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2021年12月29日水曜日

政府に対抗する権利は、たとえ多数派がある行為を不正と考え、それが為されると多数派の状態が悪化する場合でさえ、当の行為を個人が行いうるような権利でなければならない。それに競合可能な権利は、他者個人の権利のみである。(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013))

政府に対抗する権利

政府に対抗する権利は、たとえ多数派がある行為を不正と考え、それが為されると多数派の状態が悪化する場合でさえ、当の行為を個人が行いうるような権利でなければならない。それに競合可能な権利は、他者個人の権利のみである。(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013))


(a)政府に対抗する権利
 政府に対抗する権利は、たとえ多数派がある行為を不正と考え、それが為されると多数派の状態が悪化する場合でさえ、当の行為を個人が行いうるよ うな権利でなければならない。
(b)競合可能な権利は他者個人の権利のみ
 社会の一般的利益は、政府に対抗する権利に対抗できない。これらの権利を救うためには、我々は社会の他の成員が個人として有する権利のみを競合的 権利として認めねばならない。つまり社会の多数派自体の権利と多数派に属する各成員の個人 的権利を区別すべきであり、前者は個人の権利を否定する正当事由とはなりえない。



「政府に対抗する権利が認められていても、もし政府が自らの意思を実現しようとする民主 主義的多数派の権利を引き合いにだして、前者の権利を否定しうることになれば、この権利は 危険にさらされることになるだろう。政府に対抗する権利は、たとえ多数派がある行為を不正 と考え、それが為されると多数派の状態が悪化する場合でさえ、当の行為を個人が行いうるよ うな権利でなければならない。もしこの場合、社会は一般的利益を生みだすものであればいかなることをも行なう権利があり、また社会の多数派がそのような生活を望むのであれば、いか なる生活環境をも維持する権利があると我々が考え、しかもこの権利を正当事由にして、これと衝突する個々人の政府に対抗する権利を無視しうると考えるのであれば、これは我々が後者 の権利を撤廃したことを意味するのである。これらの権利を救うためには、我々は社会の他の成員が個人として有する権利のみを競合的 権利として認めねばならない。つまり社会の多数派自体の権利と多数派に属する各成員の個人 的権利を区別すべきであり、前者は個人の権利を否定する正当事由とはなりえない。この際、 使用されるべき規準は次のようになる。すなわち、ある行為に対する個人の権利と比較衡量さ れ、この行為からの保護を要求するような競合的権利を他者が有しうるのは、次のような場 合、つまり当の他者が個人として有する一定の権限に基づいて政府の保護を要求することがで き、しかも同胞市民の大多数がこの要求に参加するか否かに関係なく彼がこの保護を要求しう る場合である。  この規準によれば、国家に存在するあらゆる法の強制を要求する権利を誰もが有している、 と考えるのは正しくない。たとえば、ある種の刑法規定が未だ制定されていなかったとき、特 定の個人がこの規定の制定を要求する権利を有していたのであれば、彼にはこの種の刑法規定 の強制のみを要求する権利が認められることになる。人身攻撃を禁止する法規定などは、この タイプの規定に属するだろう。身体の弱い社会の成員――暴力行為に対して警察の保護を必 要とする人々――が単なる少数派であっても、彼らに当該保護を受ける権利を認めることは依然 として可能と思われる。しかしこれに対して、公共の場所で一定の静けさを要求する法規や国 外での戦争を是認し財政援助を与える法規は、個人の権利に基づくものとは考えられない。」 

(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013),『権利論』,第6章 権利の尊重,2 諸権利と法に違反 する権利,木鐸社(2003),pp.258-258,木下毅(訳),野坂泰司(訳),小林公(訳))

権利論増補版 [ ロナルド・ドゥウォーキン ]




ロナルド・ドゥオーキン
(1931-2013)

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