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2021年11月23日火曜日

3つ目は、生命の情報処理能力である。ある物理化学的状況(文脈)において、ある特定の物理化学的性質は、意味情報に変わる。これは、その系に対しては「何らかの意 味を持っている」のであり、それを読み取った系は、それに従って「行動する」ようになる。(ポール・デイヴィス(1946-))

生命の情報処理能力

3つ目は、生命の情報処理能力である。ある物理化学的状況(文脈)において、ある特定の物理化学的性質は、意味情報に変わる。これは、その系に対しては「何らかの意 味を持っている」のであり、それを読み取った系は、それに従って「行動する」ようになる。(ポール・デイヴィス(1946-))

「生物が持つ三つ目の際立った特徴は、その情報処理能力である。 すべての物理系は、 初歩的な意味で、 情報を処理していると見なすことができる。たとえば、惑星の位置を特定するには、いくつかの数字が 必要だ、惑星が太陽の周囲を動くにつれて、その位置は変化し、それを記述する数字も変化する。このように、惑星の運動という単純なプロセスは、「入力情報」( 惑星の最初の位置)を「出力 的な位置」に変換する。しかし、ゲノムや脳に含まれる情報は、このような単純なデータ を超えている。ゲノムは、あるタンパク質を作る、分子をコピーする、食物を探すなど、何かのプロジェクト を実行するための青写真、もしくは、アルゴリズム、あるいは、一組の指示である。アルゴリズムがう まく機能するには、遺伝子の指示を解釈し実行することができる物理的な系が必要である(ゲノムの場 合は、リボソームがその役割を担う場合もあろう)。これらの指示は、その系に対しては「何らかの意 味を持っている」のであり、それを読み取った系は、それに従って「行動する」。哲学者やコンピュー 夕科学者たちは、意味を持った情報を(ビットそのものに対立する概念として) 意味情報と呼んでいる。 このように、生物的な情報には、意味の次元と文脈の次元とがある。遺伝情報は、恣意的にビットが連 なっただけのものではなく、DNAの四文字からなるアルファベット 〔4種類の分子A (アデニン)、T (チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)] によって書かれた、あらかじめ定められたゴールを暗号化した、 一貫性を持つコンピュータプログラムの一種なのだ。単なる生化学的活動に対立するものとしての意識 の場合、神経による情報処理が意味情報の性質を帯びていることは明らかだ。心が、意味のある情報を 処理しているということには疑問の余地がない。心が行っているのは、おおざっぱに言って、そういう ことなのだ。」

(ポール・デイヴィス(1946-),『ゴルディロックスの謎』(日本語書籍名『幸運な宇宙』),第10章 どうして存在するのか,pp.390-391,日経BP社,2008,吉田三知世)