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2021年11月27日土曜日

いずれどんな実験も我々を先導できなくなると、よく言われるが、これは間違っている。素粒子の質量は、なぜその数値なのか。それは説明されるはずのものではないのか。多くの実験事実はすでに集められており、それらに対して納得のいく理論を作るだけの想像 力が欠けている。(リチャード・ファインマン(1918-1988))

質量の由来

いずれどんな実験も我々を先導できなくなると、よく言われるが、これは間違っている。素粒子の質量は、なぜその数値なのか。それは説明されるはずのものではないのか。多くの実験事実はすでに集められており、それらに対して納得のいく理論を作るだけの想像 力が欠けている。(リチャード・ファインマン(1918-1988))







「ついには、どんな実験もわれわれを先導できないというけれども、それは正しくない。 二十四かそこ いらの、正確な数値は知らないが、神秘の数値が質量に付随している。なぜミュー粒子の質量は電子の 正確に二〇六倍なのか、その数値は何でもいいが、なぜクォークなどさまざまな粒子の質量がそういっ た値をもつのか? これらの数値あるいはそれに類したものは、二ダースちょっとあるが、ストリング 理論ではその理由が説明されていない。まったく説明されない。現時点では私の聞く限りどんな数学的 構造によっても、これらの質量がなぜその値をとるのかについての鍵を与える一つの着想もない。

 つまり、多くの実験事実はすでに集められており、それらに対して納得のいく理論を作るだけの想像 力が欠けているのです。そこから私たちは研究を始めるべきなのだ。それが真の問題をかかえる場所で あり、実験的数値をチェックできるところなのだ。そのデーターを使えばどんな理論もたやすく排除で きる。現在までにはよい理論は一つもなかった。この数値を見る限り、それはまったくでたらめで無茶 苦茶だ。そこに何か一定の様式があるようには見えない。それが理論物理学の問題で、 ストリング理論 はそれに対して手も足も出ない。」

(ポール・デイヴィス(1946-),ジュリアン・ブラウン(編集),『スーパーストリング』,9  リチャード・ファインマン(1918-1988),p.241,紀伊國屋書店,1990,出口修至)




ストリング理論の美しさは、それが量子重力の局所的因果的理論であるという点にある。すなわち、ストリングは、有限な大きさにもかかわらず、相互作用は、ストリング全体ではなく、点でのみ起こり(局所性)、空間的に離れた事象は互いに影響しない(因果性)。 (アブダス・サラム(1926-1996))

量子重力の局所的因果的理論

ストリング理論の美しさは、それが量子重力の局所的因果的理論であるという点にある。すなわち、ストリングは、有限な大きさにもかかわらず、相互作用は、ストリング全体ではなく、点でのみ起こり(局所性)、空間的に離れた事象は互いに影響しない(因果性)。 (アブダス・サラム(1926-1996))







「サラム

 点状の粒子を有限な大きさをもつもので置きかえるのです。つまりおよそ10 -33センチの有限の大 きさを持つストリングを考える。

 ストリングの理論はボーアの好んだ10 -33センチの有限な基本的長さを提供するのです。これが有限な長 さであるにもかかわらず、理論はそれでも局所的なのです。これは信じられないことです。

———

どういう意味で局所的なのですか?

サラム 

因果律が保たれているという意味で局所的なのです。 空間的に離れたところにある事象は互い に影響しないのです。

ストリング理論の美しさは、広がったものを扱っているにもかかわらず、ストリングの相互作用は点でのみ起こる。 ストリング全体で起こるわけではないのです。 ストリングはその広がりの一点でだけ 分離したりくっついたりするし、ストリングが接触すると一点で接触するのです。 これがその局所性の 秘密なのです。

———

つまり、ストリングは単に物質粒子のモデルであるというだけでなく、これら粒子が互いに作用し合う その仕方に関するモデルでもあると考えるべきなのですね。

サラム 

そうです。この観点から見れば、ストリングが物理学のすべてを説明するかどうかは二次的問 題だといえる。 ストリングは十年以上にわたり研究されている。しかしその熱狂的推進者たちですら理 論のこの独特な長所、つまりそれが量子重力の局所的因果的理論であるという点を強調すらしない。」

(ポール・デイヴィス(1946-),ジュリアン・ブラウン(編集),『スーパーストリング』,7  アブダス・サラム(1926-1996),p.210,紀伊國屋書店,1990,出口修至)



もちろん、理論の正しさは様々な計算の結果と実験との比較による一致である。しかし、ストリング理論の不満は、その概念上の枠組が正しくつかまれていないように思われることだ。一般相対論が、幾つかの諸原理から不可避的に湧出するように、基礎的な概念上の枠組みから自然に理解される時、それが達成されると思う。(エドワード・ウィッテン(1951-))

 概念上の枠組みの理解

もちろん、理論の正しさは様々な計算の結果と実験との比較による一致である。しかし、ストリング理論の不満は、その概念上の枠組が正しくつかまれていないように思われることだ。一般相対論が、幾つかの諸原理から不可避的に湧出するように、基礎的な概念上の枠組みから自然に理解される時、それが達成されると思う。(エドワード・ウィッテン(1951-))








「現在の理論がかかえる主要な問題は何であると思いますか? 

ウィテン 

私が物理学者となった目的は、物事がいかに秩序だっているかを学びたかったのですが、さ らに世界がいかに働いているか、その原理を理解したかったからでもあります。 以前に述べたように物 理学の本質は概念を発見することなのです。 現在ストリングの理論を不満足なものにしている主要な原 因は、多くの著しい特徴があり多くの素晴らしい発見がなされてきたにもかかわらず、その概念上の枠 組が正しくつかまれていないことです。それは一般相対論の幾何学についても同様なことがいえます。 私たちが最も発展できそうに見えるのは、ストリングの理論が基づく論理的枠組を明らかにすることで す。その問題は、何年もの間、解かれないままになっています。

 一般相対論は、それが基づく原理から不可避的に湧出するものです。 重力の理論を幾何学に基づいて 作り上げることを認め、かつ、特殊相対論を理解し、いくつかの一般原理を物理学の用語を用いて図式 的に表現すると(たとえばアインシュタインの名高いエレベーター実験など)、その概念をつかむやい なや数式が導かれる。 数式はこれらの概念を完全に具体化したものです。それを改良するのは難しい。 私たちの期待するものはストリング理論の中にあります。私たちが何にもまして見つけようとしてい るものは、そのような概念上の枠組であって、それがあってこそストリングの理論は、相対性理論と同 じような自然さを備えるでありましょう。 世界が基づくべき概念を発見することが、物理学者となった 目的であるからこそ、ともかくこれを見つけたいのです。また、ストリング理論が何であるかを正しく理解することは、私たちがやってみたい計算をするには必須であるからこそ、正しい概念上の枠組を見 つけたいのです。ストリング理論を使って、素粒子の質量や作用常数、寿命、相互作用、あらゆる種類 の過程の起こる確率などを計算したい。そのような計算をし、実験と比較することによってのみ、理論 が正しいかどうかを知ることができるのです。

 しかし、理論は大まかにしか理解されておらず、その基礎が正しく理解されていないかもしれず、そ うだとすると、これらの計算を行なうことは難しい。論理的枠組を理解することは、知的にもおそらく 実際的にも十分見合うことだと思っています。 もし願いがかなうならば、物理学のこの問題こそ私が何 らかの進歩をさせたいと思っているものです。」

(ポール・デイヴィス(1946-),ジュリアン・ブラウン(編集),『スーパーストリング』,3 エドワード・ウィッテン(1951-),pp.120-121,紀伊國屋書店,1990,出口修至)




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