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2021年11月20日土曜日

意識を伴った意志の前に、無意識の脳の過程が始まっている(準備電位)。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

準備電位

意識を伴った意志の前に、無意識の脳の過程が始まっている(準備電位)。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

予定して  予定して
いる行為  いない行為
RP1                   RP2      W      S 筋電図
┼─────────┼───┼──┼
-1000                -500    -150     0
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W:意識を伴った意志
意識を伴った意志の前に、無意識の脳の過程が始まっている。


「また別の重要な発見として、Wは、筋肉の活性化の実際の動きから約150~200ミリ秒先行 するということでした。また、実際の脳の起動と意識を伴った意志(W)の事実上の時間差 は、おそらくここで(RPを使って)観察された400ミリ秒よりも大きいのです。というのは、 すでに述べたように、脳内のどこかにある別の領域がおそらく私たちがRP2として記録した活 動を起動していると考えられるからです。 これは何を意味しているのでしょう? まず、自発的な行為に繋がるプロセスは、行為を促 す意識を伴った意志が現れるずっと前に脳で《無意識に起動します》。これは、もし自由意志 というものがあるとしても、自由意志が自発的な行為を起動しているのではないことを意味し ます。 また、多くのスポーツ活動で見られるような、スピーディな起動が必要となる自発的な行為 のタイミングについても、(私たちのこの知見は)広範な示唆を与えます。時速約160キロで サーブしたボールを打ち返すテニス選手などは、行動しようとする自分の決断に気づくまで 待っているわけにはいきません。スポーツにおける感覚信号への反応には、それぞれ固有の事 象に対応している、込み入った精神の働きが必要になります。これらは普通の反応時間ではあ りません。そうであったとしても、もしある人が自分の動きについて意識的に考えているのな らば、その人のことを「使いものにならない」、とスポーツ選手は言うでしょう。」

自発的に起動する行為の順序

予定して  予定して
いる行為  いない行為
RP1                   RP2      W      S 筋電図
┼─────────┼───┼──┼
-1000                -500    -150     0
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「「ゼロ」時間(筋肉の活性化)に比べてそれよりも早く、予定した行為(RP1)または予 定していない行為(RP2)のどちらかの脳のRPがまず発生する。動作を行おうとする願望 (W)の最も早いアウェアネスについての主観的な経験が、およそマイナス200ミリ秒のところ で現れる。これは、行為(「ゼロ」時間)よりもずっと前であり、RP2よりはさらに350ミリ 秒程度《あと》になる。皮膚刺激の主観的なタイミング(S)は、平均しておよそマイナス50 ミリ秒であり、これは実際の刺激の到達時間よりも前になる。リベット(1989年)より。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図――私 たちに自由意志はあるのか?――,岩波書店(2005),pp.159-160,下條信輔(訳))
(索引:)





マインド・タイム 脳と意識の時間 (岩波現代文庫 学術429) [ ベンジャミン・リベット ]