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2022年2月12日土曜日

かつて、従うべき真なる価値があると信じられていたが、1820年頃には、非常に異なった見方が支配的になった。目的と諸価値を創造するのは個人であり、そもそも命令、要求、義務、目標に真偽値はない。各個人は、自分自身の内的な理想に仕えることが真実の生き方であるとする思想である。(アイザイア・バーリン(1909-1997))

諸価値は個人によって創造される

かつて、従うべき真なる価値があると信じられていたが、1820年頃には、非常に異なった見方が支配的になった。目的と諸価値を創造するのは個人であり、そもそも命令、要求、義務、目標に真偽値はない。各個人は、自分自身の内的な理想に仕えることが真実の生き方であるとする思想である。(アイザイア・バーリン(1909-1997))



(a)目的を創造するのは諸個人
 自分の正しいと考えることをなせ、自分の美しいと思うものを作れ、自分の窮極の目的であるものに従って暮らせ、自分の生活の中の窮極の目的以外のものは全て手段であり、目的には一切のものを従属させねばならなぬ、まさしくそ れが、あなたに要求されていることなのである。
(b) 命令、要求、義務、目標に真偽はない
 課題を果せという命令、要求、義務は、 真でもなく偽りでもない。それは命題ではない。何かを述べたものではなく、事実を説明したものでもない。真か偽かを立証できるものではない。誰かが発見して、誰かがその真偽を点検 するようなものではない。それは目標なのである。
(c)その人個人の絶対性
 この理想は、孤独な個人にだけ啓示され たもので、他の全ての人には偽り、あるいは馬鹿げたものと思われるかもしれない。その個 人の属している社会の生活や世界観と対立しているかもしれない。


「およそ1820年頃には、非常に異なった見方が支配的になっている。詩人や哲学者、特にド イツの詩人や哲学者が、今では人になし得るもっとも高貴なことは、いかなる代価を払っても 自分自身の内的な理想に仕えることだと言っている。この理想は、孤独な個人にだけ啓示され たもので、他のすべての人には偽り、あるいは馬鹿げたものと思われるかもしれない。その個 人の属している社会の生活や世界観と対立しているかもしれない。しかし彼はそのために戦わ ねばならぬ。他に道がなければそのためには死なねばならぬというのである。しかし、もしそ の理想が偽りであればどうであろうか。まさにこの点で、範疇の根本的な移動、人間精神にお ける大きな革命となるような変化が生じている。理想が真か偽りかという問題はもはや重要で はなく、むしろ全体としては理解不可能なことと考えられている。理想は至上の命令という形 式で提出されている。それはあなたの中で燃えており、ただそれだけの理由で、あなたの内な る内面の光に奉仕せよというのである。自分の正しいと考えることをなせ、自分の美しいと思 うものを作れ、自分の窮極の目的であるものにしたがって暮らせ――自分の生活の中の窮極の目 的以外のものはすべて手段であり、目的には一切のものを従属させねばならなぬ――まさしくそ れが、あなたに要求されていることなのである。その課題を果せという命令、要求、義務は、 真でもなく偽りでもない。それは命題ではない。何かを述べたものではなく、事実を説明した ものでもない。真か偽かを立証できるものではない。誰かが発見して、誰かがその真偽を点検 するようなものではない。それは目標なのである。論理学、政治学のモデルが自然科学、神学 あるいはその他事実についての知識ないしその記述という形式から、生物的な衝動と目標とい う概念、芸術的創造という概念から成る何ものかに向かって突如として移行したのである。こ の点について、もっと具体的に説明したい。」
 (アイザイア・バーリン(1909-1997),『ヨーロッパの統一とその変転』,III,収録書籍名 『理想の追求 バーリン選集4』,pp.217-218,岩波書店(1983),福田歓一,河合秀和(編),松 本礼二(訳))

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アイザイア・バーリン
(1909-1997)