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2024年4月1日月曜日

16.より多くの資金を集めて効率性と平等性を高めるような税制(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

より多くの資金を集めて効率性と平等性を高めるような税制(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 「もし真剣に赤字を削減しようと思うのなら、次の方法で今後10年間に数兆ドルを簡単に集めることができるだろう。その方法とは、

(a)最上層に属する人々の税率を上げること――これらの人々は国家経済の分け前をたっぷりもらっているから、税率を少し上げただけでかなりの歳入をもたらしてくれる。

(b)最上層にかたよっている種類の収入に対する抜け穴や特別待遇を排除すること――投機による収入や配当への低い税率から地方債利子の税額控除まで――。

(c)企業に補助金を与えることになる個人税制と法人税制の抜け穴や特別条項を排除すること。

(d)レントにいまより高率の税金を課すこと。

(e)汚染に税金を課すこと。

(f)金融セクターに課税して、少なくとも経済全体に繰り返し押しつけてきたコストの一部を反映させること。そして、

(g)この国の資源――本来ならすべての国民に帰属する資源――を利用ないし不当に使用するようになった者に対価を全額支払わせることだ。

 これらの歳入増加策はより効率的な経済を生み出して、かなりの額の赤字を減らすだけでなく、不平等を緩和してくれる。だからこそ、これらの簡単なアイデアは予算論争の中心テーマにはならなかった。上位1パーセントの大多数が収入の大半を、先に挙げた提案の対象となる諸部門――石油、ガスなどの形態の環境汚染活動、税法に隠された補助金、この国の資源を安価で取得できる制度、金融セクターに与えられた無数の特別な恩恵――から引き出していたからだ。

 より多くの資金を集めて効率性と平等性を高めるような税制を設計できる一方で、歳出についてもまったく同じことができる。2章で、最上層の収入を高める際の超過利潤(レント)の役割を見て、一部の超過利潤がまさに政府からの贈り物であることに触れた。 

ここまでの各章で、政府が果たすべき重要な機能について述べてきた。それらの機能のひとつは社会的保護だ。貧しい人々を援助し、民間部門では手頃な条件で保険を提供できない場合に、すべてのアメリカ人に保険を提供することだ。しかし、貧しい人々の福祉プログラムの一部が近年削減されてきた一方で、6章で企業助成と名付けた企業への補助金は増加した。

 もちろん、(隠れた補助金であれ公然の補助金であれ)補助金を減額したり削除したりする提案が切り出されると、それらの受給者が、補助金は公益にかなうと擁護しようとする。

この擁護には皮肉な側面がある。政府から施し物を受け取る企業や人物の多くは、同時に政府支出に異を唱えている――つまり小さな政府に賛成しているのだ。

私欲によって公平さの判断が左右されるのは人間の性だ。実は、私欲は無意識のうちに影響をふるってしまう。しかし、繰り返し検討してきたように、これらの補助金とそれを得ようとする努力が、この国の経済と政治制度をゆがめているのだ。」

(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第8章 緊縮財政という名の神話,pp.316-318,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))


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(出典:wikipedia
ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)の命題集(Propositions of great philosophers)