2026年8月28日金曜日

010必ずわかる難問題6

   ★010必ずわかる難問題6

前回の復習の後

どうすれば金儲けできるかという話し。(4.2)を詳細に説明する。

さらに追加。現在の富裕層が、どのように儲かる仕組み作りをしているのかを理解します。


★(1)効率的な市場

 市場において個々人が自己利益を最大化させることで、全体の社会的利益を最大化させることができる。

★(2)市場の失敗

 市場は、独力で効率的な結果を生み出せない。すなわち、以下の諸原因により、個々人が社会にもたらす利益と個人的報酬が等しくなくなり、全体の社会的利益を最大化させることができなくなる。

★ 市場の失敗の原因

★(2.1)競争が不完全なとき。

★(2.2)情報の不完全性や情報の非対称性が存在するとき。

市場取引に関する情報を、誰かが持っている一方で、他の誰かが持っていない状況。

★(2.3)外部性が働いているとき。

ひとつの集団の行動によって、正もしくは負の影響が他に及ぶ可能性があるものの、集団が正の影響から利益を得ることも、負の影響の代償を支払うこともない状況。

★(2.4)リスク市場が存在しないとき たとえば、直面する重大なリスクの多くに対して、保険をかけることができない状況。


★(3)政府の役割

(3.1)政府は、税金と規制にかんする制度設計を通じて、個人のインセンティブと、社会的利益を同調させる必要がある。

(3.2)重大な市場の失敗に対して、納得できる矯正作業を政府が行なわないかぎり、経済の繁栄は望めないだろう。

★(4)2つの考え方

★(4.1)みんなの幸せを考える。全体の社会的利益を最大化させようとするには、政府の適切な矯正作業が必要である。

★(4.2)私だけ、儲かれば良い。社会に対する貢献以上の個人的報酬を獲得しようとするには、政府の規制は少ないほうが都合がいい。

★「事業家たちが重視するのは、社会の繁栄とは何かを広く知らしめることでもなければ、市場の競争性を高めることでもない。彼らの目的は、“自分に都合よく”市場を機能させ、より大きな利潤を手にすることだけだ。しかし、これらの行為はたいていの場合、経済の効率性を低下させ、不平等を拡大させる結果に終わる。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.80-82,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))


★(4.2.1)レントシーキング

★「地代(レント)という用語はもともと、土地からあがる収益を指していた。地主は地代を得るために、何かを“行なう”必要はなく、ただ土地を所有しているだけでいい。この状況は、“努力”の提供とひきかえに資金を得る労働者と対照的だ。やがて“レント”は地代の意味だけでなく、独占状態を管理することで得る利益(独占利益もしくはモノポリー・レントと呼ばれる)という意味を含むようになり、さらには、所有権から生まれる同じような収益を全般的に指すようになった。★たとえば、政府が一企業に砂糖の独占輸入権(輸入割当(クオータ))を与えた場合、権利の所有によって生み出される余分な収益は、“クオータ・レント”と呼ばれる。★天然資源に恵まれた国々は、レントシーキングが活発なことで知られている。資源へのアクセス権を有利な条件で入手すれば、みずから富を創出するより、はるかにたやすく財産を築き上げることができるからだ。(中略)★世界の不平等大国の中には、名だたる資源大国がふくまれている。このような国では、少数の人々(たいていは政治権力を持つ人々)が、ほかの人々より上手にレントシーキングを行い、資源から生じる利益の大部分を確保してしまう。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.85-87,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳)


★(a)市場の競争性を低下させ、独占力を確保する。(独占利益(モノポリー・レント))

 (a.1)参入障壁や、競争の障壁を構築する。

 (a.2)政府に、市場の競争性を低下させる法律を、作らせる。

★(b)市場の透明性を低下させ、情報の非対称性を利用する。

(i)例として、公開市場ではなく店頭市場を利用し、買い手には必要な情報を与えず、取引を有利に進める。

★「好んで使われるのは、市場の透明性を低下させる手法だ。透明性が高まれば高まるほど、市場における競争は激しくなりやすい。銀行家たちはこの事実を知っている。だからこそ銀行業界は、〈AIG〉の没落の中心的役割を果たした危険な金融商品、デリバティブの引き受け事業を展開するにあたって、不透明な“店頭市場”での取引を必死に守りつづけたのだ。★店頭市場では、良い取引と悪い取引を消費者が見極めるのは難しい。透明性の高い現代の公開市場とは対照的に、店頭市場ではすべてが交渉で決まる。売り手が絶え間なく取引を行なう一方、買い手はたまにしか市場を訪れないため、売り手は買い手よりも多くの情報を持ち、その情報を使って取引を有利に進める。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.80-82,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))

(b.2)略奪的貸付や濫用的クレジットカード業務。

★「最も悪名高いレントシーキングの形態――近年になって最もみがきのかかった手法――は、金融界が略奪的貸付や濫用的クレジットカード業務を通じて、貧困者層と情報弱者層から大金を搾り取るというものだ。貧困者のひとりひとりはそれほど金を持っていなくても、大勢の貧困者から少しずつ巻き上げれば、莫大な儲けを手に入れることができる。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))


★(c)政府からの、公然または非公然の資源移転と、補助金給付。

(c.1)政府から、天然資源へのアクセス権を有利な条件で入手する。

(c.2)政府から、独占輸入権(輸入割当(クオータ))を与えられる。

(c.3)政府から、コストを社会に転嫁することを許される。

(c.4)過剰なリスクを取ったことによる失敗の損失を、政府に補填してもらう。


★(4.2.2)儲けている人の考え方


★「近代資本主義は複雑なゲームと化しており、少し頭が切れるくらいでは勝者になれないが、多くの場合、勝者は感心できない特性を持ち合せている。法律をかいくぐる能力や、法律を都合よくねじ曲げる能力や、貧困者をふくむ他人の弱味につけ込む意志や、必要とあれば”アンフェア”なプレーをする意志だ。★このゲームで成功している達人のひとりは、「勝負は問題ではない。重要なのはどうプレーするかだ」という昔の金言をたわごとと切り捨てる。重要なのは勝つか負けるかだけなのだ。市場は勝ち負けの基準をはっきりと示してくれる。持っている金の量だ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))


★(4.2.3)レントシーキングに都合の悪い法律が作られないようにする。政府の規制は少ない方がいい。

(a)ロビー活動と選挙支援に巨額の資金を投資することで、政策決定に影響力を行使する。

(b)反競争的行為が法律で禁止されないようにする。

(c)仮に法律が存在する場合は、実効的な取り締まりが行なわれないようする。


★(4.2.4)税制を、自分に都合のよいものに変える。

(a)ロビー活動と選挙支援に巨額の資金を投資することで、税制の設計に影響力を行使する。

(b)実態が隠蔽できるような複雑さを持った“逆累進課税制度”を実現させる。


★「レントシーキングのゲームに勝利して、アメリカ最上層の多くの人々は財を築いてきた。しかし、富を獲得する方法はレントシーキングだけではない。あとでくわしく説明するが、税制も重要な役割を担っている。最上層の人々は、税制の設計に影響力を行使し、払うべき税金を払わずにすませてきた。彼らの所得に占める税金の割合は、貧困層の人々より低いのである。わたしたちはこのような税制を“逆累進課税制度”と呼ぶ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))


★(4.2.5)労働法や会社法を、自分に都合のよいものに誘導する。


★(4.2.6)政府のマクロ経済政策を、自分に都合のよいものに誘導する。


★「中間層の空洞化と貧困層の増加――には、幅広い分野から強い影響力が加えられている。企業を律する法規は、企業内の規範と相互作用を起こし、経営者の行動を誘導するとともに、経営陣とほかの利害関係者(労働者と株主と社債保有者)の利益配分を決定する。★また、政府のマクロ経済政策は、労働市場の需給――失業率の水準――を決定する。つまり、労働者の取り分を変化させる市場の仕組みに、政府の政策が影響を与えているわけだ。もしもインフレを恐れる金融当局の行動が、失業率の高止まりを招いた場合、労働者の賃金は抑制されるだろう。★これまで、強い労働組合は不平等の縮小をうながしてきたが、組合が弱い企業のCEOは、やすやすと不平等を拡大してきた。CEOたちが市場の力の形成に手を貸し、その力を不平等の拡大に利用することもあった。ともあれ、組合の強弱にしても、企業統治の実効性にしても、金融政策の舵取りにしても、決定に中心的役割を果たすのは政治だ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))




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