世界は、ただ在る
「世界は起こるのではなく、ただ在る。」(ヘルマン・ワイル(1885-1955))
「最良の答えは、因果関係の否定である。原因と結果は、人間的状況の中での本質的に人間的な概念であるが、 せいぜいのところ、物理の世界の中で構造の崩壊に関連して時間指向的な相互作用を表現 する、それ自体(九四ページで注意したように)純粋に人間的な概念である。 宇宙は全体的現象として 眺めねばならない。 ドイツの数学者ワイル(1885-1955)が言ったように、「世界は起こるので はなく、ただ在る」のである。 ある未知の運命に向かって注意深く整えられたコースを走るべく、宇宙がスタートするいわれはない。むしろ世界は、複雑な存在のネットワークの中で過去から未来へ、 場所から場所へ、事象から事象へと拡がっている、時空と物質と相互作用そのものなのである。」
(ポール・デイヴィス(1946-),『宇宙における時間と空間』,第7章 宇宙の中の人間,pp.250-251,岩波現代選書,1980,戸田盛和,田中裕)