2022年1月27日木曜日

形而下的なものも精神的なものも、宗教的なまた法的な、経済的また政治的、天真なものも自意識的なものも、あらゆる活動と状態とが、恐怖、利害、愛、恥、畏れと正義感などに刺戟され、秩序や知識や自由や名声や権力や快楽を求めて有機的に組み合わされ、人類の歴史の諸段階を構成する。(アイザイア・バーリン(1909-1997))

摂理に導かれた諸個人の相互作用

形而下的なものも精神的なものも、宗教的なまた法的な、経済的また政治的、天真なものも自意識的なものも、あらゆる活動と状態とが、恐怖、利害、愛、恥、畏れと正義感などに刺戟され、秩序や知識や自由や名声や権力や快楽を求めて有機的に組み合わされ、人類の歴史の諸段階を構成する。(アイザイア・バーリン(1909-1997))

「ライプニッツ(その発展説とヴィーコの説は符合する場合もあるのだが)とは違って、 ヴィーコは、十分な洞察力を具えた理知なら、所与の人間の魂や「時代精神」の構造を見抜く だけで、それがどんなものであり、どんなことをするに違いないかを、先験的に推断し得る―― ひいては全人類の過去・現在・未来の総体を、経験的証拠の助けを借りずに、原則的には算出 できる、というような意味のことは一切言っていない。また17世紀の法理学者、18世紀の啓蒙 思想家の大多数のように、比較的簡単な一群の心理的法則さえあれば、人間の性格と行動とを 分析するのに十分である、とも言わなかった。ヴィーコが作業の基盤においたのはむしろ正反 対の想定である。即ち、現実に起こったことの経験的知識、時には難解で特異なものもある が、この知識に稀有の想像力をかけ合わせてのみ、人間の性格を形造る「永遠な」パターンの 働きや、時空を隔て人種・見解を異にする社会や個人の間にも見られる心理的・社会的構造の 相似・対応の源となっている法則を、明らかにすることができる――この対応ゆえに、幾多の社 会は、互いに異なるとはいえ、一つにまとまり、それぞれあの昇りまた降る大きな螺旋階段の 一環を成すのである。この螺旋形または円環状の構造の各段階が次の段階に移る変わり方は理 解し得る、というのは各段階いずれも、一つの実体――摂理に導かれた創造的人間精神 (mente)――の発達により要請されたものだからである。この「精神」――ヴィーコは往々にし てこの言葉を、摂理に導かれて各人の要求や効用を追いつつ互いに作用し合っている人びと、 と見ているらしい――は、記憶、想像力、理智、ヴィーコの史学観に基づく新方法、これらの力 を借りて、過去における「精神」の諸状態が、未だ完全には実現されたことのない単一究極の 目標に至る諸段階であることを理解し得る。つまり、「精神」の諸能力は、各段階が、適当な 時期に先行する段階の動きによって生じた要求に応えて、生まれ来て、新しい観点、制度、生 活形態、文化、精神と感情の百般の活動と状態との「有機的な」組合せ――形而下的なものも精 神的なものも、宗教的なまた法的な、経済的また政治的、天真なものも自意識的なものも、あ らゆる活動と状態とが、恐怖、利害、愛、恥、畏れと正義感などに刺戟され、秩序や知識や自 由や名声や権力や快楽を求めて組合されたもの――を発生させるのである。このような活動と状 態との総体が、つまり人類の歴史なのだ。」
 (アイザイア・バーリン(1909-1997),『ヴィーコとヘルダー』,ジャン・バッティスタ・ ヴィーコの哲学上の諸観念,第1部 全般にわたる理論,10,pp.158-159,みすず書房(1981), 小池銈(訳))
アイザイア・バーリン
(1909-1997)





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