2018年7月26日木曜日

麻痺した幻肢を持つ患者に、鏡の箱を使って、健常な腕の視覚、運動感覚を幻肢と重なるように与えると、幻肢の健常な身体感覚を回復させ、幻肢の麻痺と痛みを伴う痙攣発作を軽減させた。(ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-))

鏡の視覚フィードバック(MVF)実験

【麻痺した幻肢を持つ患者に、鏡の箱を使って、健常な腕の視覚、運動感覚を幻肢と重なるように与えると、幻肢の健常な身体感覚を回復させ、幻肢の麻痺と痛みを伴う痙攣発作を軽減させた。(ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-))】
(a)事例:健全な右腕と幻の左腕を持っているある患者の事例である。彼の左の幻肢は麻痺しており、痛みをともなう痙攣が起きやすく、どうすることもできなかった。
(b)鏡の視覚フィードバック(MVF)実験
 (1)鏡の左側に麻痺した幻肢をのばし、箱の右側をのぞきこんで、右手の位置を注意深く決め、その鏡像が、幻肢があると感じられる位置とぴったり重なるようにした。それはただちに、幻肢が復活したという衝撃的な視覚上の印象を彼にもたらした。
 (2)私は彼に、そのまま鏡をのぞきながら、両方の腕と手で鏡像対象の運動をするように頼んだ。すると彼は、「もとどおりになったみたいだ!」と叫んだ。幻肢が自分の指令にしたがっているという鮮明な印象があるだけでなく、驚いたことに、痛みをともなう痙攣発作も何年ぶりかに軽減しはじめた。
(c)「鏡の視覚フィードバック(MVF)」が彼の脳に、学習された麻痺の「脱学習」をさせたかのようだった。

(a)
幻の     健全な
左腕     右腕

(b)
──┐
  │鏡
幻の│面   健全な
左腕│    右腕
  │


 「では、麻痺した幻肢をもっている人がこの鏡の箱を使ったらどうなるか見てみよう。私たちが最初にこの箱を試したのはジミーという名の患者で、健全な右腕と幻の左腕をもっていた。彼の麻痺した幻肢はマネキンの樹脂製の前腕のように、断端から突き出ていた。さらに悪いことに、痛みをともなう痙攣が起きやすく、かかりつけの医師たちはそれをどうすることもできなかった。私は彼に鏡の箱を見せ、これから試みることはやや奇抜に思えるかもしれないし、効果があるという保証もないと説明したが、彼は、試しにやってみますと明るく言った。そして鏡の左側に麻痺した幻肢をのばし、箱の右側をのぞきこんで、右手の位置を注意深く決め、その鏡像が、幻肢があると感じられる位置とぴったり重なるようにした。それはただちに、幻肢が復活したという衝撃的な視覚上の印象を彼にもたらした。私は彼に、そのまま鏡をのぞきながら、両方の腕と手で鏡像対象の運動をするようにたのんだ。すると彼は、「もとどおりになったみたいだ!」と叫んだ。幻肢が自分の指令にしたがっているという鮮明な印象があるだけでなく、驚いたことに、痛みをともなう痙攣発作も何年ぶりかに軽減しはじめた。それはあたかも、「鏡の視覚フィードバック(MVF)」が彼の脳に、学習された麻痺の「脱学習」をさせたかのようだった。」
(ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-),『物語を語る脳』,第1章 幻肢と可塑的な脳,(日本語名『脳のなかの天使』),角川書店(2013),pp.59-60,山下篤子(訳))
(索引:幻肢,鏡の視覚フィードバック実験)

脳のなかの天使



(出典:wikipedia
ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「バナナに手をのばすことならどんな類人猿にもできるが、星に手をのばすことができるのは人間だけだ。類人猿は森のなかで生き、競いあい、繁殖し、死ぬ――それで終わりだ。人間は文字を書き、研究し、創造し、探究する。遺伝子を接合し、原子を分裂させ、ロケットを打ち上げる。空を仰いでビッグバンの中心を見つめ、円周率の数字を深く掘り下げる。なかでも並はずれているのは、おそらく、その目を内側に向けて、ほかに類のない驚異的なみずからの脳のパズルをつなぎあわせ、その謎を解明しようとすることだ。まったく頭がくらくらする。いったいどうして、手のひらにのるくらいの大きさしかない、重さ3ポンドのゼリーのような物体が、天使を想像し、無限の意味を熟考し、宇宙におけるみずからの位置を問うことまでできるのだろうか? とりわけ畏怖の念を誘うのは、その脳がどれもみな(あなたの脳もふくめて)、何十億年も前にはるか遠くにあった無数の星の中心部でつくりだされた原子からできているという事実だ。何光年という距離を何十億年も漂ったそれらの粒子が、重力と偶然によっていまここに集まり、複雑な集合体――あなたの脳――を形成している。その脳は、それを誕生させた星々について思いを巡らせることができるだけでなく、みずからが考える能力について考え、不思議さに驚嘆する自らの能力に驚嘆することもできる。人間の登場とともに、宇宙はにわかに、それ自身を意識するようになったと言われている。これはまさに最大の謎である。」
(ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-),『物語を語る脳』,はじめに――ただの類人猿ではない,(日本語名『脳のなかの天使』),角川書店(2013),pp.23-23,山下篤子(訳))

ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン(1951-)
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