量子的な確率分布の実在性
量子的な確率分布は実在そのものではなく可能な宇宙を表現し、観測過程によって初めて実在化する。とは言え、けっして実現されることのなかった世界すべてが、素粒子過程すべての確率を制御し、実在化した世界はこれらの過程に依存しているのである。(ポール・デイヴィス(1946-))
「前の章で、私たちの観測する世界は無限次元の超空間 のいろいろな世界の巨大な総体の断片 であり、影である、と説明しました。ここで、私たちが観測する世界はたんに超空間からでたらめに 選ばれたものではなく、目に見えない他の世界すべてに決定的に依存していることがわかりました。 二つのはなれた偏光装置のあいだの「真」 - 「偽」の相関は「真」の世界と「偽」の世界のあいだの干渉に本質的に依存しています。ちょうどこれと同じように、あらゆる異なった相互作用に、あらゆる 遠くはなれた原子に、あらゆるマイクロ秒に、けっして実現されることのなかった世界すべてが、私 たち自身の世界の中で、素粒子過程すべての確率を制御し、その推定上の実在の影を落とすのです。 超空間の他の世界がなかったなら、量子は成立せず、宇宙は崩壊するでしょう。すなわち、これら無数の実在に対する競争者が私たち自身の運命を操っているのです。 」
(ポール・デイヴィス(1946-),『他の世界』(日本語書籍名『宇宙の量子論』),第6章 実在の本質,p.184,地人書館,1985,木口勝義)