★010必ずわかる難問題6
前回の復習の後
どうすれば金儲けできるかという話し。(4.2)を詳細に説明する。
さらに追加。現在の富裕層が、どのように儲かる仕組み作りをしているのかを理解します。
★(1)効率的な市場
市場において個々人が自己利益を最大化させることで、全体の社会的利益を最大化させることができる。
★(2)市場の失敗
市場は、独力で効率的な結果を生み出せない。すなわち、以下の諸原因により、個々人が社会にもたらす利益と個人的報酬が等しくなくなり、全体の社会的利益を最大化させることができなくなる。
★ 市場の失敗の原因
【(a)不完全な競争、(b)情報の不完全性、非対称性、(c)外部性の働き、(d)リスク市場の非存在によって、市場の失敗が発生する。高い効率性と繁栄のためには、政府による適切な矯正作業が必要である。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-))】
★(2.1)競争が不完全なとき。
(2.2)情報の不完全性や情報の非対称性が存在するとき。
市場取引に関する情報を、誰かが持っている一方で、他の誰かが持っていない状況。
★(2.3)外部性が働いているとき。
ひとつの集団の行動によって、正もしくは負の影響が他に及ぶ可能性があるものの、集団が正の影響から利益を得ることも、負の影響の代償を支払うこともない状況。
★(2.4)リスク市場が存在しないとき
たとえば、直面する重大なリスクの多くに対して、保険をかけることができない状況。
★(3)政府の役割
(3.1)政府は、税金と規制にかんする制度設計を通じて、個人のインセンティブと、社会的利益を同調させる必要がある。
(3.2)重大な市場の失敗に対して、納得できる矯正作業を政府が行なわないかぎり、経済の繁栄は望めないだろう。
★(4)2つの考え方
(4.1)みんなの幸せを考える。全体の社会的利益を最大化させようとするには、政府の適切な矯正作業が必要である。
★(4.2)私だけ、儲かれば良い。社会に対する貢献以上の個人的報酬を獲得しようとするには、政府の規制は少ないほうが都合がいい。
【社会に対する貢献以上の報酬を得る方法:(a)参入障壁の構築と独占の維持、(b)競争障壁の構築、(c)市場の透明性を低下させること、(d)これら反競争的行為が規制されないための政治的対策。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-))】
★「事業家たちが重視するのは、社会の繁栄とは何かを広く知らしめることでもなければ、市場の競争性を高めることでもない。彼らの目的は、“自分に都合よく”市場を機能させ、より大きな利潤を手にすることだけだ。しかし、これらの行為はたいていの場合、経済の効率性を低下させ、不平等を拡大させる結果に終わる。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.80-82,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.1)儲けを大きくするために、市場の競争性を低下させ、独占力を確保すること。
(i)参入障壁や、競争の障壁を構築する。
(ii)反競争的行為が法律で禁止されないように対策する。
(iii)仮に法律が存在する場合は、実効的な取り締まりが行なわれないよう対策する。
★(4.2.2)市場の透明性を低下させる。
(i)例として、公開市場ではなく店頭市場を利用し、買い手には必要な情報を与えず、取引を有利に進める。
★「好んで使われるのは、市場の透明性を低下させる手法だ。透明性が高まれば高まるほど、市場における競争は激しくなりやすい。銀行家たちはこの事実を知っている。だからこそ銀行業界は、〈AIG〉の没落の中心的役割を果たした危険な金融商品、デリバティブの引き受け事業を展開するにあたって、不透明な“店頭市場”での取引を必死に守りつづけたのだ。店頭市場では、良い取引と悪い取引を消費者が見極めるのは難しい。透明性の高い現代の公開市場とは対照的に、店頭市場ではすべてが交渉で決まる。売り手が絶え間なく取引を行なう一方、買い手はたまにしか市場を訪れないため、売り手は買い手よりも多くの情報を持ち、その情報を使って取引を有利に進める。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.80-82,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.3)儲けている人の考え方
★「近代資本主義は複雑なゲームと化しており、少し頭が切れるくらいでは勝者になれないが、多くの場合、勝者は感心できない特性を持ち合せている。法律をかいくぐる能力や、法律を都合よくねじ曲げる能力や、貧困者をふくむ他人の弱味につけ込む意志や、必要とあれば”アンフェア”なプレーをする意志だ。このゲームで成功している達人のひとりは、「勝負は問題ではない。重要なのはどうプレーするかだ」という昔の金言をたわごとと切り捨てる。重要なのは勝つか負けるかだけなのだ。市場は勝ち負けの基準をはっきりと示してくれる。持っている金の量だ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.4)レントシーキング
★(a)市場の競争性を低下させ、独占力を確保する。
(a.1)参入障壁や、競争の障壁を構築する。
★(b)市場の透明性を低下させ、情報の非対称性を利用する。
(b.1)公開市場ではなく店頭市場を利用し、買い手に必要な情報を与えず、取引を有利に進める。
(b.2)略奪的貸付や濫用的クレジットカード業務。
★「最も悪名高いレントシーキングの形態――近年になって最もみがきのかかった手法――は、金融界が略奪的貸付や濫用的クレジットカード業務を通じて、貧困者層と情報弱者層から大金を搾り取るというものだ。貧困者のひとりひとりはそれほど金を持っていなくても、大勢の貧困者から少しずつ巻き上げれば、莫大な儲けを手に入れることができる。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(c)自分にとって都合のいい制度を利用して、過剰なリスクを取る。
★(4.2.5)レントシーキングに都合の悪い法律が作られないようにする。政府の規制は少ない方がいい。
(a)ロビー活動と選挙支援に巨額の資金を投資することで、政策決定に影響力を行使する。
(b)反競争的行為が法律で禁止されないようにする。
(c)仮に法律が存在する場合は、実効的な取り締まりが行なわれないようする。
★(4.2.6)税制を、自分に都合のよいものに変える。
(a)ロビー活動と選挙支援に巨額の資金を投資することで、税制の設計に影響力を行使する。
(b)実態が隠蔽できるような複雑さを持った“逆累進課税制度”を実現させる。
★「レントシーキングのゲームに勝利して、アメリカ最上層の多くの人々は財を築いてきた。しかし、富を獲得する方法はレントシーキングだけではない。あとでくわしく説明するが、税制も重要な役割を担っている。最上層の人々は、税制の設計に影響力を行使し、払うべき税金を払わずにすませてきた。彼らの所得に占める税金の割合は、貧困層の人々より低いのである。わたしたちはこのような税制を“逆累進課税制度”と呼ぶ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.7)労働法や会社法を、自分に都合のよいものに誘導する。
★(4.2.8)政府のマクロ経済政策を、自分に都合のよいものに誘導する。
★「中間層の空洞化と貧困層の増加――には、幅広い分野から強い影響力が加えられている。企業を律する法規は、企業内の規範と相互作用を起こし、経営者の行動を誘導するとともに、経営陣とほかの利害関係者(労働者と株主と社債保有者)の利益配分を決定する。また、政府のマクロ経済政策は、労働市場の需給――失業率の水準――を決定する。つまり、労働者の取り分を変化させる市場の仕組みに、政府の政策が影響を与えているわけだ。もしもインフレを恐れる金融当局の行動が、失業率の高止まりを招いた場合、労働者の賃金は抑制されるだろう。これまで、強い労働組合は不平等の縮小をうながしてきたが、組合が弱い企業のCEOは、やすやすと不平等を拡大してきた。CEOたちが市場の力の形成に手を貸し、その力を不平等の拡大に利用することもあった。ともあれ、組合の強弱にしても、企業統治の実効性にしても、金融政策の舵取りにしても、決定に中心的役割を果たすのは政治だ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
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