『人間の間柄の諸要素』(マルティン・ブーバー(1878-1965)
「この原稿が完結した後で、アレクサンダー・フォン・ヴィレルス(Alexander von Villers)の『ある無名氏の手紙』の中の二つの箇所が私の注目を引いた。
私にとり、それはここで引用するに足る注目すべきものと考えられる。
《ヴィーゼンハウスにて、1877年12月27日。私は「人間間にひそむ人間」(der Zwischen-mensch)の迷信をもっています。私がそれではないし、君もそれではない。しかしわれわれの間には、私には《汝》といい、他者には《私》である、あるものが生じて来ます。
このようにして、各人は相互的な二重の名称を持った彼の「人間間にひそむ人間」を持っています。
そしてすべて百人の「人間間にひそむ人間」の――われわれの各々がそれに50パーセント関与しているわけですが――誰一人として他の「人間間にひそむ人間」とは等しくありません。
だが彼は考え、感じ、そして話します。これが「人間間にひそむ人間」です。彼には諸々の思想が属しています。これがわれわれを自由にするのです。》
《ヴィーゼンハウスにて、1879年2月28日。かくてわれわれは今や真相に達します。それは話と答え、生ける対象、軋轢、そして多分生殖の内奥です。
なぜなら私はある事物についての表象を持ちますが、それは物自体ではなく、私における、また汝における、あるものについての表象であります。
それに名前、つまり握る柄をつけるために、私はそれを「人間間にひそむ人間」(der Zwischen-mensch)と名付けます。