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2018年6月3日日曜日

魂は、もともと多くの概念や知識の諸原理を有しており、外界の対象が機会に応じてのみ、それらを呼び起こす。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

魂の中にあるものの由来

【魂は、もともと多くの概念や知識の諸原理を有しており、外界の対象が機会に応じてのみ、それらを呼び起こす。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
 魂についての、二つの考え方。私は(b)の立場をとる。なぜなら、数学者たちの言う「共通概念」や必然的真理など、何かしら神的で永遠なものの由来が、外的な感覚や経験のみであるとは思われないからである。
(a) まだ何も書かれていない書字板(tabula rasa)のように、まったく空白で、魂に記される一切のものは感覚と経験のみに由来する。
(b) 魂は、もともと多くの概念や知識の諸原理を有しており、外界の対象が機会に応じてのみ、それらを呼び起こす。
 「われわれ二人の見解の相違は、かなり重要な諸テーマについてである。それは次の問題に関わる。魂それ自体は、アリストテレスや『知性論』の著者のいうような、まだ何も書かれていない書字板(tabula rasa)のように、まったく空白なのか。そして魂に記される一切のものは感覚と経験のみに由来するか。それとも、魂はもともと多くの概念や知識の諸原理を有し、外界の対象が機会に応じてのみ、それらを呼び起こすのか。私は後者の立場をとる。プラトンやスコラ派さえそうであり、「神の掟は人の心に書き記されている」(ローマの信徒への手紙二・一五)、という聖パウロの一節をこの意味に解しているすべての人々がそうである。ストアの哲学者たちはこれらの原理をプロレープシスと呼んだ。すなわち根本的仮定、予め前提されている事柄である。数学者たちはそれらを「共通概念」(コイナイ・エンノイアイ)と呼ぶ。現代の哲学者たちは別の美しい名前をつけている。とくにユリウス・スカリゲルはそれらの原理を「永遠の種子」(Zophyra)と名づけていた。いわば「生ける火」、「閃光」であり、われわれの内部に隠れているが、感覚に接触すると現われ、衝撃を与えると火器から飛び出る火花のようなものだ。このような輝きは、とりわけ必然的真理において現われる神的で永遠な何ものかを示している、とわれわれが思うのも、理由なきことではない。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『人間知性新論』序文、ライプニッツ著作集4、pp.14-15、[谷川多佳子・福島清紀・岡部英男・1993])
(索引:魂の中にあるものの由来)

認識論『人間知性新論』 (ライプニッツ著作集)


(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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2018年5月28日月曜日

全宇宙を表出する魂は、その襞が無限に及んでおり、自分の襞を一挙にすっかり開いてみることはできない。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

無限の襞

【全宇宙を表出する魂は、その襞が無限に及んでおり、自分の襞を一挙にすっかり開いてみることはできない。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
 どの物体も、宇宙の中で起こることすべてを、時間的、場所的に遠くはなれているものをも、何らかの観点からすべて現在において感知し表出する。しかし魂は、自分の襞を一挙にすっかり開いてみることはできない。なぜなら、その襞は無限に及んでおり、魂が自分自身のうちに読み取ることができるのは、そこに判明に表現されているものだけだからである。
 「そこで、どの物体も宇宙の中で起こることをすべて感知するから、なんでも見える人があれば、どの物体の中にもあらゆる所でいま起こっていることだけではなく、いままでに起こったことやこれから起こるであろうことさえも、読み取ることができるであろう。つまり、時間的、場所的に遠くはなれているものを、現在の中に認めることができることになろう。「スベテガ共ニ呼吸ヲシテイル」とヒポクラテスは言った。しかし、魂が自分自身のうちに読み取ることができるのは、そこに判明に表現されているものだけである。魂は自分の襞を一挙にすっかり開いてみることはできない。その襞は無限に及んでいるからである。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『モナドロジー』六一、ライプニッツ著作集9、pp.231-232、[西谷裕作・1989])
(索引:表出、魂、無限の襞の喩え)

ライプニッツ著作集 (9)


(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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