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2021年11月24日水曜日

この宇宙は、物理法則と物理定数の極めて微妙なバランスの上に成立している。仮に、陽子と中性子との質量差がもっと小さかったら、宇宙初期の熱平衡状態が変わり、陽子が存在しなくなる。水素は、恒星進化の大きな原動力であり、また、水や有機物も存在できない。(ポール・デイヴィス(1946-))

偶然の宇宙

この宇宙は、物理法則と物理定数の極めて微妙なバランスの上に成立している。仮に、陽子と中性子との質量差がもっと小さかったら、宇宙初期の熱平衡状態が変わり、陽子が存在しなくなる。水素は、恒星進化の大きな原動力であり、また、水や有機物も存在できない。(ポール・デイヴィス(1946-))


(a)陽子と中性子の質量差

・宇宙の熱い原始時代の、最初の1秒が経過する以前に、温度が10(10乗)Kを超えていた頃の、ニュートリノ、反ニュートリノ、電子、陽電子、中性子、陽子の熱力学的な平衡状態

p+e- ⇔ n+ν

p+反ν ⇔ n+e+

・陽子に対する中性子の比率は、陽子に対する中性子の質量の超過分で決まってくる。

・宇宙が膨張して冷えてくると、反応が止まり、その時点での陽子と中性子の比率が固定される。

・陽子に対する中性子の質量の超過分が、ちょうど電子の質量程度になっていることと、弱い力の大きさと重力の大きさの比率がある一定の値になっていることとが、宇宙に存在する中性子の陽子に対する比率を、10%程度にする。仮に、陽子と中性子との質量差がもっと小さかったら、中性子の存在比率が大きくなり、宇宙の温度が10(9乗)K(重水素の光分解温度)以下になったとき、

p+n → 重水素

重水素+重水素 → 中間段階→He4

この反応によって、陽子は存在しなくなる。水素は、恒星進化の大きな原動力であり、また、水素が存在しないと水や有機物も存在できないことになる。


(ポール・デイヴィス(1946-),『偶然の宇宙』(日本語書籍名『魔法の数10の40乗』),3 微妙なバランス,3.1 ニュートリノ,pp.76-79,地人書館,1990, 田辺健茲)

 (b)ニュートリノの質量

・ニュートリノは宇宙に遍在している(10×9乗/m3)ので、質量を持つかどうかは、宇宙の大極的な構造に影響を与える。例えば、一桁大きければ、宇宙は膨張ではなく収縮する。

・5×10(-35乗)kg程度、電子の5×10(-5乗)程度。

(ポール・デイヴィス(1946-),『偶然の宇宙』(日本語書籍名『魔法の数10の40乗』),3 微妙なバランス,3.1 ニュートリノ,pp.73-75,地人書館,1990, 田辺健茲)