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2021年12月30日木曜日

基本的権利の主張が有意味な主張となるのは、人間の尊厳と政治的平等の目的のために、当の権利が必要であると主張される場合である。すなわち権利の侵害は、人間を人間以下のもの、または他の人々よりも配慮に値しな いものとして扱うことを意味する。(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013))

権利と人間の尊敬、政治的平等

基本的権利の主張が有意味な主張となるのは、人間の尊厳と政治的平等の目的のために、当の権利が必要であると主張される場合である。すなわち権利の侵害は、人間を人間以下のもの、または他の人々よりも配慮に値しな いものとして扱うことを意味する。(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013))


(a)人間の尊厳
 人間社会の完全な成員として認めることと矛盾するような人間の扱い方が存在 すると想定され、かかる扱い方は著しく正義に反する。
(b)政治的平等
 政治社会の弱者も、その社会の強者が自らのために獲得したのと同じ配慮と尊重を、公権力から受ける資格がある。その結果、ある者が決定の自由を有している場合には、公益に対する影響がどうであれ、すべての者に同じ自由が認められねばならない。
(c)例として、表現の自由
 表現の自由が基本的権利であると主張される場合、これが有意味な主張となるのは、人間の尊厳、配慮や尊重を平等に受ける資格などの人格的価値を保護する目的のために、当の権利が必要であると主張される場合である。すなわち権利の侵害は、人間を人間以下のもの、または他の人々よりも配慮に値しな いものとして扱うことを意味する。


「権利を深刻に受けとめるべきであると公言し、権利が尊重されていることを理由としてア メリカの統治機構を称賛する者は、その重要な目的が何であるかについてある種の感覚を有し ていなければならない。彼は、少なくとも二つの重要な理念のいずれか一方、または両者を受 け容れなければならない。第一の理念は、人間の尊厳という漠然としてはいるが力強い理念で あり、これはカントを連想させるが、異なった学派の哲学者達によって擁護されている。この 理念によれば、人間社会の完全な成員として認めることと矛盾するような人間の扱い方が存在 すると想定され、かかる扱い方は著しく正義に反するものとされる。  第二の理念は、政治的平等という人口に膾炙した理念である。これは政治社会の弱者も、そ の社会の強者が自らのために獲得したのと同じ配慮と尊重を公権力から受ける資格があること を前提とし、その結果ある者が、公益に対する影響がどうであれ、決定の自由を有している場 合には、すべての者に同じ自由が認められねばならないとされる。私は、これらの理念をここ で擁護したり、詳細に論じるつもりはないが、市民が権利を有していると主張する者は、これ らの理念にきわめて近い考え方を受け容れなければならない、という点だけを主張しておきた い。  人は表現の自由のように強い意味での基本的権利を公権力に対し有する、と主張される場 合、これが有意味な主張となるのは人間の尊厳、配慮や尊重を平等に受ける資格その他同様の 重みをもつ人格的価値を保護するために当の権利が必要である場合であり、そうでない場合に は権利を有するという主張は意味のないものとなる。  そこで、もし権利が意味あるものであるならば、比較的重要な権利の侵害はきわめて重大な ことになるにちがいない。それは人間を人間以下のもの、または他の人々よりも配慮に値しな いものとして扱うことを意味する。権利の制度は、このような扱いが重大な不正義であり、そ れを防止するためには社会政策ないし効率上更に増加コストが必要であるにしても、このよう なコストを支払う価値があるという確信に基づいている。しかしこの場合、権利を拡張するこ とが権利を侵害することと同じ程度に重大である、と考えることは誤りであろう。公権力が個 人に有利な形で誤りを犯す場合には、社会的効率のために本来支払うべきものより若干多くの ものを支払うだけのことである。すなわち公権力としては支出すべきことが既に決定されてい た当の金額に若干プラスしたものを支払うだけのことである。しかし、もし公権力が個人に不 利な形で誤りを犯す場合には、個人に対し侮辱を与えることになり、したがって公権力はそれ を回避するために自らの計算に基づいて多額の経費を費やす必要があるのである。」
 (ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013),『権利論』,第6章 権利の尊重,3 議論の余地ある権 利,木鐸社(2003),pp.264-265,木下毅(訳),野坂泰司(訳),小林公(訳))

権利論増補版 [ ロナルド・ドゥウォーキン ]



ロナルド・ドゥオーキン
(1931-2013)

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