ページ

2021年11月20日土曜日

自発的な行為の前には、頭頂部にある領域から 負の電位が緩やかに上昇するのを記録することができる。これは準備電位と呼ばれ行為を実行する約800msかそれ以上前に開始する。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

自発的行為の準備電位

自発的な行為の前には、頭頂部にある領域から 負の電位が緩やかに上昇するのを記録することができる。これは準備電位と呼ばれ行為を実行する約800msかそれ以上前に開始する。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

(RP) 
準備電位   自発的
 800ms                    行為
 ├──────────┤

RP:頭頂部にある領域から 負の電位が緩やかに上昇する

「この疑問についての実験的な研究の可能性は、コーンフーバーとディーック(1965年)の 発見によって切り開かれました。彼らは、脳活動の電位変化が、自発的行為に規則的かつ特異 的に先立って記録できることを発見しました。自発的な行為の前には、頭頂部にある領域から 負の電位が緩やかに上昇するのを記録することができます。電位変化は、被験者が自発的であ ると思われる明らかな行為を実行する約800ミリ秒かそれ以上《前》に開始します。そのた め、これは《準備電位》(RP、またはドイツ語で Bereitschaftspotential(ベライト シャフツポテンシャル)と呼ばれます。
 ここで調べた行為は、手首または指の急激な屈曲でした。個々のRPは非常に微弱であるた め、他の休息中の脳の電気活動の間に実質的には埋もれていました。そのため、微小なRPを合 計してコンピュータで平均化された波形を作成するためには、このような行為を何度も実行し なければなりませんでした。被験者は、こうした無数の行為を「マイペース」で実行すること が許可されていました。しかし、コーンフーバーとディーックは、許容範囲である実験時間内 にRPが合計で200から300回繰り返されるように、被験者の行為するタイミングを毎回約6秒間 に制限していました。
 コーンフーバーとディーックは、行為を促す意識を伴った意志がいつ現れるかという問題 を、脳の準備(RP)と関連づけて考えていませんでした。しかし、RPが自発的な行為に先立つ 時間があまりに長いことから、《脳》活動の《始動》時点と、自発的な実行を促す《意識的 な》意図が現れる時点との間にはズレがあるに違いない、と私は直感的に感じていました。意 志のある行為についての公開討論の中で、神経科学者であり、ノーベル賞受賞者のジョン・エ クルス卿は、自発的な行為の800ミリ秒以上前に始まるRPがあるということは、そのRPのいち 早い立ち上げよりもさらに前に、これに対応した意識を伴う意図が現れることを意味するに違 いない、という彼の信念を述べました。脳と心の相互作用についての彼自身の哲学におそらく 色づけされているエクルス卿のこの考えには、裏付けとなる証拠がないことに、私は気づきま した(ポッパーとエクルス(1977年)参照)。[訳注=エクルスは、脳が心に因果的影響を与 えると同時に、心も脳神経過程に影響し得るという、いわゆる二元論の立場を採った。]」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図――私 たちに自由意志はあるのか?――,岩波書店(2005),pp.144-146,下條信輔(訳))
(索引:)






マインド・タイム 脳と意識の時間 (岩波現代文庫 学術429) [ ベンジャミン・リベット ]