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2021年11月27日土曜日

もちろん、理論の正しさは様々な計算の結果と実験との比較による一致である。しかし、ストリング理論の不満は、その概念上の枠組が正しくつかまれていないように思われることだ。一般相対論が、幾つかの諸原理から不可避的に湧出するように、基礎的な概念上の枠組みから自然に理解される時、それが達成されると思う。(エドワード・ウィッテン(1951-))

 概念上の枠組みの理解

もちろん、理論の正しさは様々な計算の結果と実験との比較による一致である。しかし、ストリング理論の不満は、その概念上の枠組が正しくつかまれていないように思われることだ。一般相対論が、幾つかの諸原理から不可避的に湧出するように、基礎的な概念上の枠組みから自然に理解される時、それが達成されると思う。(エドワード・ウィッテン(1951-))








「現在の理論がかかえる主要な問題は何であると思いますか? 

ウィテン 

私が物理学者となった目的は、物事がいかに秩序だっているかを学びたかったのですが、さ らに世界がいかに働いているか、その原理を理解したかったからでもあります。 以前に述べたように物 理学の本質は概念を発見することなのです。 現在ストリングの理論を不満足なものにしている主要な原 因は、多くの著しい特徴があり多くの素晴らしい発見がなされてきたにもかかわらず、その概念上の枠 組が正しくつかまれていないことです。それは一般相対論の幾何学についても同様なことがいえます。 私たちが最も発展できそうに見えるのは、ストリングの理論が基づく論理的枠組を明らかにすることで す。その問題は、何年もの間、解かれないままになっています。

 一般相対論は、それが基づく原理から不可避的に湧出するものです。 重力の理論を幾何学に基づいて 作り上げることを認め、かつ、特殊相対論を理解し、いくつかの一般原理を物理学の用語を用いて図式 的に表現すると(たとえばアインシュタインの名高いエレベーター実験など)、その概念をつかむやい なや数式が導かれる。 数式はこれらの概念を完全に具体化したものです。それを改良するのは難しい。 私たちの期待するものはストリング理論の中にあります。私たちが何にもまして見つけようとしてい るものは、そのような概念上の枠組であって、それがあってこそストリングの理論は、相対性理論と同 じような自然さを備えるでありましょう。 世界が基づくべき概念を発見することが、物理学者となった 目的であるからこそ、ともかくこれを見つけたいのです。また、ストリング理論が何であるかを正しく理解することは、私たちがやってみたい計算をするには必須であるからこそ、正しい概念上の枠組を見 つけたいのです。ストリング理論を使って、素粒子の質量や作用常数、寿命、相互作用、あらゆる種類 の過程の起こる確率などを計算したい。そのような計算をし、実験と比較することによってのみ、理論 が正しいかどうかを知ることができるのです。

 しかし、理論は大まかにしか理解されておらず、その基礎が正しく理解されていないかもしれず、そ うだとすると、これらの計算を行なうことは難しい。論理的枠組を理解することは、知的にもおそらく 実際的にも十分見合うことだと思っています。 もし願いがかなうならば、物理学のこの問題こそ私が何 らかの進歩をさせたいと思っているものです。」

(ポール・デイヴィス(1946-),ジュリアン・ブラウン(編集),『スーパーストリング』,3 エドワード・ウィッテン(1951-),pp.120-121,紀伊國屋書店,1990,出口修至)