ラベル カルシウムウェーブ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル カルシウムウェーブ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年8月12日日曜日

睡眠中の脳波を発生させている神経活動の周期を、アストロサイトが協調させている。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))

アストロサイト

【睡眠中の脳波を発生させている神経活動の周期を、アストロサイトが協調させている。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))】

(1)外部からいっさい刺激を与えていないのに、視床内部のアストロサイト網を、カルシウムウェーブが周期的に駆け抜ける。
(2)隣接するアストロサイトをカルシウムウェーブが通過するのに合わせて、ニューロンの電位が変化する。
 (2.1)アストロサイトが、神経伝達物質グルタミン酸を放出する。
 (2.2)グルタミン酸が、ニューロンのグルタミン酸受容体を活性化する。
 (2.3)この作用が、電位応答を誘発する。

 「シナプス相互作用に立脚したニューロン説の枠外で活動しながら、ニューロンの集団を集合体へと統合している存在がほかにもある――それはアストロサイトだ。クルネリらは、視床から得た切片を、アストロサイトによって選択的に取り込まれるカルシウム感受性蛍光色素の溶液に浸した。彼らが観察していると、外部からいっさい刺激を与えていないのに、視床内部のアストロサイト網をカルシウムウェーブが周期的に駆け抜けた。視床ニューロンに電極を刺入して、細胞内電位の変化を記録すると、隣接するアストロサイトをカルシウムウェーブが通過するのに合わせて、ニューロンの電位が変化していることがわかった。睡眠中の脳波を発生させている神経活動の周期を、アストロサイトが協調させていたのだ。
 ニューロンが示したこの電気的応答は、カルシウムウェーブが通過するときにアストロサイトが放出する神経伝達物質グルタミン酸によって引き起こされていた。このグルタミン酸が、ニューロンのグルタミン酸受容体を活性化し、この作用が電位応答を誘発して、ニューロンにインパルス発火を刺激していたのだった。
 この研究から導かれる驚くべき結論は以下のとおりだ。睡眠中の脳活動においてこのような広範囲の周期を制御しているのは、大脳皮質ではなく、さらにはニューロンさえも、主導権を握ってはいない。アストロサイトを通して流れる活動波が、視床ニューロンの大集団を結びつけて、その神経活動を競技場の観客の動きのように協調させている。てんかん発作や病気の際に、脳波の広範な変化が認められるのと同じように、アストロサイト内のカルシウム活動の波は、ニューロン内の電気的な活動と同期して振動している。アストロサイトは電気信号で連絡するのではなく、化学的メッセージを拡散することによって相互に信号を送り合っており、さらにはニューロンどうしがシナプスを介した連絡に用いているのと同じ神経伝達物質を放出することによって、ニューロンの発火を調節している。「もうひとつの脳」は、毎晩私たちが枕に頭を乗せて休んでいるときにも、睡眠の制御に精を出しているのだ。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第3部 思考と記憶におけるグリア,第13章 「もうひとつの脳」の心――グリアは意識と無意識を制御する,講談社(2018),pp.445-447,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:アストロサイト,カルシウムウェーブ,グルタミン酸)

もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」 (ブルーバックス)


(出典:R. Douglas Fields Home Page
R・ダグラス・フィールズ(19xx-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「アストロサイトは、脳の広大な領域を受け持っている。一個のオリゴデンドロサイトは、多数の軸索を被覆している。ミクログリアは、脳内の広い範囲を自由に動き回る。アストロサイトは一個で、10万個ものシナプスを包み込むことができる。」(中略)「グリアが利用する細胞間コミュニケーションの化学的シグナルは、広く拡散し、配線で接続されたニューロン結合を超えて働いている。こうした特徴は、点と点をつなぐニューロンのシナプス結合とは根本的に異なる、もっと大きなスケールで脳内の情報処理を制御する能力を、グリアに授けている。このような高いレベルの監督能力はおそらく、情報処理や認知にとって大きな意義を持っているのだろう。」(中略)「アストロサイトは、ニューロンのすべての活動を傍受する能力を備えている。そこには、イオン流動から、ニューロンの使用するあらゆる神経伝達物質、さらには神経修飾物質(モジュレーター)、ペプチド、ホルモンまで、神経系の機能を調節するさまざまな物質が網羅されている。グリア間の交信には、神経伝達物質だけでなく、ギャップ結合やグリア伝達物質、そして特筆すべきATPなど、いくつもの通信回線が使われている。」(中略)「アストロサイトは神経活動を感知して、ほかのアストロサイトと交信する。その一方で、オリゴデンドロサイトやミクログリア、さらには血管細胞や免疫細胞とも交信している。グリアは包括的なコミュニケーション・ネットワークの役割を担っており、それによって脳内のあらゆる種類(グリア、ホルモン、免疫、欠陥、そしてニューロン)の情報を、文字どおり連係させている。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第3部 思考と記憶におけるグリア,第16章 未来へ向けて――新たな脳,講談社(2018),pp.519-520,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:)

R・ダグラス・フィールズ(19xx-)
R・ダグラス・フィールズの関連書籍(amazon)
検索(R・ダグラス・フィールズ)

にほんブログ村 哲学・思想ブログへ

脳科学ランキング
ブログサークル

人気の記事(週間)

人気の記事(月間)

人気の記事(年間)

人気の記事(全期間)

ランキング

ランキング


哲学・思想ランキング



FC2