2020年5月2日土曜日

1938_ジャコモ・リゾラッティ_命題集


《目次》

(1)視覚刺激により発生する体性感覚
 (1.1)体性感覚ニューロン
 (1.2)二重様相(バイモーダル)ニューロン(体性感覚-視覚ニューロン)
 (1.3)三重様相(トリモーダル)ニューロン(体性感覚-視覚-聴覚ニューロン)
(2)視覚刺激により発生する運動感覚の表象
 (2.1)標準(カノニカル)ニューロン
  (2.1.1)対象物の視覚刺激により発生する運動感覚の表象
 (2.2)ミラーニューロン
  (2.2.1)他者の運動行為の視覚刺激により発生する運動感覚の表象
  (2.2.2)他者の運動行為の意味、意図
  (2.2.3)サルとヒトのミラーニューロンの違い
  (2.2.4)ミラーニューロンに関するマーク・ジャンヌローの模倣説
  (2.2.5)マーク・ジャンヌローの模倣説では不十分である
(3)他者の情動表出の視覚刺激により発生する内臓運動の表象
 (3.1)内臓運動の表象
 (3.2)本物の情動が生じる場合と潜在的な場合
 (3.3)相手の情動の理解は複雑な対人関係の基盤
(4)行為の共有空間
(5)情動の共有空間

(1)視覚刺激により発生する体性感覚
  顔、首、腕、手の近くの空間に、体に向って動いて来る3次元物体の視覚刺激を受けると、顔、首、腕、手に対する触覚も同時に発生する。これは、体性感覚と視覚の両方に活性化する二重様相ニューロンが実現している。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))
 (1.1)体性感覚ニューロン
  顔、首、腕、手が、軽く触れられたり、肌を何かがかすったりするような、体の表面の触覚刺激によって活性化する。
 (1.2)二重様相(バイモーダル)ニューロン(体性感覚-視覚ニューロン)
  (a)体性感覚面では、純粋な体性感覚ニューロンと似ている。
  (b)視覚刺激、とくに三次元の物体に反応する。ほとんどは、動いている物、とりわけ、体に向って動いてくる物に反応しやすいが、静止している物に強く反応するものも、あることはある。
  (c)視覚刺激が触覚受容野の近くに現われたときだけしか反応しない。全空間のうち、顔、首、腕、手などそれぞれの体性感覚受容野の周辺に、各固有の形や大きさ、厚み(数センチメートルから40~50センチメートル)を持った、それぞれ固有の視覚受容野が存在する。言い換えると、視覚受容野が、体性感覚受容野の拡張部分を形成している。
 (1.3)三重様相(トリモーダル)ニューロン(体性感覚-視覚-聴覚ニューロン)

(2)視覚刺激により発生する運動感覚の表象
 対象物を見ると、それを操作する運動感覚の表象が伴う。これはカノニカルニューロンが実現している。また、他者の対象物への働きかけを見ると、その運動感覚の表象が伴う。これはミラーニューロンが実現している。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))

 (2.1)標準(カノニカル)ニューロン
  (2.1.1)対象物の視覚刺激により発生する運動感覚の表象
   (a)対象物の視覚刺激(対象物の形、大きさ、向き)に対応して運動特性(すなわち、つかみ方のタイプ)に呼応したニューロンの一部が発火する。
   (b)つかむ、持つ、いじるといった運動行為に対応したニューロンの大多数が発火する。
   (c)その結果、対象物の形、大きさ、向きに応じて決まる、その対象物をつかむ、持つ、いじるといった運動特性に呼応した、運動感覚の表象が現れ、視覚情報を適切な運動行為に変換するプロセスが準備される。

 (2.2)ミラーニューロン
  (2.2.1)他者の運動行為の視覚刺激により発生する運動感覚の表象
   他者が、対象物へ働きかける運動行為を見るとき、その特定のタイプの行為に呼応したニューロンの一部が発火する。例えば、つかむミラーニューロン、持つミラーニューロン、いじるミラーニューロン、置くミラーニューロン、両手で扱うミラーニューロン。運動行為の視覚情報には、次のような特徴がある。
   (a)カノニカルニューロンとは違い、食べ物や立体的な対象物を見たときには発火しない。
   (b)手や口や体の一部を使って、対象物へ働きかける行動を見たときに限られ、腕を上げるとか手を振るといったパントマイムのような行為、対象物のない自動詞的行為には反応しない。
   (c)見えた行為の方向や、実験者の手(右か左か)に影響されるように思える場合もある。
   (d)観察者と観察される行為との距離や相対的位置関係にはほとんど影響されずに発火する。
   (e)視覚刺激の大きさに影響されることもない。
   (f)2つ、あるいはめったにないが3つの運動行為のいずれかを観察すると発火するニューロンもあるようだ。
  (2.2.2)他者の運動行為の意味、意図
   その結果、他者が対象物へ働きかける運動行為を見るとき、その対象物をつかむ、持つ、いじるといった運動特性に呼応した、運動感覚の表象が現れ、他者の行為の意味が感知できる。
    他者が対象物へ働きかける運動行為を見るとき、その対象物をつかむ、持つといった運動特性に呼応した、観察者が知っている運動感覚の表象が自動的に現れる。この表象が行為の「意味」であり、他者の「意図」である。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))
   (a)他者が、対象物へ働きかける運動行為を見る。(視覚情報)
   (b)観察者の運動レパートリーに属している、その対象物をつかむ、持つ、いじるといった対象物を扱う様相によって特徴づけられる特定のタイプの行動の運動感覚の表象が現れる。これは、同一であるとか類似しているという内省や知識に基づくものではなく、自動的に現われる。
   (c)運動感覚の表象は、観察者自身を統制する運動行為の表象と同じであり、この運動感覚の表象が、観察された運動行為の「意味」であり、その行動をする他者の「意図」である。
   (d)従って、他者の運動行為が始まると、たとえその行為が完遂されなくても、その意味と意図は直ちに感知される。
   (e)他者の、あるタイプの行為を別のタイプの行為と区別することが可能となり、最適な反応をすることができる。

  (2.2.3)サルとヒトのミラーニューロンの違い
    サルとヒトのミラーニューロンの違い:ヒトは、広範囲の皮質を含む、自動詞的な運動行為にも反応する、個々の動きと行為の目的の両方を捉える、行為の真似に対しても反応する。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))
   (a)ヒトでは、サルの場合よりも広範囲の皮質を含むように見える。
   (b)ヒトのミラーニューロン系は「他動詞的」な運動行為と「自動詞的」な運動行為の両方をコードする。
   (c)ヒトは、運動行為の目的と、行為を構成する個々の動きの両方をコードすることができる。
   (d)ヒトの場合、「他動詞的」な運動行為において、対象物への実際の働きかけは絶対条件ではない。行為を真似ただけのときも、活性化できる。

  (2.2.4)ミラーニューロンに関するマーク・ジャンヌローの模倣説
    ミラーニューロンの機能は、他者の行為の模倣である。すなわち、実際の行為のときに活性化される運動感覚と著しく類似した、内的な運動表象を作り上げる。(マーク・ジャンヌロー(1935-2011))
   (a)特定の運動行為に対応したニューロンが発火するのは、カノニカルニューロンと同じである。
   (b)他者の行為を観察したとき、観察者の脳に潜在的な運動行為が生成される。それは、その行為を実際に構成・実行するときに行為者の脳内で自発的に活性化される運動行為と、著しい類似性を見せる。ただし、それは、「内的な運動表象」として潜在的な段階にとどまる。

  (2.2.5)マーク・ジャンヌローの模倣説では不十分である
    模倣による学習や、模倣による行為の再現のためには、ミラーニューロン系の存在が必要ではあるが、十分ではない。ミラーニューロン系を制御する他の皮質野の介入が必要である。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))
   (a)ミラーニューロンの機能
     他者が対象物へ働きかける運動行為を見るとき、その対象物をつかむ、持つといった運動特性に呼応した、観察者が知っている運動感覚の表象が自動的に現れる。この表象が行為の「意味」であり、他者の「意図」である。
   (b)ミラーニューロンの抑制機能
    抑制機能がないと、目にした運動行為が自動的に再現されてしまう。実際、前頭葉に広範囲の損傷がある患者は、目にした他者の行為、とくに治療してもらっている医師の行為を繰り返してしまう。また、他者の行為を反射的に模倣してしまう「反響動作症」という障害も存在する。
   (c)潜在的行為を実際の運動行為の実行へと移行させる促進機能
    模倣による学習や、運動レパートリーに属している行為を実際に再現するためには、ミラーニューロン系以外の皮質野の介入を必要とする。潜在的行為を、実際の運動行為の実行へと移行される促進機能も必要である。

(3)他者の情動表出の視覚刺激により発生する内臓運動の表象
  他者の情動の表出を見るとき、その情動の基盤となっている内臓運動の表象が現れ、他者の情動が直ちに感知される。これは潜在的な場合もあれば実行されることもあり、複雑な対人関係の基盤の必要条件となっている。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))

 (3.1)内臓運動の表象
  他者の情動の表出を見るとき、その情動の基盤となっている内臓運動の表象が現れ、他者の情動が直ちに感知できる。
  (a)他者が、情動を感じている表情を見る。(視覚情報)
  (b)観察者の情動の基盤となっている内臓運動に関係する神経構造が、自動的に活性化される。
  (c)これにより、他者の情動が、直ちに了解される。ただし情動は、それが他者の表情や行為にどう表れているかに関係する、感覚的側面の内省的処理によって理解される場合もあるかもしれない。
 (3.2)本物の情動が生じる場合と潜在的な場合
  島の活性化によって引き起こされる内臓運動反応の周囲にある中枢は、潜在的な内臓運動活動を表象しており、それが実行されることもあれば、潜在的な状態にとどまることもある。
 (3.3)相手の情動の理解は複雑な対人関係の基盤
  このような情動の理解は、「同情」のための前提だ。しかし「同情」には他の要因も必要となる。例えば、相手が誰なのか、相手とどういう関係にあるのか、相手の立場になったところを想像できるか、相手の情動の状態や願望や期待といったものに対して責任を引き受ける気があるかなどだ。

(4)行為の共有空間
  2人以上の行為者が、相手の行為の意図を互いに、自己の潜在的運動行為として自動的に了解し合っているとき、この相互関係の状況を「行為の共有空間」と呼ぶ。これは、ミラーニューロンが実現している。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))

 (a)観察者A=行為者A
  (a1) 他者が対象物へ働きかける運動行為を見るとき、その対象物をつかむ、持つといった運動特性に呼応した、観察者が知っている運動感覚の表象が自動的に現れる。この表象が行為の「意味」であり、他者の「意図」である。
  (a2)すなわち、行為者Bの行為が、単独の行為であっても行為の連鎖であっても、観察された状況に最もふさわしい型の観察者Aの潜在行為として表象され、行為者Bが好むと好まざるとにかかわらず、観察者Aに対して意味を持つ。ここでは、意図的な「認知作業」はいっさい必要ない。
 (b)行為者B=観察者B
  同時にBは、Aの行為を見るとき、その行為はただちにBに対して意味を持つ。
 (c)このように、2人以上の行為者が、相手の行為の意図を互いに、自己の潜在的運動行為として自動的に了解し合っているとき、この相互関係の状況を「行為の共有空間」と呼ぶ。これは、ミラーニューロンが実現している。

(5)情動の共有空間
  2人以上の情動表出者が、相手の情動を互いに、自己の内臓運動の表象として自動的に了解し合っているとき、この相互関係の状況を「情動の共有空間」と呼ぶ。これは、ミラーニューロンが実現している。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))

 (a)観察者A=情動表出者A
  (a1) 他者の情動の表出を見るとき、その情動の基盤となっている内臓運動の表象が現れ、他者の情動が直ちに感知される。これは潜在的な場合もあれば実行されることもあり、複雑な対人関係の基盤の必要条件となっている。  (b)情動表出者B=観察者B
  同時にBは、Aの情動表出を見るとき、Bの情動を直ちに感知する。
 (c)このように、2人以上の情動表出者が、相手の情動を互いに、自己の内臓運動の表象として自動的に了解し合っているとき、この相互関係の状況を「情動の共有空間」と呼ぶ。これは、ミラーニューロンが実現している。


(出典:wikipedia
ジャコモ・リゾラッティ(1938-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「みなさんは、行為の理解はまさにその性質のゆえに、潜在的に共有される行為空間を生み出すことを覚えているだろう。それは、模倣や意図的なコミュニケーションといった、しだいに複雑化していく相互作用のかたちの基礎となり、その相互作用はますます統合が進んで複雑化するミラーニューロン系を拠り所としている。これと同様に、他者の表情や動作を知覚したものをそっくり真似て、ただちにそれを内臓運動の言語でコードする脳の力は、方法やレベルは異なっていても、私たちの行為や対人関係を具体化し方向づける、情動共有のための神経基盤を提供してくれる。ここでも、ミラーニューロン系が、関係する情動行動の複雑さと洗練の度合いに応じて、より複雑な構成と構造を獲得すると考えてよさそうだ。
 いずれにしても、こうしたメカニズムには、行為の理解に介在するものに似た、共通の機能的基盤がある。どの皮質野が関与するのであれ、運動中枢と内臓運動中枢のどちらがかかわるのであれ、どのようなタイプの「ミラーリング」が誘発されるのであれ、ミラーニューロンのメカニズムは神経レベルで理解の様相を具現化しており、概念と言語のどんなかたちによる介在にも先んじて、私たちの他者経験に実体を与えてくれる。」
(ジャコモ・リゾラッティ(1938-),コラド・シニガリア(1966-),『ミラーニューロン』,第8章 情動の共有,紀伊國屋書店(2009),pp.208-209,柴田裕之(訳),茂木健一郎(監修))
(索引:)

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内発的な意識過程には、発生時刻への主観的な遡及を可能にする脳活動がないのに、遅延のない連続的でなめらかな流れが意識される。これは、異なる複数の現象がオーバーラップして実現していると思われる。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

連続した意識の流れ

【内発的な意識過程には、発生時刻への主観的な遡及を可能にする脳活動がないのに、遅延のない連続的でなめらかな流れが意識される。これは、異なる複数の現象がオーバーラップして実現していると思われる。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

(e)継続した意識の流れは、どのように生じているのか。
 (i)意識的な感覚の、時間的に逆行する主観的な遡及
   意識的な感覚は、刺激を受けた時刻より約0.5秒遅れて発生するが、意識の内容は、刺激の発生時刻を指し示す。もしこれが、初期EP反応だけで実現されていたとしても、「適切な脳機能の創発特性」として十分あり得ることだ。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))
 (ii)自発的な行為への意識を伴う意図
  自発的な行為への意識を伴う意図が、内発的に立ち現れる場合、その体験の主観的なタイミングは、自発的な行為を導き出す脳活動の始動後400ミリ秒間かそれ以上、事実上遅延することが、実験によって示されている。
 (iii)内発的な意識過程には、遅延が発生すると思われるが、実際は違う
  遡及に必要な初期EP反応がない内発的な過程においては、500ミリ秒間の神経活動によって初めて、意識事象が始まるとしたら、一連の意識事象は継続した流れとしては現れず、非連続的なものになると思われる。ところが、私たちの意識を伴う日常生活の中で、断続性は感じられない。
 (iv)仮説:非連続的である異なる精神現象がオーバーラップしている。
  私たちの一連の思考のスムーズな流れという主観的な感情は、異なる精神現象がオーバーラップしているということで、説明できると思われる。内在している事象が非連続的であるにもかかわらず、全体としてなめらかで連続性のある産物を生み出している。

 「(7) 継続した意識の流れについて人々がよく知っている概念というのは、意識的なアウェアネスのタイム-オン(持続時間)の必要条件と矛盾しています。意識の流れについての概念は、偉大な心理学者であるウィリアム・ジェームズが、彼自身が意識を伴う思念について直感的に理解したことに基づいて提唱したものです。多くの心理学者や、フィクション作家たちが、被験者または登場人物の精神活動の真の特質に、意識の流れについての考え方を取り入れてきました。しかし、《意識を伴う思考プロセスには非連続的な独立した事象》が含まれていなければならないことを、私たちの証拠は示しています。もし、必要条件である500ミリ秒間の神経活動によって引き起こされる大幅な遅延の後に初めてそれぞれの意識事象が始まるとしたら、一連の意識事象は継続した流れとしては現れません。それぞれの意識事象においてのアウェアネスは、最初の500ミリ秒付近には存在しないのです。
 一連の意識事象の非連続性には、直感に反した特徴があります。それは人々が経験しているものとは異なります。私たちの意識を伴う日常生活の中で、断続性は感じられません。感覚経験の場合、私たちの連続性の感覚は、次のように説明できます。すなわち、それぞれの経験が、感覚刺激から10~20ミリ秒以内の速さで誘発された感覚皮質の反応へと時間的には逆向きに、そして自動的かつ主観的に遡及される、ということです。主観的には、感覚事象に対するアウェアネスの中で、感知できるほどの遅延を人はまったく知覚していません。私たちの実験では、刺激に気づき始めることが可能になる時点よりも500ミリ秒も前に、人は感覚刺激に気づいていたと思っていることが示されています。この矛盾は事実に基づいて理解できるようになりました。したがってもはや、理論上の推測などではありません。この現象を私たちは「意識を伴う感覚的なアウェアネスについての、時間的に逆行する主観的な遡及」と名づけました。
 しかし、この特性は、行為への意識を伴う意図や、思考事象を含めたすべての種類の意識経験にも一般的に適用できるわけではありません。私たち(リベット他(1979年))は、感覚経験だけを考えて、主観的な遡及(時間的な前戻し)を提案しました。その場合においてさえ、感覚入力によって早いタイミングの信号である初期誘発電位反応が感覚皮質から引き出されたときにだけ、前戻しが起こります。自発的な行為への意識を伴う意図が、内発的に立ち現れる場合、その体験の主観的なタイミングは、自発的な行為を導き出す脳活動の始動後400ミリ秒間かそれ以上、事実上遅延することを私たちは実験によって示してきました(第4章)。外部から後押しする手がかりがない場合の意識を伴う行為を促す意図は、脳内で生じる(つまり、内発的である)意識経験の一例です。ここには、元来内発的ではない感覚システムの刺激への反応がないため、初期誘発電位反応は存在しません。
 私たちの一連の思考のスムーズな流れという主観的な感情は、異なる精神現象が《オーバーラップ》しているということで、おそらく説明がつくでしょう。脳は、ほとんど同時に複数の意識事象を、時間的にオーバーラップさせて起こすことができるようです。内在している事象が非連続的であるにもかかわらず、全体としてなめらかで連続性のある産物をどのように生み出しているかを理解するために、筋肉の動きの生理機能を考えてみましょう。上腕二頭筋のような骨格筋は、それぞれが多数の筋肉細胞や繊維を含む多くの運動ユニットから成り立っています。肘を屈曲させるように、二頭筋をなめらかに収縮すると、どの単独の運動ユニットの動きにおいても1秒間につきおよそ10回という比較的低い割合で「収縮活動している」ことが電気記録で見られるでしょう。個々の運動反応についての直接研究によると、1秒間につき10回の筋収縮は、なめらかに維持している収縮とは違って、小刻みに変化し、波状に動きます。このように、二頭筋の全体としてはなめらかな運動ユニットと活性化する神経細胞の発火活動に《ずれ》が生じた結果として説明がつきます。さまざまな個々の運動ユニットにおける波状の収縮は、こうして時間的にオーバーラップします。」(後略)
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第3章 無意識的/意識的な精神機能,岩波書店(2005),pp.131-134,下條信輔(訳))
(索引:)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

ベンジャミン・リベット(1916-2007)
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