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2022年4月3日日曜日

情動に関係のある脳領域は、様々な内臓器官、代謝、免疫系の機能を維持するために必要なエネルギーの需給を予測し管理する身体予算管理領域と、心臓、 肺、腎臓、皮膚、筋肉、血管などの器官や組織の変化を予測し内受容刺激と突き合わせ内受容感覚を生み出す一次内受容皮質とから構成される。(リサ・フェルドマン・バレット(1963-))

内受容ネットワーク

情動に関係のある脳領域は、様々な内臓器官、代謝、免疫系の機能を維持するために必要なエネルギーの需給を予測し管理する身体予算管理領域と、心臓、 肺、腎臓、皮膚、筋肉、血管などの器官や組織の変化を予測し内受容刺激と突き合わせ内受容感覚を生み出す一次内受容皮質とから構成される。(リサ・フェルドマン・バレット(1963-))


(a) 身体予算管理領域
 身体に予測を送る一連の脳領域である。我々はこれを「身体予算管理領域 (body-budgeting regions)」と呼ん でいる。
 (i)エネルギーは、様々な内臓器官、代謝、免疫系の機能を維持するために使われる。 
 (ii)すべての消費や補給を管理するために、脳はつねに、身体の予算を立てるかの ごとく、身体のエネルギー需要を予測しなければならない。
 (iii)身体予算管理領域が心拍数の高 まりなどの運動の変化を予測する。

(b)一次内受容皮質
 もう一方の部位は、体内の感覚刺激を表現する「一次内受容皮質」と呼ばれる領域から成る。
 (i)胸の高鳴りなど の感覚の変化を予測する。このような感覚予測は「内受容予測」と呼ばれる。
 (ii)心臓、 肺、腎臓、皮膚、筋肉、血管などの器官や組織から感覚入力を受け取る。 
 (iii)一次内受容皮質のニューロ ンは、シミュレーションの結果と感覚入力を比べ、予測エラーがあればそれを計算して予測ループを 完結させ、最終的に内受容刺激を生み出す。

「議論をすっきりさせるために、独自の役割を担う二つの一般的な部位から成るものとして、内受容ネットワークを考えよう。 一方の部位は、心拍を速める、呼吸のペースを落とす、多量のコルチゾー ルを分泌する、グルコースの代謝を高めるなどして、体内の環境をコントロールするために身体に予 測を送る一連の脳領域である。われわれはこれを「身体予算管理領域 (body-budgeting regions)」と呼ん でいる。もう一方の部位は、体内の感覚刺激を表現する「一次内受容皮質」と呼ばれる領域から成る。 内受容ネットワークの二つの部位は、予測ループに関与している。身体予算管理領域が心拍数の高 まりなどの運動の変化を予測するたびに、二つの部位は、それによってもたらされる胸の高鳴りなど の感覚の変化も予測する。このような感覚予測は「内受容予測」と呼ばれ、一次内受容皮質に入って そこで通常どおりシミュレートされる。 一次内受容皮質はまた、所定の処理を行なうあいだ、 心臓、 肺、腎臓、皮膚、筋肉、血管などの器官や組織から感覚入力を受け取る。 一次内受容皮質のニューロ ンは、シミュレーションの結果と感覚入力を比べ、予測エラーがあればそれを計算して予測ループを 完結させ、最終的に内受容刺激を生み出す。
 身体予算管理領域は、生存に重要な役割を果たす。 脳が、内部であろうが外部であろうが身体のい かなる部位を動かすときにも、ある程度のエネルギー資源が消費される。エネルギーは、さまざまな 内臓器官、代謝、免疫系の機能を維持するために使われる。 身体資源は、食べる、飲む、眠ることで 補給され、また身体のエネルギー消費量は、近しい人々とリラックスすることで (セックスすることで も) 低減する。これらすべての消費や補給を管理するために、脳はつねに、身体の予算を立てるかの ごとく、身体のエネルギー需要を予測しなければならない。そのために、企業が会社全体の予算運用 のバランスを保つべく、預金や引き出し、あるいは口座間での資金の移動を管理する経理課を設置しているように、脳は身体の予算管理の責任を負う神経回路を設置している。この神経回路は、内受容ネットワーク内に存在する。かくして身体予算管理領域は、過去の経験を指針として予測を行ない、 無事に生きていくのに必要な資源の量を見積もるのだ。
 なぜそれが情動と関係するのか? なぜなら、人間の情動の拠点とされている脳領域はすべて、 内 受容ネットワーク内の身体予算管理領域でもあるからだ。しかしこの領域は、情動の生成という形態 で反応するのではない。そもそも反応するのではなく、身体予算を調節するために予測する。 視覚、 聴覚、思考、記憶、想像、そしてもちろん情動に関する予測を行なうのだ。 情動を司る脳領域という 考えは、反応する脳という時代遅れの信念に基づく幻想と見なせる。 今日の神経科学者はその点をわ きまえているが、そのメッセージは、心理学者、精神科医、社会学者、経済学者、あるいはその他の 情動の研究者の多くには伝わっていない。」

(リサ・フェルドマン・バレット(1963-),『情動はこうしてつくられる』,第4章 情動の指源泉,pp.119-122,紀伊國屋書店 ,2019,高橋洋(訳))

情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論 [ リサ・フェルドマン・バレット ]




リサ・フェルドマン・
バレット(1963-)




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