感情の共同体
感情の共同体とは、家族、隣人、議会、ギルド、修道院、教区教会の構成員などであり、感情の表現、評価、統制に関して、同じ社会の中にも、異なる共同体の間に互いに競合する予測や規則が存在する。感情表現において、予期され、推奨され、許容され、非難される様式は、 それぞれ異なる。(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-))
「スーザン・マットは、「同じ社会の中にも互いに競合する予測や規則が存在すると提唱する」 歴史家について語った。ここでマットの念頭にあったのは間違いなく、バーバラ・H・ローゼンワインの ことである。二〇〇二年、この頃の感情史研究を評価した論文において、ローゼンワインは「感情の 共同体 (emotional communities)」を研究するよう提唱した。曰く
『感情の共同体は、家族、隣人、議会、ギルド、修道院、教区教会の構成員などの社会共同体と全 く同じである。しかし、感情の共同体に着目する研究者は、とりわけ感じ方のシステムを解明す ることを目指すのである。具体的に言えば、これらの共同体(およびその個々の成員)において、ど んな感情が有益もしくは有害であると定義され評価されるのか。他者の感情はどのように評価さ れるのか。人と人とのあいだにあると認識される情動のつながりは、どのような性質なのか。感 情表現において、予期される様式、推奨される様式、許容される様式、そして非難される様式は、 それぞれどのようなものか。』
(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-),リッカルド・クリスティアーニ,『感情史とは何か』,2 アプローチ,感情の共同体,pp.61-62,伊東剛史(訳),森田直子(訳), 小田原琳(訳), 舘葉月(訳))