ページ

2024年4月15日月曜日

税制改革(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 税制改革(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 ①所得税と法人税の累進性を高め、税制の抜け穴を減らす。

 名目上、累進制度をとるアメリカの税制は、見かけよりもずっと累進性が低く、すでに述べたとおり、抜け穴と例外と免除と優遇であふれ返っている。本当の公平な税制というものは、投機の収益に課税をする際、少なくとも労働の報酬と同じ税率を適用するはずであり、上層の所得に課税をする際は、少なくも中下層と同じ税率を確保するはずだ。法人税にかんしては、抜け穴を取り除くとともに、雇用と投資の増加をうながす改革が必要となる。

 4章で説明したとおり、右派の主張とは裏腹に、わたしたちは税制の効率性と累進性を同時に高めることができる。貯蓄と労働力供給への影響を勘案したいくつかの研究によると、適正な最高税率は50パーセントをはるかに超え、70パーセントをも上回るという。しかも、これらの研究には、上層の法外な所得がどれほどレントに依存しているか、という点が充分に反映されていないのだ。

 ②新たな財閥の誕生を阻止するため、現在より実効性の高い相続税制を創設し、実効性の高い運用体制を構築する。

 骨抜きにされた相続税を復活させ、キャピタルゲインの優遇税制を撤廃させれば、新たな財閥や特権階級の誕生を防ぐことにもつながるだろう。それらの措置の副作用は、最小限にとどまる可能性が高い。なぜなら、相続税の対象となる巨額の遺産は、たんなる運や、独占力の行使や、非金銭的なインセンティブによって蓄積されているからだ。」

(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第10章 ゆがみのない世界への指針,pp.394-395,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))

【中古】 世界の99%を貧困にする経済/ジョセフ・E.スティグリッツ【著】,楡井浩一,峯村利哉【訳】





 
(出典:wikipedia
ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)の命題集(Propositions of great philosophers)