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2022年2月12日土曜日

(a)人間は目的そのものであり、価値は人間が創造する、(b) 制度は人間のために、人間によって創造される、(c) いかに高尚な理念でも、一人の人間の価値には及ばない、(d) 最悪の罪は、何らかの固定された基準によって人間を評価すること。(アイザイア・バーリン(1909-1997))

ロマン主義ヒューマニズムからの継承

(a)人間は目的そのものであり、価値は人間が創造する、(b) 制度は人間のために、人間によって創造される、(c) いかに高尚な理念でも、一人の人間の価値には及ばない、(d) 最悪の罪は、何らかの固定された基準によって人間を評価すること。(アイザイア・バーリン(1909-1997))



(a)人間は目的そのものであり価値は人間が創造する
 価値を作るのは人間そのものであり、したがって価値を作る人は、何か彼よりも価値の高 いものの名において殺されることない。カントが人間はそれ自体が目的であり、何かの目的のための手段ではないと言っ た時、彼が言わんとしたのがこのことであった。
(b) 制度は人間のために、人間によって創造される
 制度は人間によって作られるだけでなく人間のために作られており、もはや役に立たなくなった時にはその制度は捨てねばならぬ。
(c) いかに高尚な理念でも、一人の人間の価値には及ばない
 進歩や自由や人間性などいかに高尚なものであっても、それら抽象的 理念の名において、あるいは制度の名において人間を殺戮することにはならない。価値が人間 によって与えられている以上、理念や制度はそれ自体で絶対的価値を持たない。
(d) 最悪の罪は、何らかの固定された基準によって人間を評価すること
 すべての罪の中で最悪の罪は、何らかの固定された基準によって人間を貶め、人間を辱めることだという点である。この固定されたパターンは、人間の願望とは無関係に何らかの客観的権威を持つものとされ、 人々は自らの意志に反してそのパターンに押し込まれてきたのである。



 「それでも、ロマン主義のヒューマニズム――この同じ奔放なドイツ精神――から、われわれは 重要なことを洞察できるようになっており、そのことは簡単には忘れられないであろう。第一 に、価値を作るのは人間そのものであり、したがって価値を作る人は、何か彼よりも価値の高 いものの名において殺されることはあるまい――彼より価値の高いものはないからである――とい う点である。カントが人間はそれ自体が目的であり、何かの目的のための手段ではないと言っ た時、彼が言わんとしたのがこのことであった。第二に、制度は人間によって作られるだけで なく人間のために作られており、もはや役に立たなくなった時にはその制度は捨てねばならぬ という点である。第三に、進歩や自由や人間性などいかに高尚なものであってもそれら抽象的 理念の名において、あるいは制度の名において人間を殺戮することにはならないという点であ る。人間だけが物を価値あるもの、あるいは神聖なものにできるのであって、価値がその人間 によって与えられている以上、理念や制度はそれ自体で絶対的価値を持たないからである。し たがってそれに抵抗したり変革したりしようとする試みは、神の意志にたいする反抗、死に よって罰せられるべき行為といったことには決してならないからである。第四に――これは自余 のことから出てくる結論であるが――すべての罪の中で最悪の罪は何らかの固定された基準、い わゆるプロクルーステスの寝台のために人間を貶め、人間を辱めることだという点である。こ の固定されたパターンは、人間の願望とは無関係に何らかの客観的権威を持つものとされ、 人々は自らの意志に反してそのパターンに押し込まれてきたのである。」
 (アイザイア・バーリン(1909-1997),『ヨーロッパの統一とその変転』,V,収録書籍名『理 想の追求 バーリン選集4』,pp.233-234,岩波書店(1983),福田歓一,河合秀和(編),松本礼 二(訳))

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アイザイア・バーリン
(1909-1997)