多数派に対抗する諸権利に関する決定
いかなる争点も、少数派より多数派に決定を委ねることが常により公正である。これは、事実だろうか。多数派に対抗する諸権利に関する決定は、公正上多数派に委ねられ るべき争点ではない。(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013))
「私は、立法府及び他の民主的機関が、よりよい決定をなしうる能力をもつかどうかは別に して、憲法的決定を行う何らか特別の資格を有する、という第二の論証から検討を始めよう。 いかなる争点も少数派より多数派に決定を委ねることが常により公正であるから、このような 資格の性質は明白である、と言う者がいるかもしれない。しかし、しばしば指摘されてきた通 り、そのように言うことは、多数派に対抗する諸権利に関する決定は公正上多数派に委ねられ るべき争点ではない、という事実を無視している。立憲主義――個人的諸権利を保護するために 多数派が制約されなければならないという理論――は、すぐれた政治理論かもしれないし、そう でないかもしれない。しかし、合衆国はその理論を採択したのであり、多数派にそれ自身の利 益に関する事項の判断を委ねることは、首尾一貫せず不当だと思われる。したがって公正の諸 原理は、民主制からの論証を擁護するのではなく、それに反対することになると思われる。」
(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013),『権利論』,第4章 憲法の事案,4,木鐸社 (2003),p.185,木下毅(訳),野坂泰司(訳),小林公(訳))
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