経済の基本原則では、いいものよりも悪いものに税金を課すほうがよいとされる。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)
「経済の基本原則では、いいものよりも悪いものに税金を課すほうがよいとされる。
仕事(生産的なもの)に税金を課すことに比べたら、汚染(石油会社が石油を流出させて海を汚す場合であろうと、化学会社が有毒な老廃物を生じさせる場合であろうと、金融会社が有害なアセットを作り出す場合であろうと、いずれも悪いものだ)に税金を課すほうがよい。汚染する者は社会のほかの人々に押しつけるコストを負担しない。
水質汚染や大気汚染(温室効果ガスの排出をふくむ)を生み出す人々が自分たちの行動がもたらす社会的コストを支払わないという事実は、経済をゆがませる大きな原因のひとつだ。
税金を課すことは、このゆがみを正して、負の外部性を生み出す活動を思いとどまらせ、社会的貢献度の高い分野に財源を移転させるのに役立つ。
他人に押しつけるコストを全額支払わない会社は、事実上補助金を受け取っているにひとしい。さらに、このような税金は10年間で本当に数兆ドルを集めることができるだろう。
石油、ガス、石炭、化学、製紙、そのほか多くの企業は環境を汚染してきた。しかし、金融会社は有害な住宅ローンで世界経済を汚染した。金融セクターは社会のほかの人々にとてつもない外部性を押しつけてきたのだ。すでに触れたように、金融セクターが重大な責任を負っている金融危機のコストは全体で数兆ドルにのぼる。
ここまでの各章で、瞬間的トレーディング、その他の投機的行為はボラティリティを生み出すかもしれないが、実際に価値を生み出すわけではないことを見てきた。市場経済の全体的効率性が低下することさえあるかもしれない。
汚染者支払い原則は、汚染者が他人に押しつけたコストを支払うべきだとする。」
(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第8章 緊縮財政という名の神話,pp.314-315,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
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