客観的科学の経験的基礎
客観的科学の経験的基礎は、従って、科学についてなんら「絶対的」なものを持たない。科学理論の大胆な構築物は、いわば沼地の上に聳 え立っているのである。それは杭の上に直立している建物のようなものである。われわれはただ、少なくとも差し当っては、杭が構築物を支えるに 足るほど堅固だと満足するときに、ストップするだけなのである。(カール・ポパー(1902-1994))
「客観的科学の経験的基礎は、したがって、科学についてなんら「絶対的」なものをもたな い。科学は岩底に基礎をおくものではない。科学理論の大胆な構築物は、いわば沼地の上に聳 え立っているのである。それは杭の上に直立している建物のようなものである。杭は上から沼 地のなかに打ち込まれるが、いかなる自然的なまたは「既定の」基盤にも達しない。そしてわ れわれがより深い層に杭を打ち込もうとする企てをやめる時でも、それはわれわれが堅固な基 礎に達したからではない。われわれはただ、少なくとも差し当っては、杭が構築物を支えるに 足るほど堅固だと満足するときに、ストップするだけなのである。」
(カール・ポパー(1902-1994),『科学的発見の論理』,第2部 経験の理論の若干の構成要素, 第5章 経験的基礎の問題,30 理論と実験,p.139,恒星社厚生閣(1972),大内義一(訳),森博 (訳))