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2021年11月25日木曜日

「心」が量子状態に影響を及ぼすという証拠はない。また、量子的な非決定性が自由意志の本質とも思えない。行為を決定している何らかの意味での現在の心の状態を、何らかの意味での「心」が変えることができるとき、はじめて真の自由意志と言える。 (ポール・デイヴィス(1946-))

 自由意志

「心」が量子状態に影響を及ぼすという証拠はない。また、量子的な非決定性が自由意志の本質とも思えない。行為を決定している何らかの意味での現在の心の状態を、何らかの意味での「心」が変えることができるとき、はじめて真の自由意志と言える。 (ポール・デイヴィス(1946-))


「心が、逆に、量子的な頭脳に反作用を及ぼし、偶然の釣り合いを傾けることができるかどうかに関し (ESP実験を除いて)起こるという証拠は存在しません。 量子的なわずかな効果を増幅し て、頭脳が使うことのできるような水準の電気信号を作ることができることを示す必要があるのです。 たとえ、心が頭脳に働きかけることができたとしても、それがほんとうの自由意志になるのか、また 自由意志に意味があるのかさえ、明らかではありません。もし心自身が非量子的で決定論的なら、心 がある行為をするために頭脳を使おうと決めたとき、 なぜ心が一連の特定の行動に入ってくるのか、 その正当性を見いだす必要があります。行動を開始させる精神状態は過去の心の状態と頭脳が心に及 ぼす影響力によって完全に決まっているので、心は、自分のことは何も支配していない、 ニュートン のたんなる自動機械となります。その行動はまったく過去と現在の出来事の帰結なのです。 もし、逆 に、心が量子系のように非決定的なら、心はでたらめな揺らぎ (制御できない気紛れ)に従い、任意 性がその決定に忍び込んできます。 いずれにしても、伝統的な自由意志の概念に近いものだとは思え ません。もし心が過去の心の状態を変えることができ、 それによって未来のみならず、現在をも変え ることができたなら、はじめて真の自由意志となるでしょう。 そのとき、それ自身を含んで、自由意志が欲する、いかなる宇宙を構成することも自由であり、無限に、それを破壊し、構築することも 可能となります。もちろん、エヴェレットの多宇宙理論では、ある意味でこのようことが起こりま すが、意志の自由性はまったく幻想です。可能な世界はすべて現実に起こり、心り返し分裂して 莫大な数の世界に分布します。 心はそれぞれその運命を支配していると思っていが、運命はすべ て実際に平行して達成されているのです。」

(ポール・デイヴィス(1946-),『他の世界』(日本語書籍名『宇宙の量子論』),第10章 超時間,pp.294-295,地人書館,1985,木口勝義)


【中古】 宇宙の量子論 /ポール・C.W.デーヴィス(著者),木口勝義(著者) 【中古】afb






過去・未来の非対称性は、実際には秩序が無秩序に崩壊する一方的な傾向に根ざしている。すなわち、観測者としての私たちの存在が、原子秩序に基づいて過去と未来の間の鋭い区別を与えるような適正な宇宙配置にあるという事実に、微妙に依存している。(ポール・デイヴィス(1946-))

人間の宇宙における配置

過去・未来の非対称性は、実際には秩序が無秩序に崩壊する一方的な傾向に根ざしている。すなわち、観測者としての私たちの存在が、原始秩序に基づいて過去と未来の間の鋭い区別を与えるような適正な宇宙配置にあるという事実に、微妙に依存している。(ポール・デイヴィス(1946-))

「過去・未来の非対称性は実際には秩序が無秩序に崩壊する一方的な傾向に根ざしています。しかし、 その非対称性は宇宙論的な起源をもっていると思われます。宇宙の秩序は究極的にどこから出てくる かを説明し、したがって過去と未来の差異を明らかにするためには、宇宙の創成 ビッグ・バン を考える必要があります。 原始の熱炉から出てきた宇宙構造は高度に秩序だったものでした。 そ の後の宇宙の働きはすべて、 この秩序を消費し、散逸することでした。 多くの秩序が残っています。 しかし、それらは永久に続きはしません。 太陽や恒星の働きを支配する秩序は宇宙の生命にとって非 常に重要なものです。その秩序は初期の宇宙が主として水素とヘリウムからできていることを保証し た原子核過程に由来します。宇宙初期の膨張速度が非常に速く、初期段階で宇宙物質を重元素まで調 理する暇がないため、このような特徴が生じます。これは宇宙物質がかなり均一で、ビッグバン直 後、ブラック・ホールがあまりできないことにも依存しています。したがって、ここでもまた、宇宙 の生命、そして観測者としての私たちの存在が適正な宇宙配置に、つまり原始秩序―─生物におい て複雑性の頂点に達する秩序──に基づいて過去と未来のあいだに鋭い差別を与えているものに、いかに微妙に依存しているかが発見されるのです。」

(ポール・デイヴィス(1946-),『他の世界』(日本語書籍名『宇宙の量子論』),第10章 超時間,pp.302-303,地人書館,1985,木口勝義)

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決まっていないから未来であるという直感があるが、時間を逆転しても非決定である。準備し実験し解析するという、実験結果を釘どめする人間の知的な超構造が、過去と未来の非対称性をもたらす。そしてそれは、私たちの近傍で進む熱力学過程による世界の非対称性の作用である。(ポール・デイヴィス(1946-))

過去と未来の非対称性の由来

決まっていないから未来であるという直感があるが、時間を逆転しても非決定である。準備し実験し解析するという、実験結果を釘どめする人間の知的な超構造が、過去と未来の非対称性をもたらす。そしてそれは、私たちの近傍で進む熱力学過程による世界の非対称性の作用である。(ポール・デイヴィス(1946-))

(a)非決定性、未来、存在
 a→b、bがaにより決まらないということは、まさにそれだけの意味であり、決まらないから未来だとか、決まらないから存在しないとは言えない。

(b)時間を逆転しても非決定

 (i)通常の実験
  始めに量子状態を用意(確定した状態)して、結果(未確定状態)を測定する。
 (ii)逆転実験
  いくつかの結果(確定状態)を集め、その初期状態を推測する。時間的に枠組全体を反転し、さまざまな質問を行ない、いろいろな結果を解析すると、未来ではなく、過去が非決定的になる。
(c)過去・未 来の非対称性は実験結果を釘どめする知的な超構造である
 実験室実験には、実際の実験とならんで、準備段階と解析段階がある。この枠組がすでに結果の 解釈に過去未来の非対称性を課している。


「実際は、このような考え方は厳密な検討に耐えることができません。 未来が非決であるという事実は必ずしも未来が存在しないことを意味しているわけではありません。 それはたんに、未来は現 在に隷属して出てくるわけではない、ということにすぎません。 さらに、未来は非決定的だが、過去 は具体的であるとみなす事実は、実際に実験を行ない、結果をまとめる方法と密接に関連しています。 実験室実験には、実際の実験とならんで、準備段階と解析段階があります。 この枠組がすでに結果の 解釈に過去未来の非対称性を課しているのです。 実際、始めに量子状態を用意して結果を測定する かわりに、逆のことを行なう、つまり、おおまかに言えば、一組の逆転実験を行なうこともできます。 つまり、いくつかの結果を集め、その初期状態を推測するのです。時間的に枠組全体を反転し、さま ざまな質問を行ない、いろいろな結果を解析すると、未来ではなく、過去が非決定的になります(こ の体系では、エヴェレットの分枝は、未来ではなく、過去に向かって扇形に広がります。したがって、 世界は、分裂ではなく、融合していきます)。したがって、量子的な非決定性の過去と未来の立場の 相違は固有のものではなく、それに関与するものに対する私たちの態度の反映となります。 過去・未 来の非対称性は実験結果を釘どめする知的な超構造です。 それは、逆に、私たちのまわりで進む熱力 学過程による世界の非対称性の本来の作用です。 それゆえ、ここでもまた、未来が「現われてくる」 時という印象は世界が時間的に一方向きであることに基づく幻想であるように思われます。それは、時間の運動による本当の効果ではないのです。」

(ポール・デイヴィス(1946-),『他の世界』(日本語書籍名『宇宙の量子論』),第10章 超時間,pp.292-293,地人書館,1985,木口勝義)


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2021年11月24日水曜日

物理学の基礎的な法則には、過去と未来の区別がなく、また「現在」というものの明確な定義も難しい。一見、量子論における重ね合わせの量子状態から、観測による実在への確定が、時間の方向と現在を定義し得るように思わられるが、うまくいかない。(ポール・デイヴィス(1946-))

過去、現在、未来とは?

物理学の基礎的な法則には、過去と未来の区別がなく、また「現在」というものの明確な定義も難しい。一見、量子論における重ね合わせの量子状態から、観測による実在への確定が、時間の方向と現在を定義し得るように思われるが、うまくいかない。(ポール・デイヴィス(1946-))


 「これらの意見はすべて、明らかに正しいのですが、何かが欠けているという不満足感が深く残ります。実際、時の流れや今の存在をうちたてるため、何かそれ以外の要素を見つけたい、という要求に物理学者は何年間も悩まされ続けてきました。 答を求めて、ある人は宇宙論に、ある人は量子論に移 りました。 まず量子論の非決定性が一つの可能性を与えているように思えます。 もし未来がいまだ偶 然の釣り合いの中にあるなら、未来はある意味で現在や過去ほど実在のものではないかもしれないか らです。未来が現われてくるという印象を量子的な重ね合わせの実在への崩壊と比較した物理学者も いました。量子崩壊の過程は本質的に時間的に非対称(つまり、不可逆)であることが知られており、したがって記憶と同じような特徴をもっているのです。この点に従うと、 現在はほんとうの現象です。 それは、たとえば、 シャレーディンガーの猫が生きているのか死んでいる を見いだすのような、世界から現実に変化する瞬間です。 それはある種の現在を定義す るのです。このような考え方が自由意志を示すためにも使われてきました。 」

(ポール・デイヴィス(1946-),『他の世界』(日本語書籍名『宇宙の量子論』),第10章 超時間,pp.291-292,地人書館,1985,木口勝義)


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実在は、前もって用意した測定や観測の文脈の中でしか意味を持たない。また、少なくとも観測がなされる前は、対象系と観測装置は不可分の統一体とみなされる。例えば、二つの遠く離れた偏光装置とそのそれぞれの光子は、量子過程によって不可解に結びつけられている。(ポール・デイヴィス(1946-))

対象系と観測装置の不可分性、全体性

実在は、前もって用意した測定や観測の文脈の中でしか意味を持たない。また、少なくとも観測がなされる前は、対象系と観測装置は不可分の統一体とみなされる。例えば、二つの遠く離れた偏光装置とそのそれぞれの光子は、量子過程によって不可解に結びつけられている。(ポール・デイヴィス(1946-))

「光子と偏光装置のような、遠くはなれた系をふつうの通信手段によって結ぶことはできません。 しかし、それらを別々のものと考えることもできません。 たとえ二つの偏光装置がちがった銀河系に あったとしても、それらは必然的に一つの実験配置をなしているのであって、したがって、それが一 つの実在なのです。 常識的な世界観では、二つのものが遠くはなれ、互いの影響を無視できるとき、 それらを区別されたものとみなします。 たとえば、二人の人や、二つの惑星はそれぞれが独自の性質 をもつ異なるものであるとみなされます。 これとは対照的に、 量子理論の示すところでは、少なくと も観測がなされる前は、 そこで考えている系は物事の集合体とはみなされず、不可分の統一体とみな されるのです。このように、二つの遠く離れた偏光装置とそのそれぞれの光子は、実際には、独立な 性質をもつ二つの孤立した系ではなく、量子過程によって不可解に結びつけられているのです。 観測 がなされた後はじめて、遠くはなれた光子は別々の自己同一性を得、 独立の存在であるとみなされま す。さらに、ここまで見てきたように、正確な実験配置を指定しないで、素粒子系に性質を指定する ことはまったく無意味です。 測定前、光子は「ほんとうに」 かくかくしかじかの偏りをもっている、ということはできません。したがって、 光子の偏りを光子自身の性質とみなすことは不正確です。む しろ、それは光子と巨視的な実験配置の両方に対して指定されなければならない属性なのです。 この ように、微視的な世界は、私たちが経験する巨視的な世界と性質を共有することによって、その性質 をもつにすぎないのです。」

(ポール・デイヴィス(1946-),『他の世界』(日本語書籍名『宇宙の量子論』),第6章 実在の本質,pp.188-189,地人書館,1985,木口勝義)


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量子的な確率分布は実在そのものではなく可能な宇宙を表現し、観測過程によって初めて実在化する。とは言え、けっして実現されることのなかった世界すべてが、素粒子過程すべての確率を制御し、実在化した世界はこれらの過程に依存しているのである。(ポール・デイヴィス(1946-))

量子的な確率分布の実在性

量子的な確率分布は実在そのものではなく可能な宇宙を表現し、観測過程によって初めて実在化する。とは言え、けっして実現されることのなかった世界すべてが、素粒子過程すべての確率を制御し、実在化した世界はこれらの過程に依存しているのである。(ポール・デイヴィス(1946-))

 「前の章で、私たちの観測する世界は無限次元の超空間 のいろいろな世界の巨大な総体の断片 であり、影である、と説明しました。ここで、私たちが観測する世界はたんに超空間からでたらめに 選ばれたものではなく、目に見えない他の世界すべてに決定的に依存していることがわかりました。 二つのはなれた偏光装置のあいだの「真」 - 「偽」の相関は「真」の世界と「偽」の世界のあいだの干渉に本質的に依存しています。ちょうどこれと同じように、あらゆる異なった相互作用に、あらゆる 遠くはなれた原子に、あらゆるマイクロ秒に、けっして実現されることのなかった世界すべてが、私 たち自身の世界の中で、素粒子過程すべての確率を制御し、その推定上の実在の影を落とすのです。 超空間の他の世界がなかったなら、量子は成立せず、宇宙は崩壊するでしょう。すなわち、これら無数の実在に対する競争者が私たち自身の運命を操っているのです。 」

(ポール・デイヴィス(1946-),『他の世界』(日本語書籍名『宇宙の量子論』),第6章 実在の本質,p.184,地人書館,1985,木口勝義)


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実在は、前もって用意した測定や観測の文脈の中でしか意味を持たない。唯一の実在は、素粒子と測定装置と実験家を合わせ た全系だ。実験家は、実験を選ぶことにより、 どれが可能な世界になるかを、選び変えたことになる。(ポール・デイヴィス(1946-))

 量子論における観測

実在は、前もって用意した測定や観測の文脈の中でしか意味を持たない。唯一の実在は、素粒子と測定装置と実験家を合わせ た全系だ。実験家は、実験を選ぶことにより、 どれが可能な世界になるかを、選び変えたことになる。(ポール・デイヴィス(1946-))

「この考え方に従うと、実在は前もって用意した測定や観測の文脈の中で意味をもつにすぎません。 一般に、電子や光子や原子は、私たちが測定を行なうまえ、ほんとうにかくかくしかじかのように振 舞っていた、と述べることは不可能です。もし実験家がたとえば偏光装置を回転しようとしたなら、彼は別の世界を選ぶことになります。したがって、唯一の実在は素粒子と測定装置と実験家を合わせ た全系です。 ポラロイド (偏光サングラスをかけた人は、首を動かすことに、 超空間内のどの世 界を選ぶかを組み換えているのです。 彼は南北の光子の世界を創るかどうか、東西の光子の世界 を創るかどうか、 その他好みのどのような光子の世界でも、それを創るかどうかを選ぶことができるのです。

 実在には非常に基本的な点で観測者が含まれることになります。すなわち、実験を選ぶことにより、 実験家は選択肢をどう組むかを決めることができるのです。 彼が心を変えたとき、彼はどれが可能な 世界になるかを選び変えたのです。いろいろな世界は確率法則に従って現われるので、もちろん、実験家は望みの世界を間違いなく取り出すことは不可能です。 しかし、実験家は何を選ぶことができる かについて影響力を行使することができます。 簡単に言うと、私たちはサイコロを振ることはできま せんが、どのゲームを行なうかは決めることができるのです。

(ポール・デイヴィス(1946-),『他の世界』(日本語書籍名『宇宙の量子論』),第6章 実在の本質,pp.184-185,地人書館,1985,木口勝義)

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