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2022年2月25日金曜日

企業による利潤のうちの益々大きな割合が、レント取得という形をとるようになる。規則や規制が増殖し、かつ、それらを強制する物理力による脅迫が、益々洗練し複雑なものになっていく。同時に、利潤は還流し、専門家、企業官僚幹部の養成のため投入され、ブルシットジョブが増殖する。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))

レント取得、ブルシットジョブの増殖

企業による利潤のうちの益々大きな割合が、レント取得という形をとるようになる。規則や規制が増殖し、かつ、それらを強制する物理力による脅迫が、益々洗練し複雑なものになっていく。同時に、利潤は還流し、専門家、企業官僚幹部の養成のため投入され、ブルシットジョブが増殖する。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))


(a)金融化とレント取得
 金融化の過程とは、企業による利潤のうちのますます大きな割合が、あれやこれやのレント取得という形をとるということである。
(b)強制力に担保された規則や規制の増殖
 規則や規制が増殖し、かつ、それらを強制する物理力による脅迫が、ますます 洗練し複雑なものになっていくのである。実際、あまりに遍在しているために、もはや私たちは自分が脅威にさらされていると認めないほどである。
(c)レント取得による利潤の還流とブルシットジョブの増殖
 同時に、レント取得による利潤のいくぶんかはリサイクルされ、専門家階級の選抜や事務処理専門の企業官僚新幹部の養成のため、投入されている。ここ数十年、一見して無意味で不要不急の仕事、戦略ヴィジョン・コーディネーター、人的資源コンサルタント、リーガル・アナリストなどなどの「クソしょうもない仕事」が、これらの職に就いている人間ですら事業にはなんの貢献もしていないと日頃ひそかに考えているにも かかわらず、増殖し続けている。



「現代にふさわしい官僚制の批判は、これらのより糸――金融化、暴力、テクノロジー、公的 なものと私的なものの融合――が、いかにたがいに織り合わされ、独立した単一の網の目を形成 しているのかを示さなければならないだろう。金融化の過程とは、企業による利潤のうちのま すます大きな割合が、あれやこれやのレント取得というかたちをとるということである。つき つめるなら、これはさしずめ合法化されたユスリといったところである。それゆえ、それにあ いともなって、規則や規制が増殖し、かつ、それらを強制する物理力による脅迫が、ますます 洗練し複雑なものになっていくのである。実際、あまりに遍在しているために、もはやわたし たちはじぶんが脅威にさらされていると認めないほどである。そうではない世界がどのような ものか、想像すらできないからである。それと同時に、レント取得による利潤のいくぶんかは リサイクルされ、専門家階級の選抜や事務処理専門の企業官僚新幹部の養成のため、投入され ている。わたしがべつのところで述べた現象を促進している要因は、これである。すなわち、 ここ数十年、一見して無意味で不要不急の仕事――戦略ヴィジョン・コーディネーター、人的資 源コンサルタント、リーガル・アナリストなどなどの「クソしょうもない仕事」――が、これら の職に就いている人間ですら事業にはなんの貢献もしていないと日頃ひそかに考えているにも かかわらず、増殖しつづけているという現象である。結局、これは1970年代、80年代に、企 業官僚制が金融システムの拡大に呑み込まれるにつれてはじまった階級的再結合の基本的論理 の延長にほかならない。」
 (デヴィッド・グレーバー(1961-2020),『官僚制のユートピア』,序 リベラリズムの鉄則と 全面的官僚制化の時代,p.59,以文社(2017),酒井隆史(訳),芳賀達彦(訳),森田和樹(訳)) 

官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則 [ デヴィッド・グレーバー ]


デヴィッド・グレーバー
(1961-2020)