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2021年12月10日金曜日

民主主義は、あらゆる権利が依存する基礎であり、また、暴力なき改革を許容するから、すべての合理的な改革にかけがえのない戦場を提供する。しかし被支配者のうちにも支配者のうちにも反民主主義的傾向が潜在的に存在しており、民主主義の保護は常に闘いの最優先課題とすべきである。(カール・ポパー(1902-1994))

民主主義を守る闘い

民主主義は、あらゆる権利が依存する基礎であり、また、暴力なき改革を許容するから、すべての合理的な改革にかけがえのない戦場を提供する。しかし被支配者のうちにも支配者のうちにも反民主主義的傾向が潜在的に存在しており、民主主義の保護は常に闘いの最優先課題とすべきである。(カール・ポパー(1902-1994))


(a)多数者支配は民主主義の本質ではない
 普通選挙制度が最も重要であるとはいえ、民主主義は多数者の支配として完全に性格づ けられうるものではない。なぜなら多数者が専制政治的に支配することもありうるからである。
(b)民主主義かどうかの認定規準
 支配者、政府を、流血の惨事なしに非支配者によって解職できること。これが民主主義の本質であり、民主主義と専制政治の区別が最も本質的である。それゆえ、権力の座にある者が、平和的変革運動の可能性を少数者に保証する諸制 度を保護しないならば、彼らの支配は専制政治なのである。
(c) 民主主義的憲法の改正限界
 整合的な民主主義的憲法は、法体系の変革のうち一つのものだけは、すなわち、憲法の民主主義的性格を危険にさらすであろうような変革だけは排除すべきである。 
(d)寛容の限界
 民主主義の暴力的転覆を他人に教唆するような者たちに、保護される権利は存在しない。
(e)民主主義を保護する制度
 民主主義を保護すべき諸制度をたてる政策は、いつでも、被支配者のうちにも支配者のうちにも反民主主義的傾向が潜在的に存在しているという仮定に基づいて進められねばならな い。 
(f)経済的諸利益が依存するもの
 民主主義が破壊されるならば、すべての権利が破壊されることになる。万一、被支配者が或る種の経済的諸利益を享受しているなら、それらは黙許によってのみ存続しているのであ ろう。
(g)全ての闘いにおいて民主主義の維持が最優先である
 民主主義は、暴力なき改革を許容するから、すべての合理的な改革にかけがえのない戦場を提供する。しかし、この戦場で戦われるすべての個別的戦闘において民主主義の維持が第 一に考慮されないならば、その時には、常に存在している潜在的な反民主主義的傾向は、民主主義の崩壊をもたらすであろう。



「私がこの批判の基礎としているのは、民主主義は主要な諸政党の諸機能についての次のよ うな見解を固守する時にのみ機能しえるという主張である。その見解は以下の如き若干の規則 として要約できるであろう。  1、普通選挙制度が最も重要であるとはいえ、民主主義は多数者の支配として完全に性格づ けられうるものではない。なぜなら多数者が専制政治的に支配することもありうるからである (身丈6フィート以下の者は多数者を構成するが、これら多数者は身丈6フィート以上の者は全 員税金を支払うようにと決定するかもしれない)。民主主義においては、支配者の権力は制限 されねばならない。そして、民主主義〔であるか否か〕の認定規準は、民主主義下であるなら ば、支配者――すなわち政府――は、流血の惨事なしに非支配者によって解職されうる、というこ とである。それゆえ、権力の座にある者が、平和的変革運動の可能性を少数者に保証する諸制 度を保護しないならば、彼らの支配は専制政治なのである。  2、二つの統治形態、つまり、この種の諸制度を有する統治形態とそうでない一切の統治形 態、すなわち、民主主義と専制政治だけを区別する必要がある。  3、整合的な民主主義的憲法は法体系の変革のうち一つのものだけは、すなわち、憲法の民 主主義的性格を危険にさらすであろうような変革だけは排除すべきである。  4、民主主義においては、少数者の完全な保護が、法を暴力で破壊するような者たち、なか んずく、民主主義の暴力的転覆を他人に教唆するような者たちにまで拡張されるようなことが あってはならない。  5、民主主義を保護すべき諸制度をたてる政策は、いつでも、被支配者のうちにも支配者の うちにも反民主主義的傾向が潜在的に存在しているという仮定に基づいて進められねばならな い。  6、民主主義が破壊されるならば、すべての権利が破壊されることになる。万一、被支配者が或る種の経済的諸利益を享受しているなら、それらは黙許によってのみ存続しているのであ ろう。  7、民主主義は、暴力なき改革を許容するから、すべての合理的な改革にかけがえのない戦 場を提供する。しかし、この戦場で戦われるすべての個別的戦闘において民主主義の維持が第 一に考慮されないならば、その時には、常に存在している潜在的な反民主主義的傾向(これは また、われわれが第10章で文明の圧迫と名付けたものから苦しみを受けている人々に訴えるも のである)は、民主主義の崩壊をもたらすであろう。これら諸原則についての理解がまだ発展 させられていないならば、その発展が闘いとられねばならない。これと正反対の政策は致命的 であることが明らかになろう。すなわち、その政策は最も肝要な戦闘、民主主義それ自体のた めの戦闘の敗北をもたらすであろう。」
 (カール・ポパー(1902-1994),『開かれた社会とその敵』,第2部 予言の大潮――ヘーゲル、 マルクスとその余波,第19章 社会革命,第5節,pp.150-151,未来社(1980),内田詔夫(訳), 小河原誠(訳))


カール・ポパー
(1902-1994)








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