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2024年4月5日金曜日

22. 感情は、(1)文化的価値、信念や規範、(2)文化的要素の外的象徴による対象化、(3)こうした文化の象徴化を強化するその時々に適当な儀礼、(4)身体運動と発話のリズミカルな共時化、(5)文化の指令に同調しそこねた人たちに対する儀礼化した裁可付与と密接に関係している(ジョナサン・H・ターナー(1942-)

 感情は、(1)文化的価値、信念や規範、(2)文化的要素の外的象徴による対象化、(3)こうした文化の象徴化を強化するその時々に適当な儀礼、(4)身体運動と発話のリズミカルな共時化、(5)文化の指令に同調しそこねた人たちに対する儀礼化した裁可付与と密接に関係している(ジョナサン・H・ターナー(1942-)

エミール・デュルケム

 「たとえば、神々を崇敬する先住民たちは、実際には彼ら自身と共に彼らの社会を崇拝しているのだ。

なぜなら興奮とマナに顕現する神々の力は、彼ら自身の相互作用から生起した力であるにちがいない。

宗教の起源、したがって社会連帯のもっとも原基的な形態は、人びとの相互作用と超自然力として表現される高揚した感情の覚醒に由来する。

宗教の起源に関するデュルケムの推測の功績がいかなるものであれ、彼が感情理論家にいくつかの決定的な力を与えたことは確かである。

 第一に、デュルケムは文化的象徴に「神聖な」品格を授けることの意義を強調した。神聖な象徴は個人間に激しい感情を喚起する力をもっている。

その後における理論家たちは、文化的象徴が宗教である必要はなく、実際に、すべての文化要素が個人の行動を制約し、そして感情を喚起する力をもっていると認識した。

この感情喚起には二種がある。文化指令への同調は個人を肯定的な感情経験へ導く。これに反して、文化指令に同調しそこなうと、否定的な感情喚起と裁可を呼び込むことになる。したがって象徴の力は「道徳的な」品格を内具しており、これによって人びとは象徴に同調すると道義的であると実感し、象徴に違反すると憤慨する。これによって人びとは道徳規則をおおむね堅守すると確信する。

 第二に、文化はトーテムなどの「神聖な」対象によって、さらに象徴化される程度に応じて道徳的な品格を帯びる。こうした「神聖な」対象が(..)物理的対象である必要のないことが、後の理論家によって明白にされた。つまり文化にとって必要であるのは、何らかの外的な方法――目視できる対象によってだけでなく、重要な単語や語句や考えなど、文化的象徴をとおして――で表象されうるということだ。

たとえば「わたしはアメリカを愛している」という表現は、アメリカ社会において認知される一連の美徳についての信念を象徴するため、アメリカ国旗などの物理的トーテムと同様に強力な作用をはたす。

文化がこの種の再帰性――一組の価値、信念や規範が別の集合の象徴によって表象されること――を帯びると、文化はますます道徳性を帯びることになり、感情を喚起することができる。

たとえば誰かがアメリカ社会の美徳についてあざ笑うような声明に反応して、道義的に憤激したと仮定してみよう。その反応は、その人があたかも先住民の物的トーテムを斧で叩き壊したり、あるいはアメリカ国旗を焼き払ったりするときと同じく激しいものだろう。

だから、象徴の表象化は文化をさらに重要なものにし、道徳的に投企され、そして感情的なものにさせる、ある種の圧力過給器の働きをする。

 第三に、外的対象によって表象化された文化の要素に向けられる儀礼は、感情を喚起し、そして個人に連帯感を経験させる。

ここでもまた、アーヴィング・ゴッフマン(1967)のような後の理論家は、あらゆる対人的行動が注意と関連する文化台本や枠組の定まっている儀礼によって区切られていることを認識するにいたった。たとえば宗教儀礼は個人が相互作用するときいつも起こる特殊例にほかならない。

 第四に、個々人が自らの身体をいっせいに動かすと、儀礼はある種のリズムを表し、そして言語による発言に集合的に関わる。このリズミカルな性質は興奮の原因でも、また結果でもある。個人が相互作用を行うと、彼らはいっそう活気づけられ、そして彼らの互いのジェスチャーはますます共時化したリズムを表す。このリズミカルな共時化が興奮を高め、相互作用の焦点を定め、そして感情を沸騰させる。

したがってもっと最近の理論家たちは、相互作用が感情を生成するためには、それがリズミカルなジェスチャーの交換を行うことが必須であると認識している。

 だから、デュルケムは自分が社会連帯の原基的な基盤を発見したと感得したのに対して、後の理論家たちは、彼が対人的なすべての行動を導く機構の主要な集合――外的事物によって象徴される信念に向けられる儀礼――の正体を明らかにしたと認識した。

したがって感情は、(1)文化的価値、信念や規範、(2)文化的要素の外的象徴による対象化、(3)こうした文化の象徴化を強化するその時々に適当な儀礼、(4)身体運動と発話のリズミカルな共時化、(5)文化の指令に同調しそこねた人たちに対する儀礼化した裁可付与と密接に関係している。」

(ジョナサン・H・ターナー(1942-)『感情の社会学理論』第3章 儀礼による感情の理論化、pp.148-150、明石書店 (2013)、正岡寛司(訳))

感情の社会学理論 (ジョナサン・ターナー 感情の社会学5) [ ジョナサン・H・ターナー ]