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2020年8月10日月曜日

喜び、痛み、あるいは良心の声、安全、名声、支配への欲求、自己実現欲求など、人間にはこれら本能的な性質があるにしても、結果として生じる行動を説明できない。彼の擬似環境、すなわち世界の内部表現が決定的な要素である。(ウォルター・リップマン(1889-1974))

諸傾向、諸欲求だけでは行動を説明できない

【喜び、痛み、あるいは良心の声、安全、名声、支配への欲求、自己実現欲求など、人間にはこれら本能的な性質があるにしても、結果として生じる行動を説明できない。彼の擬似環境、すなわち世界の内部表現が決定的な要素である。(ウォルター・リップマン(1889-1974))】
Try to explain social life as the pursuit of pleasure and the avoidance of pain. You will soon be saying that the hedonist begs the question, for even supposing that man does pursue these ends, the crucial problem of why he thinks one course rather than another likely to produce pleasure, is untouched. Does the guidance of man's conscience explain? How then does he happen to have the particular conscience which he has? The theory of economic self-interest? But how do men come to conceive their interest in one way rather than another? The desire for security, or prestige, or domination, or what is vaguely called self-realization? How do men conceive their security, what do they consider prestige, how do they figure out the means of domination, or what is the notion of self which they wish to realize? Pleasure, pain, conscience, acquisition, protection, enhancement, mastery, are undoubtedly names for some of the ways people act. There may be instinctive dispositions which work toward such ends. But no statement of the end, or any description of the tendencies to seek it, can explain the behavior which results. The very fact that men theorize at all is proof that their pseudo-environments, their interior representations of the world, are a determining element in thought, feeling, and action. For if the connection between reality and human response were direct and immediate, rather than indirect and inferred, indecision and failure would be unknown, and (if each of us fitted as snugly into the world as the child in the womb), Mr. Bernard Shaw would not have been able to say that except for the first nine months of its existence no human being manages its affairs as well as a plant.
(出典:Walter Lippmann"Public Opinion",PART I. INTRODUCTION, I. The World Outside and the Pictures in Our HeadsPublic Opinion(Walter Lippmann))
(索引:喜び,痛み,良心の声,自己実現欲求,本能,世界の内部表現)

(出典:wikipedia
ウォルター・リップマン(1889-1974)の命題集(Propositions of great philosophers)
ウォルター・リップマン(1889-1974)
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2020年7月28日火曜日

自己実現的人間のパーソナリティ特徴の例:偏見,先入見からの自由/現実の受容/不確かさへの志向/新鮮な評価/創造性/神秘的経験,大洋感情/自律的な価値体系/他者の多様な価値体系の受容/プライバシーの欲求/他者からの自律性(アブラハム・マズロー(1908-1970))

自己実現的人間のパーソナリティ特徴

【自己実現的人間のパーソナリティ特徴の例:偏見,先入見からの自由/現実の受容/不確かさへの志向/新鮮な評価/創造性/神秘的経験,大洋感情/自律的な価値体系/他者の多様な価値体系の受容/プライバシーの欲求/他者からの自律性(アブラハム・マズロー(1908-1970))】

自己実現的人間のパーソナリティ特徴(アブラハム・マズロー(1908-1970))
 (a)受け継がれてきた文化の受け容れ(真理、価値)
  (a.1)問題中心的
   (i)自分と関係のない問題でも心にかけ、幅広い視野を保つことができる。
   (ii)何らかの使命や達成すべき仕事を持っており、それらは人類一般や国家一般の利益に関わる場合が多い。
   (iii)人類全体に対する帰属意識をもつ。
  (a.2)共同社会感情
   (i)人類全般に対して同一感や愛情を持っている。平均的な人々の欠点にいら立ったり、腹を立てたりしながらも、人々に同一感を感じ、人類を助けたいと真剣に願っている。
  (a.3)対人関係
   (i)他者と深い結びつきを形成し、愛情、親密性、献身性を持って付き合う。そしてそれゆえに、友人の範囲はかなり狭い。
   (ii)偽善的でうぬぼれた尊大な人に対しては厳しい態度を持っているが、面と向かってそれを表明したりはしない。
  (a.4)民主的性格構造
   (i)階級や教育程度、政治的信念、人種や皮膚の色などに関係なく誰とでも親しくできる。同じ人間だからという理由だけで、どんな人にもある程度の尊敬を払う。
   (ii)学習関係において、外面的威厳を維持しようとしたり、地位や年齢に伴う威信などを保とうなどとはしない。自分に何かを教えてくれるものを持っている人たちを本当に尊敬し、謙虚になる。道具や技術をうまく使いこなす人たちにも尊敬をささげる。
  (a.5)文化からの自律性
   (i)変化や改善の必要を認め、自分の住む文化からある程度の距離をおくことができる。
   (ii)本質的、内部的には因襲にとらわれないが、つまらないことで人を傷つけたり人と争ったりしたくないため、できるかぎりは慣習どおりに振舞う。

 (b)真理は、経験と理性によって認識することができる
  (b.1)偏見、先入見からの自由
   (i)抽象、期待、信念、固定観念などにとらわれず、現実を正確に知覚し、現実の世界の中に生きることができる。
   (ii)正反対のパーソナリティ特性は、自己防衛機制の「合理化」である。より受け入れられる原因に帰属させることで、あることを受け入れられるようにすること。
  (b.2)現実の受容
   (i)自己、他者、世界を受け入れている。自分自身や他の人々の人間性を、欠点も含めて、ありのままに受け入れることができる。
   (ii)考え深く賢明で、敵意的でないユーモアのセンスをもつ;人間のおかれた状況を笑うが、特定の個人を笑いものにしない。
   (iii)正反対のパーソナリティ特性は、自己防衛機制の「投影」である。 自身の受け入れがたい側面を別の誰かに帰属させること。
  (b.3)不確かさへの志向
   未知のものや不確かなことがあっても快適でいられる。

 (c)自己の情念は概ね頼りになる
  (c.1)自己の情動の自然な受容
   (i)思考や情動において自発的・柔軟的で自然体である。
   (ii)正反対のパーソナリティ特性は、自己防衛機制の「抑圧」である。脅威となる衝動や出来事を、意識の外に追い出し、無意識にすることで、強く抑制すること。
   (iii)また、自己防衛機制の「反動形成」も正反対のパーソナリティ特性である。不安を生みだす衝動を、意識の中で、その逆のものに置き換えること。
  (c.2)絶えず新鮮な評価
   (i)たとえ非常に単純でありふれた経験に対しても、常に新鮮な認識を保つことができる(例:夕暮れ、花、他者に対して)。
   (ii)人生の基本的に必要なことを、繰り返し新鮮に、無邪気に、畏敬や喜びや恍惚感さえもって評価できる。
  (c.3)創造性
   (i)健康な子どもの持つ純真で普遍的な創造性と同種の創造性を持つ。
   (ii)創造的で独創的であり、必ずしも偉大な才能をもたないが、素朴に、常に新鮮さをもってものごとに接することができる。
  (c.4)神秘的経験、大洋感情
   (i)限りなく地平線が開けている感じ、エクスタシーと畏敬の感じ、非常に重要で価値あることが起こったという感じ、などを伴う経験によって力づけられている。
   (ii)強度の集中、無我状態、自己喪失感、自己超越感などのような、神秘的とも言える経験に至る場合もある。

 (d)自己の情念に従うことの是非
  (d.1)自己実現における二分性の解決
   情と知、理性と本能、認知と意欲、仕事と遊び、義務と喜び、成熟と子供っぽさ、親切心と残忍さ、具象と抽象、自己と社会、内向的と外向的、能動的と受動的、男性的と女性的、その他のさまざまな対立性や二分性は解消され、相互に融合し合体して統一体となっている。

 (e)価値も、経験と理性により認識できる
  (e.1)自律的な価値体系
   (i)自己の本質、人間性、多くの社会生活、自然や物質的現実を哲学的に受容することによって、自然に価値体系の確固たる基盤を身につけている。
   (ii)この価値体系の基盤によって、現実との快適な関係、社会感情、満たされた状態、手段と目的との識別などがもたらされる。
   (iii)自律的な倫理規定を持ち、その規定に照らして重要と思えることのためであれば、慣習には従わないこともある。
   (iv)正反対のパーソナリティ特性は自己防衛機制の「昇華」である。社会的に受け入れられる方法で社会的に受け入れられない衝動を表現する。
  (e.2)多様な価値体系の受容
   性別や年齢による差異、身分上の差異、役割上の差異、政治的差異、宗教上の差異などを受容できる価値体系を持っている。

 (f)私たちに依存するものと、依存しないものを区別すること
 (g)意志の自由の存在
 (h)意志決定に伴う情動
  (h.1)超越性、プライバシーの欲求
   (i)孤独やプライバシーを欲する。自分自身の潜在能力や手腕を信頼できる。
   (ii)高い集中力を持ち、極度の集中によって外部環境のことを忘れたりすることがある。
   (iii)比較的少数の他者と非常に深い結びつきを作りあげる。
   (iv)普通の人々からは、冷たい、俗物主義である、愛情が欠如している、友情がない、などと思われることもある。
  (h.2)他者からの自律性
   (i)比較的、外発的な満足に左右されない。例えば、他者からの受容や人気に動かされない。
   (ii)自然環境や社会環境からの独立性を持ち、名誉、地位、報酬、威信、愛、などよりも、自分自身の成長や発展のために、自分自身の可能性や潜在能力を頼みとしている。

《概念図》
┌───────────────┐
│┌────────────┐ │
││┌─────────┐ │ │
│││引き継がれた文化 ← │ │文化
│││ 諸事実・真理  → │ │a1 問題中心的
│││ 諸価値・芸術  │ │ │a2 共同社会感情
│││         │ │ │a3 対人関係
│││         │ │ │a4 民主的性格構造
│││         │ │ │a5 文化からの自律性
│││意識的な動機←─┐│ │ │意識的な動機
│││ 究極目的   ││ │ │e1 自律的な価値体系
│││  ↓     ││ │ │e2 多様な価値体系の受容
│││ 部分目標   ││ │ │
│││  └───┐ ││ │ │
│││      │情動←── │情動
│││      │ │ ─→ │c1 自己の情動の自然な受容
│││      │ ││ │ │c2 絶えず新鮮な評価
│││      │←┤│ │ │c3 創造性
│││      │ ││ │ │c4 神秘的経験、大洋感情
│││環境(状況)←─┤│ │ │環境(状況)
│││ 過去・現在│ ││ │ │b1 偏見、先入見からの自由
│││ 予測・規範│←┘│ │ │b2 現実の受容
│││  │┌──┘  │ │ │b3 不確かさへの志向
│││  ↓↓ 分離的←─── │
│││意志決定 特殊的 │ │ │d1 自己実現における二分性の解決
│││計画││ 反応  │ │ │意志決定
│││ ↓↓↓ ↓   │ │ │h1 超越性、プライバシーの欲求
│││行為・行動・反応 │ │ │h2 他者からの自律性
││└─────────┘ │ │
││文化(特殊的、局所的) │ │
│└────────────┘ │
│生体の状態(身体)      │
│ 多数の欲求、複数の動機   │
│ 欲求の優先度の階層     │
│ 無意識的な動機(根本的)  │
│ 局所的に見られた「動因」  │
└───────────────┘

(出典:wikipedia
アブラハム・マズロー(1908-1970)の命題集(Propositions of great philosophers)
「1 現実を正確に、効果的に知覚することができる。
2 自己、他者、世界を受け入れている。
3 特に、思考や情動において自発的・柔軟的で自然体である。
4 問題中心的:自分と関係のない問題でも心にかけ、幅広い視野を保つことができる。
5 孤独やプライバシーを欲する。自分自身の潜在能力や手腕を信頼できる。
6 自律性:比較的、外発的な満足に左右されない。例えば、他者からの受容や人気に動かされない。
7 たとえ非常に単純でありふれた経験に対しても、常に新鮮な認識を保つことができる(例:夕暮れ、花、他者に対して)。
8 神秘的または茫然とした感覚を体験する。そこでは、現実の時と場所を離れ、自然と一体化した感覚をもつ。
9 人類全体に対する帰属意識をもつ。
10 比較的少数の他者と非常に深い結びつきを作りあげる。
11 真に民主主義的である。すべての人に対して偏見をもたず、敬意をもつ。
12 倫理的であり、手段と結果を分けて考えることができる。
13 考え深く賢明で、敵意的でないユーモアのセンスをもつ;人間のおかれた状況を笑うが、特定の個人を笑いものにしない。
14 創造的で独創的であり、必ずしも偉大な才能をもたないが、素朴に、常に新鮮さをもってものごとに接することができる。
15 変化や改善の必要を認め、自分の住む文化からある程度の距離をおくことができる。」
(ウォルター・ミシェル(1930-2018),オズレム・アイダック,ショウダ・ユウイチ『パーソナリティ心理学』第Ⅴ部 現象学的・人間性レベル、第13章 内面へのまなざし、p.423、培風館 (2010)、黒沢香(監訳)・原島雅之(監訳))
(索引:)
「マズローは、自己実現について「自己実現を大まかに、才能、能力、可能性をじゅうぶんに用い、また開発していることと説明しておこう。このような人々は、自分自身を完成し、自分のできるかぎりの最善を尽くしているように見え、ニーチェの「汝自身たれ」という訓戒を思い起こさせる。彼らは自分たちの到達できる最も高度の状態へ達し、また発展しつつある人々である。」(『人間性の心理学』p.225)と述べ、このような基準に適うとマズローが認めた自己実現的人間のパーソナリティ特徴を記述していった。マズローの著書『人間性の心理学』によれば、その特徴とは次のようなものである。
(現実をより有効に知覚し、それと快適な関係を保つこと)
・ 抽象、期待、信念、固定観念などにとらわれず、現実を正確に知覚し、現実の世界の中に生きることができる。未知のものや不確かなことがあっても快適でいられる。
(受容)
・ 自分自身や他の人々の人間性を、欠点も含めて、ありのままに受け入れることができる。
(自発性)
・ 行動が自発的であり、内面、思考、衝動などにおいてさらに自発的である。本質的、内部的には因襲にとらわれないが、つまらないことで人を傷つけたり人と争ったりしたくないため、できるかぎりは慣習どおりに振舞う。自律的な倫理規定を持ち、その規定に照らして重要と思えることのためであれば、慣習には従わないこともある。
(問題中心的)
・ 自分自身の問題よりも、自分自身の外の問題に強い集中を示す。何らかの使命や達成すべき仕事を持っており、それらは人類一般や国家一般の利益に関わる場合が多い。
(超越性――プライバシーの欲求)
・ 孤独でいても、不快になることはなく、平均的な人々よりも孤独やプライバシーを好む。
・ 高い集中力を持ち、極度の集中によって外部環境のことを忘れたりすることがある。
・ 普通の人々からは、冷たい、俗物主義である、愛情が欠如している、友情がない、などと思われることもある。
(自律性――文化と環境からの独立)
・ 自然環境や社会環境からの独立性を持ち、名誉、地位、報酬、威信、愛、などよりも、自分自身の成長や発展のために、自分自身の可能性や潜在能力を頼みとしている。
(評価が絶えず新鮮であること)
・ 人生の基本的に必要なことを、繰り返し新鮮に、無邪気に、畏敬や喜びや恍惚感さえもって評価できる。
(神秘的経験――大洋感情)
・ 限りなく地平線が開けている感じ、エクスタシーと畏敬の感じ、非常に重要で価値あることが起こったという感じ、などを伴う経験によって力づけられている。強度の集中、無我状態、自己喪失感、自己超越感などのような、神秘的とも言える経験に至る場合もある。
(共同社会感情)
・ 人類全般に対して同一感や愛情を持っている。平均的な人々の欠点にいら立ったり、腹を立てたりしながらも、人々に同一感を感じ、人類を助けたいと真剣に願っている。
(対人関係)
・ 他者と深い結びつきを形成し、愛情、親密性、献身性を持って付き合う。そしてそれゆえに、友人の範囲はかなり狭い。
・ 偽善的でうぬぼれた尊大な人に対しては厳しい態度を持っているが、面と向かってそれを表明したりはしない。
(民主的性格構造)
・ 階級や教育程度、政治的信念、人種や皮膚の色などに関係なく誰とでも親しくできる。同じ人間だからという理由だけで、どんな人にもある程度の尊敬を払う。
・ 自分に何かを教えてくれるものを持っている人からは、その人の性質がどうであれ、何かを学ぶことができることを知っている。そのような学習関係において、外面的威厳を維持しようとしたり、地位や年齢に伴う威信などを保とうなどとはしない。自分に何かを教えてくれるものを持っている人たちを本当に尊敬し、謙虚になる。道具や技術をうまく使いこなす人たちにも尊敬をささげる。
(創造性)
・ 健康な子どもの持つ純真で普遍的な創造性と同種の創造性を持つ。特殊な才能を持つ人に見られる独自性の高い創造性ではなく、すべての人間に生まれながらに与えられた可能性のようなものであり、その人が従事している活動に何らかの影響を与える。
(価値と自己実現)
・ 自己の本質、人間性、多くの社会生活、自然や物質的現実を哲学的に受容することによって、自然に価値体系の確固たる基盤を身につけている。この価値体系の基盤によって、現実との快適な関係、社会感情、満たされた状態、手段と目的との識別などがもたらされる。
・ 平均的な人々にしみこんでいる本質的でない道徳、倫理、価値ではなく、性別や年齢による差異、身分上の差異、役割上の差異、政治的差異、宗教上の差異などを受容できる価値体系を持っている。
(自己実現における二分性の解決)
・ 情と知、理性と本能、認知と意欲、仕事と遊び、義務と喜び、成熟と子供っぽさ、親切心と残忍さ、具象と抽象、自己と社会、内向的と外向的、能動的と受動的、男性的と女性的、その他のさまざまな対立性や二分性は解消され、相互に融合し合体して統一体となっている。」
(出典:マズローの自己実現論の全体像について(石田潤,2020))
(索引:石田潤,1908-1970_アブラハム・マズロー)

※ 自己実現とは正反対のパーソナリティ特性として、自己防衛機制についても、同じ概念軸への整理を試みる。
機制 定義
抑圧 脅威となる衝動や出来事を、意識の外に追い出し、無意識にすることで、強く抑制すること。 罪悪感を生む性的願望を「忘れる」。
投影 自身の受け入れがたい側面を別の誰かに帰属させること。 自分の受け入れがたい性的衝動を上司に帰属させる。
反動形成 不安を生みだす衝動を、意識の中で、その逆のものに置き換えること。 受け入れがたい憎しみの感情を愛情に変える。
合理化 より受け入れられる原因に帰属させることで、あることを受け入れられるようにすること。 攻撃的な行為を怒りの感情ではなく、働きすぎのせいにする。
昇華 社会的に受け入れられる方法で社会的に受け入れられない衝動を表現する。 他人を傷つけたくて兵士になる;肛門願望を満足させるために配管工になる。
(ウォルター・ミシェル(1930-2018),オズレム・アイダック,ショウダ・ユウイチ『パーソナリティ心理学』第Ⅲ部 精神力動的・動機づけレベル、第9章 フロイト後の精神力動論、p.271、培風館 (2010)、黒沢香(監訳)・原島雅之(監訳))

2020年5月27日水曜日

(a)成長欲求(a1)自己実現欲求(真,善,美,躍動,必然,秩序,個性,完成,単純,完全,正義,豊富,自己充実,無礙,楽しみ,意味)(b)基本的欲求(b1)自尊心,他者による尊厳の欲求(b2)愛と集団帰属の欲求(b3)安全と安定の欲求(b4)生理的欲求(アブラハム・マズロー(1908-1970))

マズローの欲求の階層

【(a)成長欲求(a1)自己実現欲求(真,善,美,躍動,必然,秩序,個性,完成,単純,完全,正義,豊富,自己充実,無礙,楽しみ,意味)(b)基本的欲求(b1)自尊心,他者による尊厳の欲求(b2)愛と集団帰属の欲求(b3)安全と安定の欲求(b4)生理的欲求(アブラハム・マズロー(1908-1970))】

(1)成長欲求(存在価値)
 (1.1)自己実現欲求
  (a)自己の人生の最大の希望がかなえられ,自己の可能性が最高に発揮できる。
  (b)「成長欲求はすべて同等の重要さをもつ(階層的ではない)」(マズロー)
  (c)自己実現を達するための存在価値(成長欲求)のリスト
   真、善、美
   躍動、必然、秩序
   個性、完成、単純
   完全、正義、豊富
   自己充実、無礙、楽しみ
   意味
  (d)審美的欲求(ヒルガードの心理学)
    調和、秩序、美しさ
  (e)認知の欲求(ヒルガードの心理学)
    知ること、理解すること、探究すること
(2)基本的欲求(欠乏欲求)
 「成長欲求と欠乏欲求は質的相違があり,欠乏欲求が成長欲求の必要条件となる」
 (2.1)自尊心・他者による尊厳の欲求
  (a)自尊心
   自己尊重の欲求
  (b)他者による尊厳
   承認の欲求(ヒルガードの心理学)
    価値ある人間として認められたいという欲求
 (2.2)愛と集団帰属の欲求
  受け入れられること。所属すること。
 (2.3)安全と安定の欲求
  危険から保護され安全でなければならず
 (2.4)生理的欲求
  空気、水、食物、庇護、睡眠、性
(3)以下は、マズローが抽出した欲求の分類の提案である。分類は、以下の仮説に従っている。すなわち、欲求とは、想起、想像、理解された対象や、言語などで表現された予測としての未来、または構想としての未来が、快または不快の情動を喚起する状態のことである。欲求の実体は、情動である。なお、人間の場合には、情動喚起刺激の種類によって、以下のような幾つかの特徴的な情動が生じる。
 (3.1)驚き、恐怖の様相
  帰属価値:意味、真、必然、単純
  認知の欲求
  安全と安定の欲求
 (3.2)快、不快の様相
  (a)外的対象、快、嫌悪
   帰属価値:美、秩序、完全、豊富
   審美的欲求
  (b)自己状態、喜び、悲しみ
   帰属価値:善、無礙、楽しみ
   安全と安定の欲求
  (c)自己行為の自己評価、内的自己満足、後悔
   帰属価値:正義、善、自己充実、躍動、完成、個性
   自己尊重の欲求
  (d)自己行為の他者評価、誇り、恥
   帰属価値:正義、善
   承認の欲求
  (e)他者状態、喜び、憐れみ
   帰属価値:善
  (f)他者行為、好意、憤慨
   帰属価値:正義、善
  (g)自己向け他者行為、感謝、怒り
   帰属価値:正義、善
   愛と集団帰属の欲求
  (h)身体ないしその一部に関係づける知覚としての、飢え、渇き、その他の自然的欲求
   生理的欲求:空気、水、食物、庇護、睡眠、性
 (3.3)マズローの欲求の階層の新解釈
  基礎的な欲求の対象(情動の対象)から順に列挙すると、以下の通りである。
  (a)自己の身体が感知する快・不快(生理的欲求)
  (b)対象の新奇性(驚き、恐怖)と自己状態の快・不快(安全と安定の欲求)
  (c)自己向け他者行為の快・不快(愛と集団帰属の欲求)
  (d)自己行為の他者評価の快・不快(承認の欲求)
  (e)自己行為の自己評価の快・不快(自己尊重の欲求)
  (f)外的対象、他者状態、他者行為を含むすべての対象の快・不快(自己実現欲求)

(出典:wikipedia
アブラハム・マズロー(1908-1970)の命題集(Propositions of great philosophers)
 「沢は,基本的欲求の階層を 5 段階と説明したが,なぜかその階層図は 6 段階に描かれていた。すなわち,この階層図においては,自己実現の欲求が長方形で囲まれ 6段階目に位置づけられていた。このため,このモデルは初学者にとって分かりにくいものになってしまった。その基本的欲求の階層図をもとに,沢は概ね次の説明を加えた(図4)。
「マズローは,人間の欲求を 5 つに分類し,それらを段階的に並べ,より上位の欲求が満たされるためにはあらかじめその下段に位置する欲求が満たされていなければならないと述べている。第一段の生理的欲求は,生存するために必須の条件であるので,他の条件より先行している。次に必要とされるのは生命の安全と保障と保護である。私たちは生活のなかで常に危険から保護され安全でなければならず,そのことを実感している必要がある。次は愛と帰属(所属)の欲求である。どんなに衣食住の生理的欲求が満たされ安全が保障されていても,愛もしくは愛情が注がれていなければ人間は安定して平和に生活できない。次の段階の欲求は尊敬(尊重)である。私たちは家庭においても社会においても価値ある人間として認められたいという「自己尊重」もしくは「尊敬されること」を欲求しているはずである。そして,最上位の欲求として自己実現があり,これは自己の人生の最大の希望がかなえられ,自己の可能性が最高に発揮できる段階である。この段階は生涯の最大の幸せなる愛を感じ,知識に満たされることも含んでいる」16)。」
マズローの基本的欲求の階層図への原典からの新解釈(廣瀨清人,菱沼典子,印東桂子)2008年11月5日 受理 28 聖路加看護大学紀要 No.35 2009. 3.

「7 段階の階層図は『ヒルガードの心理学』に掲載されている 18)(図5)。この著作は “Atkinson & Hilgard's Introduction to Psychology”であり,初版が 1953 年に出版されて以降,現在まで 14 版を重ねており,心理学の入門書として,もっとも権威がある。原典は 2 段組で 700 ページを越える大著であるにもかかわらず,第 13 版(2002)17)と第 14 版(2005)18)がそれぞれ邦訳されている。ここでは,後者の記述に基づいて,基本的欲求の階層図を確認しておきたい。
基本的欲求の階層は,低次から高次の順に生理的欲求,安全の欲求,愛情と所属の欲求,承認の欲求,認知の欲求,審美的欲求そして自己実現欲求であった。その基本的欲求の階層図をもとに,Smith らは次の説明を加えた。
「基本的欲求の階層図は,基本的な生理的欲求から,より複雑な高次の心理的動機づけに至り,それらの高次の欲求は,より低次の欲求が満たされてはじめて重要性を持つ。ある階層の欲求が,少なくとも部分的に満足されて,はじめて,その次の階層の欲求が行動の動機づけとして意味を持つようになる。食料や安全の確保が困難な場合,それらの欲求を満たそうとする努力が,人の行動を支配して,より高次の動機は重要でなくなる。基本的欲求を容易に満足させられる場合にのみ,美的・知的欲求を満たすために,時間と努力を費やすことができる。したがって,食料,家屋や安全を確保することに人々が苦労している社会では,芸術や科学はさかんではない。もっとも高次の動機である自己実現欲求は,ほかのすべての欲求が満たされてはじめて満足できる状態になる」18)。」
マズローの基本的欲求の階層図への原典からの新解釈(廣瀨清人,菱沼典子,印東桂子)2008年11月5日 受理 28 聖路加看護大学紀要 No.35 2009. 3.

『マズローの心理学』において,基本的欲求の階層図は 5 つの欲求を含んでいた。それらは低次から高次の順に生理的(空気・水・食物・庇護・睡眠・性),安全と安定,愛・集団所属,自尊心・他者による尊厳(承認),そして自己実現であった 24)(対応する英語は順に“Physiological Air, Water, Food, Shelter, Sleep, Sex” “Safety and Security” “Love & Belongingness” “Self Esteem/Esteem by Others” “Self Actualization”であった 23)。そして,その自己実現を達するための存在価値(成長欲求)のリストが「意味」「自己充実」「無礙」「楽しみ」「豊富」「単純」「秩序」「正義」「完成」「必然」「完全」「個性」「躍動」「美」「善」「真」であった。これらの徳目は相互に分節化されないで,基本的欲求の階層図の一番上の区切りの内側に大きなスペースを与えて配置されていた(図6)。
さらに,台形の下底の外側には,基本的欲求の充足の前提条件が明記されていた。興味深いことは,基本的欲求の階層図の欄外には「成長欲求はすべて同等の重要さをもつ(階層的ではない)」24)という注が記されていた点であり,そこではマズローが発見した成長欲求のリストの間には階層関係がないことが指摘されていた。ゴーブルの著作から基本的欲求の階層のみを抜き出して要約すると次のようになる。
基本的欲求は階層をなしており,低次の欲求から高次の欲求に向かう順番に生理的欲求,安全の欲求,所属と愛の欲求,承認の欲求,そして自己実現の欲求である。原則として,より高次の欲求は,低次の欲求が満たされてはじめて重要性を持つが,しかしながら多くの例外がある。たとえば,ある人々は,他人からの愛よりも自己承認を求めようとするかもしれない。あるいは,長期にわたり失業していた人は,食料だけを探していた歳月が経過した後では,高次の欲求を喪失あるいは鈍磨されてしまっているかもしれない。そして,このような個人の動機づけと深く関連しているのは,ある個人が生きている社会のなかの環境あるいは社会的な諸条件である。マズローは,話す自由,他者に害を及ぼさないかぎりやりたいことができる自由,探 求の自由,自分自身を弁護する自由,正義,正直,公平,そして秩序を基本的欲求の満足の前提条件と当初考えていたが,その後,前提条件をもう一つ追加した。この条件が外的環境における挑戦(刺激)であった。これらの前提条件が満たされており,かつ愛と承認の欲求がある程度満たされた後に,自己実現の欲求は発生する24)。」
マズローの基本的欲求の階層図への原典からの新解釈(廣瀨清人,菱沼典子,印東桂子)2008年11月5日 受理 28 聖路加看護大学紀要 No.35 2009. 3.

まず,本図の形については,前述したように,マズローが承認したゴーブルの基本的欲求の階層図(図6)に依拠し,台形とした。
次に,基本的欲求の階層図の階層部分について,以下のように考える。マズローの欲求の階層論によると,その階層は生理的欲求,安全と安心の欲求,所属と愛の欲求,承認の欲求,自己実現の欲求から構成される。このことから,階層数を 5 つとした。その階層の面積については,高次欲求論から,この図を見ると 5 つの階層の面積に大きく差をつけることが正しいが,この図では欲求の階層理論を検討したためそれらに大きな差をつけず,自己実現の欲求のリストを階層図の右側に記した。その階層間の境界線を破線で示した理由は,これら 5 つの階層間に厳密な階層性が仮定できないことであった。そして,各階層の網掛けの意味は,「生理的欲求は 85%,安全の欲求は 70%,愛の欲求は 50%,自尊心の欲求は 40%,自己実現の欲求は 10%が充足されているのが普通の人間ではないか」9)というマズローの主張と対応したもので,図7では,その割合を各階層に網掛けで示した。高次欲求論によると,自己実現の欲求を成長欲求として,生理的欲求,安全と安心の欲求,所属と愛の欲求,承認の欲求を欠乏欲求として区別し,「成長欲求と欠乏欲求は質的相違があり,欠乏欲求が成長欲求の必要条件となる」26)と述べていることから,図7においてそれらの区別を明示した。また,ゴーブルの階層図では「成長欲求はすべて同等の重要さを持つ」24)という注記をしたが,この発言は重要と考えられるため,図7では右上に注記した。
最後に,看護学で用いられた多くの階層図で明記していなかったもので重要と考えられる基本的欲求充分の前提条件について,「自由,正義,秩序」,行動を決定する要因の「外的環境」あるいはゴーブルの著作からマズローが後に追加したとされる「外的環境の予備条件としての挑戦(刺激)」,そしてゴーブルの階層図に記された「外的環境,欲求充足の前提条件,自由・正義・秩序,挑戦(刺激)」を基に文章化し,本図では階層図の底辺の外側に記した。
マズローの基本的欲求の階層図への原典からの新解釈(廣瀨清人,菱沼典子,印東桂子)2008年11月5日 受理 28 聖路加看護大学紀要 No.35 2009. 3.

(索引:マズローの欲求の階層)

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