パーソナリティ症候群の諸特徴
【パーソナリティは、目的に貢献するような互いに強化し合う諸部分から構成され、変化に対する抵抗性と復元性を持つ。ときに、変化による矛盾回避のため影響が全体に及ぶ場合もあるが、逆に元の傾向を極端化させる場合もある。(アブラハム・マズロー(1908-1970))】パーソナリティ症候群の諸特徴
(1)互換性
一つの症候群に属する諸部分(各症状)は同じ目的を有するゆえに,部分間の代替可能性があること。
(2)循環的決定
ホーナイの悪循環概念にみられるように,一つの部分は他のすべての部分に影響を与えると同時に,他のすべての部分からも影響を受けるという循環的な動きが総体的に進行すること。
(3)変化への抵抗性
例えば,健康であろうとなかろうと,大きな外界の変化があっても,従来の生活スタイルに固執することがよく見られること。
(4)変化に対する復元傾向
ショックを受けたとしても,それが慢性的でない限り,その影響は通例一時的なもので終わり,元の状態に復元しようとする自発的な調整が見られること。
(5)変化が全体的に及ぶ傾向
症候群の一部分が変化すると,付随して他の部分も同じ方向で変化するので,症候群の変化はホーリスティックに起きることが多いこと。
(6)内的無矛盾性への傾向
症候群の中で他の部分と矛盾する部分がある場合には,しばしばその部分を他の諸部分と同じ方向に引き込む作用が働くこと。
(7)極端化傾向
自己保存の傾向とは逆の変化が増大する場合のことで,(6)の傾向のもと,不安定な人は極端に不安定となり,安定的な人は極端に安定的となる場合がよく見られること。
(8)外的状況による変化
症候群は外的状況からは孤立していないところから,それに対して反応し変化する場合が多いこと。
(9)症候群の変数の重要性
最も重要で明白な研究上の変数は症候群のレベルにあること。例えば,自尊心の強い場合と弱い場合に分けたり,精神的に安定している場合と不安定の場合に分けたりして,症候群の質を考察すること。
(10)症候群の表出は文化によって決定されること
人が生活上の主要な目標を達成する方法は,多くの場合,その人が所属する文化の型に依存し,例えば,自尊心や愛情の表現は所属する文化によって承認された方法を通じて行われるということ。ここには,文化人類学の影響がみられる。
《概念図》
(1)互換性
部分1→目的
│
│
部分2→目的
(2)循環的決定
強化
部分1─→部分2┐
↑ │
└──────┘
強化
(3)変化への抵抗性、(4)復元性、(8)外的状況による変化
外的状況
│
↓変化
部分1→部分1’→目的達成不可
↑ ││
└──┘└→部分1”→目的達成
復元 変化
(5)変化が全体的に及ぶ傾向
部分1─→部分2─→部分3─→部分4
影響 影響 影響
(6)内的無矛盾性への傾向
外的状況
│
↓変化 矛盾
部分1→部分1’⇔部分2
│
↓矛盾回避
部分1”─→部分2
↑ 整合 │
└────┘
(7)極端化傾向
外的状況
│
↓変化 矛盾
部分1→部分1’⇔部分2
↑ │矛盾回避
└───┘
極端化
(9)症候群の変数の重要性
最も重要で明白な研究上の変数は症候群のレベルにあること。例えば,自尊心の強い場合と弱い場合に分けたり,精神的に安定している場合と不安定の場合に分けたりして,症候群の質を考察すること。
(10)症候群の表出は文化によって決定されること
《概念図》
┌───────────────┐
│┌────────────┐ │
││┌─────────┐ │ │
│││意識的な動機 ← │ │
│││ 究極目標(目的)→ │ │
│││ ↓ │ │ │
│││ 部分目標(手段)│ │ │
│││ └───┐ ←── │
│││環境(状況)│ ──→ │
│││ 過去・現在│ │ │ │
│││ 予測・規範│ │ │ │
│││ │┌──┘ │ │ │
│││ ││ 分離的←─── │
│││ ││ 特殊的 │ │ │
│││ ││ 反応 │ │ │
│││ ↓↓ ↓ │ │ │
│││ 反応・行動 │ │ │
││└─────────┘ │ │
││文化(特殊的、局所的) │ │
│└────────────┘ │
│生体の状態(身体) │
│ 多数の欲求、複数の動機 │
│ 欲求の優先度の階層 │
│ 無意識的な動機(根本的) │
│ 局所的に見られた「動因」 │
└───────────────┘
(出典:wikipedia)
「第4節では,前節を受けて,パーソナリティの部分としての症候群は如何なる特質を有するのかが示される。すなわち,「パーソナリティ症候群の諸特徴(Characteristics of Personality Syndromes)〔1954年著書では副題:「症候群の力動性(Syndrome Dynamics)」が付加〕」として,次の10点が列挙されている)。
(1)「互換性(interchangeability)」;一つの症候群に属する諸部分(各症状)は同じ目的を有するゆえに,部分間の代替可能性があること。
(2)「循環的決定(circular determination)」;ホーナイの悪循環概念にみられるように,一つの部分は他のすべての部分に影響を与えると同時に,他のすべての部分からも影響を受けるという循環的な動きが総体的に進行すること。
(3)「十分に組織化された症候群は変化に抵抗し自己を保存する傾向のあること(tendency of the well organized syndrome to resist change or to maintain itself)」;例えば,健康であろうとなかろうと,大きな外界の変化があっても,従来の生活スタイルに固執することがよく見られること。
(4)「十分に組織化された症候群は変化を経た後,再確立させる傾向のあること(tendency of the well organized syndrome to reestablish itself after change)」;ショックを受けたとしても,それが慢性的でない限り,その影響は通例一時的なもので終わり,元の状態に復元しようとする自発的な調整が見られること。
(5)「症候群は全体的に変化する傾向のあること(tendency of the syndrome to change as a whole)」;症候群の一部分が変化すると,付随して他の部分も同じ方向で変化するので,症候群の変化はホーリスティックに起きることが多いこと。
(6)「内的無矛盾性への傾向(the tendency to internal consistency)」;症候群の中で他の部分と矛 盾する部分がある場合には,しばしばその部分を他の諸部分と同じ方向に引き込む作用が働くこと。
(7)「症候群レベルが極端化する傾向(the tendency to extremeness of the syndrome level)」;自己保存の傾向とは逆の変化が増大する場合のことで,(6)の傾向のもと,不安定な人は極端に不安定となり,安定的な人は極端に安定的となる場合がよく見られること。
(8)「症候群が外的圧力によって変化する傾向(tendency of the syndrome to change under external pressures)」;症候群は外的状況からは孤立していないところから,それに対して反応し変化する場合が多いこと。
(9)「症候群の変数(syndrome variables)」;最も重要で明白な研究上の変数は症候群のレベルにあること。例えば,自尊心の強い場合と弱い場合に分けたり,精神的に安定している場合と不安定の場合に分けたりして,症候群の質を考察すること。
(10)「症候群の表出は文化によって決定されること(cultural determination of syndrome expres-sion)」;人が生活上の主要な目標を達成する方法は,多くの場合,その人が所属する文化の型に依存し,例えば,自尊心や愛情の表現は所属する文化によって承認された方法を通じて行われるということ。ここには,文化人類学の影響がみられる。
(出典:パーソナリティ研究におけるマズローの基本視座(三島斉紀,河野昭三,2010))
(索引:パーソナリティ症候群の諸特徴.三島斉紀,河野昭三,1908-1970_アブラハム・マズロー)