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2020年7月28日火曜日

自己実現的人間のパーソナリティ特徴の例:偏見,先入見からの自由/現実の受容/不確かさへの志向/新鮮な評価/創造性/神秘的経験,大洋感情/自律的な価値体系/他者の多様な価値体系の受容/プライバシーの欲求/他者からの自律性(アブラハム・マズロー(1908-1970))

自己実現的人間のパーソナリティ特徴

【自己実現的人間のパーソナリティ特徴の例:偏見,先入見からの自由/現実の受容/不確かさへの志向/新鮮な評価/創造性/神秘的経験,大洋感情/自律的な価値体系/他者の多様な価値体系の受容/プライバシーの欲求/他者からの自律性(アブラハム・マズロー(1908-1970))】

自己実現的人間のパーソナリティ特徴(アブラハム・マズロー(1908-1970))
 (a)受け継がれてきた文化の受け容れ(真理、価値)
  (a.1)問題中心的
   (i)自分と関係のない問題でも心にかけ、幅広い視野を保つことができる。
   (ii)何らかの使命や達成すべき仕事を持っており、それらは人類一般や国家一般の利益に関わる場合が多い。
   (iii)人類全体に対する帰属意識をもつ。
  (a.2)共同社会感情
   (i)人類全般に対して同一感や愛情を持っている。平均的な人々の欠点にいら立ったり、腹を立てたりしながらも、人々に同一感を感じ、人類を助けたいと真剣に願っている。
  (a.3)対人関係
   (i)他者と深い結びつきを形成し、愛情、親密性、献身性を持って付き合う。そしてそれゆえに、友人の範囲はかなり狭い。
   (ii)偽善的でうぬぼれた尊大な人に対しては厳しい態度を持っているが、面と向かってそれを表明したりはしない。
  (a.4)民主的性格構造
   (i)階級や教育程度、政治的信念、人種や皮膚の色などに関係なく誰とでも親しくできる。同じ人間だからという理由だけで、どんな人にもある程度の尊敬を払う。
   (ii)学習関係において、外面的威厳を維持しようとしたり、地位や年齢に伴う威信などを保とうなどとはしない。自分に何かを教えてくれるものを持っている人たちを本当に尊敬し、謙虚になる。道具や技術をうまく使いこなす人たちにも尊敬をささげる。
  (a.5)文化からの自律性
   (i)変化や改善の必要を認め、自分の住む文化からある程度の距離をおくことができる。
   (ii)本質的、内部的には因襲にとらわれないが、つまらないことで人を傷つけたり人と争ったりしたくないため、できるかぎりは慣習どおりに振舞う。

 (b)真理は、経験と理性によって認識することができる
  (b.1)偏見、先入見からの自由
   (i)抽象、期待、信念、固定観念などにとらわれず、現実を正確に知覚し、現実の世界の中に生きることができる。
   (ii)正反対のパーソナリティ特性は、自己防衛機制の「合理化」である。より受け入れられる原因に帰属させることで、あることを受け入れられるようにすること。
  (b.2)現実の受容
   (i)自己、他者、世界を受け入れている。自分自身や他の人々の人間性を、欠点も含めて、ありのままに受け入れることができる。
   (ii)考え深く賢明で、敵意的でないユーモアのセンスをもつ;人間のおかれた状況を笑うが、特定の個人を笑いものにしない。
   (iii)正反対のパーソナリティ特性は、自己防衛機制の「投影」である。 自身の受け入れがたい側面を別の誰かに帰属させること。
  (b.3)不確かさへの志向
   未知のものや不確かなことがあっても快適でいられる。

 (c)自己の情念は概ね頼りになる
  (c.1)自己の情動の自然な受容
   (i)思考や情動において自発的・柔軟的で自然体である。
   (ii)正反対のパーソナリティ特性は、自己防衛機制の「抑圧」である。脅威となる衝動や出来事を、意識の外に追い出し、無意識にすることで、強く抑制すること。
   (iii)また、自己防衛機制の「反動形成」も正反対のパーソナリティ特性である。不安を生みだす衝動を、意識の中で、その逆のものに置き換えること。
  (c.2)絶えず新鮮な評価
   (i)たとえ非常に単純でありふれた経験に対しても、常に新鮮な認識を保つことができる(例:夕暮れ、花、他者に対して)。
   (ii)人生の基本的に必要なことを、繰り返し新鮮に、無邪気に、畏敬や喜びや恍惚感さえもって評価できる。
  (c.3)創造性
   (i)健康な子どもの持つ純真で普遍的な創造性と同種の創造性を持つ。
   (ii)創造的で独創的であり、必ずしも偉大な才能をもたないが、素朴に、常に新鮮さをもってものごとに接することができる。
  (c.4)神秘的経験、大洋感情
   (i)限りなく地平線が開けている感じ、エクスタシーと畏敬の感じ、非常に重要で価値あることが起こったという感じ、などを伴う経験によって力づけられている。
   (ii)強度の集中、無我状態、自己喪失感、自己超越感などのような、神秘的とも言える経験に至る場合もある。

 (d)自己の情念に従うことの是非
  (d.1)自己実現における二分性の解決
   情と知、理性と本能、認知と意欲、仕事と遊び、義務と喜び、成熟と子供っぽさ、親切心と残忍さ、具象と抽象、自己と社会、内向的と外向的、能動的と受動的、男性的と女性的、その他のさまざまな対立性や二分性は解消され、相互に融合し合体して統一体となっている。

 (e)価値も、経験と理性により認識できる
  (e.1)自律的な価値体系
   (i)自己の本質、人間性、多くの社会生活、自然や物質的現実を哲学的に受容することによって、自然に価値体系の確固たる基盤を身につけている。
   (ii)この価値体系の基盤によって、現実との快適な関係、社会感情、満たされた状態、手段と目的との識別などがもたらされる。
   (iii)自律的な倫理規定を持ち、その規定に照らして重要と思えることのためであれば、慣習には従わないこともある。
   (iv)正反対のパーソナリティ特性は自己防衛機制の「昇華」である。社会的に受け入れられる方法で社会的に受け入れられない衝動を表現する。
  (e.2)多様な価値体系の受容
   性別や年齢による差異、身分上の差異、役割上の差異、政治的差異、宗教上の差異などを受容できる価値体系を持っている。

 (f)私たちに依存するものと、依存しないものを区別すること
 (g)意志の自由の存在
 (h)意志決定に伴う情動
  (h.1)超越性、プライバシーの欲求
   (i)孤独やプライバシーを欲する。自分自身の潜在能力や手腕を信頼できる。
   (ii)高い集中力を持ち、極度の集中によって外部環境のことを忘れたりすることがある。
   (iii)比較的少数の他者と非常に深い結びつきを作りあげる。
   (iv)普通の人々からは、冷たい、俗物主義である、愛情が欠如している、友情がない、などと思われることもある。
  (h.2)他者からの自律性
   (i)比較的、外発的な満足に左右されない。例えば、他者からの受容や人気に動かされない。
   (ii)自然環境や社会環境からの独立性を持ち、名誉、地位、報酬、威信、愛、などよりも、自分自身の成長や発展のために、自分自身の可能性や潜在能力を頼みとしている。

《概念図》
┌───────────────┐
│┌────────────┐ │
││┌─────────┐ │ │
│││引き継がれた文化 ← │ │文化
│││ 諸事実・真理  → │ │a1 問題中心的
│││ 諸価値・芸術  │ │ │a2 共同社会感情
│││         │ │ │a3 対人関係
│││         │ │ │a4 民主的性格構造
│││         │ │ │a5 文化からの自律性
│││意識的な動機←─┐│ │ │意識的な動機
│││ 究極目的   ││ │ │e1 自律的な価値体系
│││  ↓     ││ │ │e2 多様な価値体系の受容
│││ 部分目標   ││ │ │
│││  └───┐ ││ │ │
│││      │情動←── │情動
│││      │ │ ─→ │c1 自己の情動の自然な受容
│││      │ ││ │ │c2 絶えず新鮮な評価
│││      │←┤│ │ │c3 創造性
│││      │ ││ │ │c4 神秘的経験、大洋感情
│││環境(状況)←─┤│ │ │環境(状況)
│││ 過去・現在│ ││ │ │b1 偏見、先入見からの自由
│││ 予測・規範│←┘│ │ │b2 現実の受容
│││  │┌──┘  │ │ │b3 不確かさへの志向
│││  ↓↓ 分離的←─── │
│││意志決定 特殊的 │ │ │d1 自己実現における二分性の解決
│││計画││ 反応  │ │ │意志決定
│││ ↓↓↓ ↓   │ │ │h1 超越性、プライバシーの欲求
│││行為・行動・反応 │ │ │h2 他者からの自律性
││└─────────┘ │ │
││文化(特殊的、局所的) │ │
│└────────────┘ │
│生体の状態(身体)      │
│ 多数の欲求、複数の動機   │
│ 欲求の優先度の階層     │
│ 無意識的な動機(根本的)  │
│ 局所的に見られた「動因」  │
└───────────────┘

(出典:wikipedia
アブラハム・マズロー(1908-1970)の命題集(Propositions of great philosophers)
「1 現実を正確に、効果的に知覚することができる。
2 自己、他者、世界を受け入れている。
3 特に、思考や情動において自発的・柔軟的で自然体である。
4 問題中心的:自分と関係のない問題でも心にかけ、幅広い視野を保つことができる。
5 孤独やプライバシーを欲する。自分自身の潜在能力や手腕を信頼できる。
6 自律性:比較的、外発的な満足に左右されない。例えば、他者からの受容や人気に動かされない。
7 たとえ非常に単純でありふれた経験に対しても、常に新鮮な認識を保つことができる(例:夕暮れ、花、他者に対して)。
8 神秘的または茫然とした感覚を体験する。そこでは、現実の時と場所を離れ、自然と一体化した感覚をもつ。
9 人類全体に対する帰属意識をもつ。
10 比較的少数の他者と非常に深い結びつきを作りあげる。
11 真に民主主義的である。すべての人に対して偏見をもたず、敬意をもつ。
12 倫理的であり、手段と結果を分けて考えることができる。
13 考え深く賢明で、敵意的でないユーモアのセンスをもつ;人間のおかれた状況を笑うが、特定の個人を笑いものにしない。
14 創造的で独創的であり、必ずしも偉大な才能をもたないが、素朴に、常に新鮮さをもってものごとに接することができる。
15 変化や改善の必要を認め、自分の住む文化からある程度の距離をおくことができる。」
(ウォルター・ミシェル(1930-2018),オズレム・アイダック,ショウダ・ユウイチ『パーソナリティ心理学』第Ⅴ部 現象学的・人間性レベル、第13章 内面へのまなざし、p.423、培風館 (2010)、黒沢香(監訳)・原島雅之(監訳))
(索引:)
「マズローは、自己実現について「自己実現を大まかに、才能、能力、可能性をじゅうぶんに用い、また開発していることと説明しておこう。このような人々は、自分自身を完成し、自分のできるかぎりの最善を尽くしているように見え、ニーチェの「汝自身たれ」という訓戒を思い起こさせる。彼らは自分たちの到達できる最も高度の状態へ達し、また発展しつつある人々である。」(『人間性の心理学』p.225)と述べ、このような基準に適うとマズローが認めた自己実現的人間のパーソナリティ特徴を記述していった。マズローの著書『人間性の心理学』によれば、その特徴とは次のようなものである。
(現実をより有効に知覚し、それと快適な関係を保つこと)
・ 抽象、期待、信念、固定観念などにとらわれず、現実を正確に知覚し、現実の世界の中に生きることができる。未知のものや不確かなことがあっても快適でいられる。
(受容)
・ 自分自身や他の人々の人間性を、欠点も含めて、ありのままに受け入れることができる。
(自発性)
・ 行動が自発的であり、内面、思考、衝動などにおいてさらに自発的である。本質的、内部的には因襲にとらわれないが、つまらないことで人を傷つけたり人と争ったりしたくないため、できるかぎりは慣習どおりに振舞う。自律的な倫理規定を持ち、その規定に照らして重要と思えることのためであれば、慣習には従わないこともある。
(問題中心的)
・ 自分自身の問題よりも、自分自身の外の問題に強い集中を示す。何らかの使命や達成すべき仕事を持っており、それらは人類一般や国家一般の利益に関わる場合が多い。
(超越性――プライバシーの欲求)
・ 孤独でいても、不快になることはなく、平均的な人々よりも孤独やプライバシーを好む。
・ 高い集中力を持ち、極度の集中によって外部環境のことを忘れたりすることがある。
・ 普通の人々からは、冷たい、俗物主義である、愛情が欠如している、友情がない、などと思われることもある。
(自律性――文化と環境からの独立)
・ 自然環境や社会環境からの独立性を持ち、名誉、地位、報酬、威信、愛、などよりも、自分自身の成長や発展のために、自分自身の可能性や潜在能力を頼みとしている。
(評価が絶えず新鮮であること)
・ 人生の基本的に必要なことを、繰り返し新鮮に、無邪気に、畏敬や喜びや恍惚感さえもって評価できる。
(神秘的経験――大洋感情)
・ 限りなく地平線が開けている感じ、エクスタシーと畏敬の感じ、非常に重要で価値あることが起こったという感じ、などを伴う経験によって力づけられている。強度の集中、無我状態、自己喪失感、自己超越感などのような、神秘的とも言える経験に至る場合もある。
(共同社会感情)
・ 人類全般に対して同一感や愛情を持っている。平均的な人々の欠点にいら立ったり、腹を立てたりしながらも、人々に同一感を感じ、人類を助けたいと真剣に願っている。
(対人関係)
・ 他者と深い結びつきを形成し、愛情、親密性、献身性を持って付き合う。そしてそれゆえに、友人の範囲はかなり狭い。
・ 偽善的でうぬぼれた尊大な人に対しては厳しい態度を持っているが、面と向かってそれを表明したりはしない。
(民主的性格構造)
・ 階級や教育程度、政治的信念、人種や皮膚の色などに関係なく誰とでも親しくできる。同じ人間だからという理由だけで、どんな人にもある程度の尊敬を払う。
・ 自分に何かを教えてくれるものを持っている人からは、その人の性質がどうであれ、何かを学ぶことができることを知っている。そのような学習関係において、外面的威厳を維持しようとしたり、地位や年齢に伴う威信などを保とうなどとはしない。自分に何かを教えてくれるものを持っている人たちを本当に尊敬し、謙虚になる。道具や技術をうまく使いこなす人たちにも尊敬をささげる。
(創造性)
・ 健康な子どもの持つ純真で普遍的な創造性と同種の創造性を持つ。特殊な才能を持つ人に見られる独自性の高い創造性ではなく、すべての人間に生まれながらに与えられた可能性のようなものであり、その人が従事している活動に何らかの影響を与える。
(価値と自己実現)
・ 自己の本質、人間性、多くの社会生活、自然や物質的現実を哲学的に受容することによって、自然に価値体系の確固たる基盤を身につけている。この価値体系の基盤によって、現実との快適な関係、社会感情、満たされた状態、手段と目的との識別などがもたらされる。
・ 平均的な人々にしみこんでいる本質的でない道徳、倫理、価値ではなく、性別や年齢による差異、身分上の差異、役割上の差異、政治的差異、宗教上の差異などを受容できる価値体系を持っている。
(自己実現における二分性の解決)
・ 情と知、理性と本能、認知と意欲、仕事と遊び、義務と喜び、成熟と子供っぽさ、親切心と残忍さ、具象と抽象、自己と社会、内向的と外向的、能動的と受動的、男性的と女性的、その他のさまざまな対立性や二分性は解消され、相互に融合し合体して統一体となっている。」
(出典:マズローの自己実現論の全体像について(石田潤,2020))
(索引:石田潤,1908-1970_アブラハム・マズロー)

※ 自己実現とは正反対のパーソナリティ特性として、自己防衛機制についても、同じ概念軸への整理を試みる。
機制 定義
抑圧 脅威となる衝動や出来事を、意識の外に追い出し、無意識にすることで、強く抑制すること。 罪悪感を生む性的願望を「忘れる」。
投影 自身の受け入れがたい側面を別の誰かに帰属させること。 自分の受け入れがたい性的衝動を上司に帰属させる。
反動形成 不安を生みだす衝動を、意識の中で、その逆のものに置き換えること。 受け入れがたい憎しみの感情を愛情に変える。
合理化 より受け入れられる原因に帰属させることで、あることを受け入れられるようにすること。 攻撃的な行為を怒りの感情ではなく、働きすぎのせいにする。
昇華 社会的に受け入れられる方法で社会的に受け入れられない衝動を表現する。 他人を傷つけたくて兵士になる;肛門願望を満足させるために配管工になる。
(ウォルター・ミシェル(1930-2018),オズレム・アイダック,ショウダ・ユウイチ『パーソナリティ心理学』第Ⅲ部 精神力動的・動機づけレベル、第9章 フロイト後の精神力動論、p.271、培風館 (2010)、黒沢香(監訳)・原島雅之(監訳))

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