生命の自律性、予測不可能性
生命が持つ二つ目の重要な性質は、自律性である。生命も、物理的法則に従っているにもかかわらず、その運動は予測不可能である。この予測不 可能性は、カオス的もしくは無秩序なプロセスの予測不可能性とはまったく異なる。(ポール・デイヴィス(1946-))
「生物が持つ二つ目の重要な性質は、自律性である。生物は、文字通り、それ自体の命を持っており、 独り歩きをする。生物も、ほかのすべての物質系と同じさまざまな物理的な力の影響を受けるが、生物 はこれらの力を制御して、意図したことを行うことができる。これがどういうことかをはっきりさせる には、単純な例をひとつ挙げれば十分であろう。死んだ鳥を空中に投げても、それは単純な幾何学的経 路を辿って、予想したとおりの場所に落ちるだけだ。だが、生きた鳥を空に放てば、その鳥がどのよう な経路で飛ぶのかも、どこに降り立つのかも、予測するのは不可能だ。重要なのは、この生物の予測不 可能性は、サイコロ投げや、激流の渦の運命のように、カオス的、もしくは無秩序なプロセスの予測不 可能性とはまったく異なるという点だ。 鳥の飛行経路は、鳥が持つ遺伝的性質や神経学的な状態によっても形づくられているのである。 」
(ポール・デイヴィス(1946-),『ゴルディロックスの謎』(日本語書籍名『幸運な宇宙』),第10章 どうして存在するのか,p.390,日経BP社,2008,吉田三知世)