに実現したことがない奇妙な現象(テレパシーや過去への通信など)も起こってよいという予測を与えてしまう。」
『「揺らぐ境界? 非実在が動かす実在」を読んでいろいろ疑問が湧いた人のための補足谷村省吾 名古屋大学
(索引:因果律,局所性)

(出典:名古屋大学
谷村省吾(1967-)の命題集(Propositions of great philosophers)  「最近(2020年)、時間の哲学と心の哲学の問題に関わることが多くなり、「意識とは何か、物理系に意識を実装できるか」という問題を本格的に考えたいと思うようになった。裏プロジェクトとして意識の科学化を考えている。
 「科学で扱えるものと扱えないとされるもののギャップ」は、心得ておくべきではあるが、ギャップにこそ重要な問題が隠されており、ギャップを埋める・ギャップを乗り越えることによって科学は進歩してきたとも言える。」(中略)
 「物理学におけるギャップの難問として次のようなものがある。マクロ系によるミクロ系の観測に伴う波束の収縮、量子系から古典系の創発、相対論的系から非相対論的系の出現、可逆力学系から不可逆系の出現、意識なきものから意識あるものの出現「いまある感」の起源、などがそのような例であるが、これらは地続きの問題であり、いずれも機が熟すれば科学的に究明されるべき課題だと私は考えている。」(後略)
(研究の裏で私が意識していること 谷村省吾 名古屋大学谷村省吾(1967-)

谷村省吾(1967-)
TANIMURA Shogo@tani6s
谷村省吾(名古屋大学)
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