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2018年7月27日金曜日

細胞は、カルシウムを信号として用いているので、カルシウムと反応して蛍光を発する塗料を利用すると、ニューロンの発火によりカルシウムイオンがニューロンに流入し、細胞質に波紋が伝わる様子を映像化できる。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))

カルシウムイメージング

【細胞は、カルシウムを信号として用いているので、カルシウムと反応して蛍光を発する塗料を利用すると、ニューロンの発火によりカルシウムイオンがニューロンに流入し、細胞質に波紋が伝わる様子を映像化できる。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))】

(a)細胞がカルシウムをシグナルとして使用している理由
 (1)細胞膜にあるポンプが絶えずカルシウムを細胞外に排出しているため、細胞内のカルシウム濃度は、細胞外の濃度の1万分の1でしかない。
 (2)カルシウムの一部は、小胞体と呼ばれる細胞質の貯蔵タンクへ、ポンプで汲み入れられている。小胞体のこのポンプ活動は、細胞質から余分なカルシウムを除去するだけでなく、小胞体そのものがカルシウム貯蔵庫となって、大量のカルシウムを一気に放出して、その下流でいくつかのプロセスを活性化し、細胞応答を始動させる役割を担うことも可能にしている。
 (3)ある受容体が、それが感知するように設計されている特定の化学物質を見つける。
 (4)細胞膜に小さな孔を開き、カルシウムイオンを一時的に細胞内へ流入させる。
 (5)受容体分子が見張っていた出来事の発生を、細胞全域に知らせ、適切な細胞応答の開始を先導する。

(b)カルシウムイメージングの手法
 カルシウムが存在すると奇妙な緑色の蛍光を発する染料に細胞を浸して、顕微鏡で観察すると、さまざまな刺激が生きた細胞の内部でどのようにカルシウムシグナルを引き起こすのかを見ることができる。
 ニューロンにおいては、
 (1)軸索で電気的インパルスが発火される。
 (2)ニューロンの細胞膜にある特別に分化したイオンチャネルは、電圧の変化を感知する。
 (3)このタンパク質チャネルが、電気的インパルスに反応してわずかな時間だけ開く。
 (4)カルシウムイオンがニューロン内へ一気に流入する。
 (5)細胞質にカルシウムの波紋が伝わっていく。

 「細胞の表面には、目も眩むほどのさまざまなセンサーがあって、周囲の化学的環境を絶えず監視している。ある受容体が、それが感知するように設計されている特定の化学物質を見つけると、細胞膜に小さな孔を開き、カルシウムイオンを一時的に細胞内へ流入させて、細胞全体に警報を発する。このカルシウムシグナルは、「イギリス軍が来るぞ!」という警報に相当し、その受容体分子が歩哨として見張っていた出来事の発生を細胞全域に知らせ、適切な細胞応答の開始を先導する。スティーヴン・スミスらのグループは、カルシウムが存在すると奇妙な緑色の蛍光を発する染料に細胞を浸し、この新たな顕微鏡を用いて、さまざまな刺激が生きた細胞の内部でどのようにカルシウムシグナルを引き起こすのかを熱心に調べた。
 私たちの細胞がカルシウムをシグナルとして使用するのは、体内のすべての細胞が、カルシウムで満たされた海のような環境に生息しているからだ。だが細胞の内側では、状況は大きく異なる。堤防システムが海水の浸入を阻んでいるように、細胞膜にあるポンプが絶えずカルシウムを細胞外に排出しているため、細胞内のカルシウム濃度は、細胞外の濃度の1万分の1でしかない。これは、カルシウムイオンが細胞内で強力なメッセンジャーとして機能するためには、申し分のない状況だ。カルシウムの一部は、小胞体と呼ばれる細胞質の貯蔵タンクへ、ポンプで汲み入れられている。小胞体のこのポンプ活動は、細胞質から余分なカルシウムを除去するだけでなく、小胞体そのものがカルシウム貯蔵庫となって、大量のカルシウムを一気に放出して、その下流でいくつかのプロセスを活性化し、細胞応答を始動させる役割を担うことも可能にしている。
 カルシウムは、すべての細胞内部で情報交換の主要通貨としての役目を果たし、絶えず変わり続ける細胞環境の状況に合わせて、細胞応答を調和させている。ニューロンもこの情報の細胞内通貨に頼っている。ニューロンの細胞膜にある特別に分化したイオンチャネルは、軸索で電気的インパルスが発火されたときに生じる電圧の変化を感知する。このタンパク質チャネルが、電気的インパルスに反応してわずかな時間だけ開くと、カルシウムイオンがニューロン内へ一気に流入する。細胞表面の電気現象に続いて、細胞質にカルシウムの波紋が伝わっていく軌跡を監視することで、細胞深部の働きも、外部の電気現象を常に把握しているのだ。科学者たちは今では、この新たなカルシウムイメージングの手法を用いて、ニューロンの発火を文字どおり見ることができるようになった。
 生きた細胞を使用したカルシウムイメージング技術は革新的であり、大きな衝撃を与えた。というのも、この手法は、科学者が生きた細胞の働く様子をリアルタイムで観察できる新たな境地を開いたからだ。カルシウムイオンと結合すると蛍光を発する色素によって、それまでひそかに行われていた細胞どうしのメッセージのやり取りが目に見えるようになった。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第1部 もうひとつの脳の発見,第3章 「もうひとつの脳」からの信号伝達――グリアは心を読んで制御している,講談社(2018),pp.107-109,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:カルシウムイメージング)

もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」 (ブルーバックス)


(出典:R. Douglas Fields Home Page
R・ダグラス・フィールズ(19xx-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「アストロサイトは、脳の広大な領域を受け持っている。一個のオリゴデンドロサイトは、多数の軸索を被覆している。ミクログリアは、脳内の広い範囲を自由に動き回る。アストロサイトは一個で、10万個ものシナプスを包み込むことができる。」(中略)「グリアが利用する細胞間コミュニケーションの化学的シグナルは、広く拡散し、配線で接続されたニューロン結合を超えて働いている。こうした特徴は、点と点をつなぐニューロンのシナプス結合とは根本的に異なる、もっと大きなスケールで脳内の情報処理を制御する能力を、グリアに授けている。このような高いレベルの監督能力はおそらく、情報処理や認知にとって大きな意義を持っているのだろう。」(中略)「アストロサイトは、ニューロンのすべての活動を傍受する能力を備えている。そこには、イオン流動から、ニューロンの使用するあらゆる神経伝達物質、さらには神経修飾物質(モジュレーター)、ペプチド、ホルモンまで、神経系の機能を調節するさまざまな物質が網羅されている。グリア間の交信には、神経伝達物質だけでなく、ギャップ結合やグリア伝達物質、そして特筆すべきATPなど、いくつもの通信回線が使われている。」(中略)「アストロサイトは神経活動を感知して、ほかのアストロサイトと交信する。その一方で、オリゴデンドロサイトやミクログリア、さらには血管細胞や免疫細胞とも交信している。グリアは包括的なコミュニケーション・ネットワークの役割を担っており、それによって脳内のあらゆる種類(グリア、ホルモン、免疫、欠陥、そしてニューロン)の情報を、文字どおり連係させている。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第3部 思考と記憶におけるグリア,第16章 未来へ向けて――新たな脳,講談社(2018),pp.519-520,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:)

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2018年7月26日木曜日

グリアの数はニューロンの6倍にも達する。その大まかな種類は、シュワン細胞、稀突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)、アストロサイト、小膠細胞(ミクログリア)。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))

グリア

【グリアの数はニューロンの6倍にも達する。その大まかな種類は、シュワン細胞、稀突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)、アストロサイト、小膠細胞(ミクログリア)。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))】

 「現在のところ、神経組織にはニューロンに加えて、大きく4種類に分類されるグリアが存在することがわかっている。そのうちの2種類、すなわち末梢神経にあるシュワン細胞と、脳や脊髄に見られる稀突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)は、軸索の周囲にミエリンという絶縁体を形成する。また脳と脊髄の全域に、アストロサイトと小膠細胞(ミクログリア)というグリアも存在する。ミクログリアは、脳を損傷や病気から保護しており、脳や脊髄が損傷から回復するうえで中心的な役割を担う。あらゆる種類のグリアがニューロン内の電気信号を感知して、それに応答している可能性を示す興味深い手がかりも見つかっている。
 その意味するところを考えてみよう。脳内の電気活動は、知覚や経験、思考、そして気分を伝える。グリア細胞は神経系で多様な機能を実行しているので、もしグリアが神経インパルスの活動を感知できるならば、広範囲にわたる脳機能がグリアの影響を受けている可能性がある。感染に対する免疫系の反応から、軸索の絶縁、脳の配線の敷設・組換えや、病気や損傷からの脳の回復に至るあらゆる機能が、グリアを介して作用するインパルス活動の影響を受けているかもしれない。
 グリアの数はニューロンの6倍にも達するが、その正確な比率は神経系の部位ごとに異なる。それはちょうど、男女の比率は平均すると1対1であるものの、その正確な割合は場所によって大きく異なるのと同じだ。たとえば、理髪店では男性10人に対して女性1人だが、手芸店ではちょうどその逆になる。末梢の神経線維沿いや脳内の白質神経路では、グリアとニューロンの比率は100対1にもなりうる。なぜなら、軸索は全長にわたって、およそ1ミリメートル感覚でミエリン形成グリアに被覆されているからだ。人の前頭皮質におけるアストロサイトとニューロンの比率は4対1だが、クジラやイルカの巨大な前脳では、ニューロン1個あたり7個のアストロサイトが存在する。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第1部 もうひとつの脳の発見,第2章 脳の中を覗く――脳を構成する細胞群,講談社(2018),pp.52-54,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:シュワン細胞,稀突起膠細胞,オリゴデンドロサイト,アストロサイト,小膠細胞,ミクログリア)

もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」 (ブルーバックス)


(出典:R. Douglas Fields Home Page
R・ダグラス・フィールズ(19xx-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「アストロサイトは、脳の広大な領域を受け持っている。一個のオリゴデンドロサイトは、多数の軸索を被覆している。ミクログリアは、脳内の広い範囲を自由に動き回る。アストロサイトは一個で、10万個ものシナプスを包み込むことができる。」(中略)「グリアが利用する細胞間コミュニケーションの化学的シグナルは、広く拡散し、配線で接続されたニューロン結合を超えて働いている。こうした特徴は、点と点をつなぐニューロンのシナプス結合とは根本的に異なる、もっと大きなスケールで脳内の情報処理を制御する能力を、グリアに授けている。このような高いレベルの監督能力はおそらく、情報処理や認知にとって大きな意義を持っているのだろう。」(中略)「アストロサイトは、ニューロンのすべての活動を傍受する能力を備えている。そこには、イオン流動から、ニューロンの使用するあらゆる神経伝達物質、さらには神経修飾物質(モジュレーター)、ペプチド、ホルモンまで、神経系の機能を調節するさまざまな物質が網羅されている。グリア間の交信には、神経伝達物質だけでなく、ギャップ結合やグリア伝達物質、そして特筆すべきATPなど、いくつもの通信回線が使われている。」(中略)「アストロサイトは神経活動を感知して、ほかのアストロサイトと交信する。その一方で、オリゴデンドロサイトやミクログリア、さらには血管細胞や免疫細胞とも交信している。グリアは包括的なコミュニケーション・ネットワークの役割を担っており、それによって脳内のあらゆる種類(グリア、ホルモン、免疫、欠陥、そしてニューロン)の情報を、文字どおり連係させている。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第3部 思考と記憶におけるグリア,第16章 未来へ向けて――新たな脳,講談社(2018),pp.519-520,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
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