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2018年4月22日日曜日

人の君主というものは、刑と徳とによって臣下を制御するものである。賞罰権を手放してはならない。また注意すべきは、言うことが小さいのに実際の業績は大きいという者も罰する必要があるということだ。(韓非(B.C.280頃-B.C.233))

賞罰権

【人の君主というものは、刑と徳とによって臣下を制御するものである。賞罰権を手放してはならない。また注意すべきは、言うことが小さいのに実際の業績は大きいという者も罰する必要があるということだ。(韓非(B.C.280頃-B.C.233))】
1.5 臣下の知恵・才能を最大限発揮させる
 知恵者たちにその知恵を出しつくさせたうえで、君としてそれをふまえて物事を裁断する。賢者たちにその才能を発揮させたうえで、君としてそれをふまえて仕事をまかせてゆく。群臣にその武勇のありたけをつくさせ、苦労なことをひき受けさせ、主君は仕事の成果をわが物とする。こうすれば、功績があがれば君主が優秀だからだとし、過失があれば臣下の責任だとし、自分の名誉を守ることもできる。
1.6 臣下の意見と仕事の実績を査定し賞罰を与える
 人の君主というものは、刑と徳とによって臣下を制御するものである。賞罰権を手放してはならない。
1.6.1 意見のある者には自分から進んで言論を述べさせる。
1.6.2 君主はその意見によってそれに見あう仕事を与え、その仕事によってそれに応じた実績を要求する。
1.6.3 実績がその仕事にかなっており、仕事の内容がさきの意見どおりであれば賞を与えるが、実績がその仕事に相応せず、仕事の内容がさきの意見と違っておれば罰を与える。名君の道としては、臣下が意見を述べながら、その仕事がそれに相応しないということは、許されない。
1.6.3.1 言うことは大きいくせに実際の業績は小さいという者は処罰するが、これは業績があがらないことを罰するのではない。実際の実績が進言したことばと一致しないことを罰するのである。
1.6.3.2 言うことが小さいのに実際の業績は大きいという者もまた罰するが、これは大きな業績を歓迎しないというわけではない。進言したことばと実際の業績とが一致しないというその害の方が、大きな業績があがったことよりも重大だと考えるから、そこで罰するのである。
1.6.3.2.1 害悪その1:意見によってそれに見あう仕事を与える際に、もし臣下の言うことが小さすぎるならば、知恵者たちにその知恵を出しつくさせて、最適な判断を下すことができなくなる。
1.6.3.2.2 害悪その2:もし大きい業績を無条件に賞賛すれば、自分の職務をこえる者も出てくるだろう。これは決して許されることではなく、職分をこえれば死刑にされてもおかしくはない。
1.6.3.2.3 害悪その3:もし大きい業績を無条件に賞賛すれば、群臣たちは私的な党派を組んで助けあうというようなこともでてくるだろう。
 「そもそも、虎が犬に勝てるわけは、虎に爪と牙があるためである。もし虎からその爪と牙とを取り去って、犬の方にそれを使わせたなら、虎はかえって犬に負かされるであろう。人の君主というものは、刑と徳とによって臣下を制御するものである。ところが、もし人の上に立つ君主が、その刑と徳との二つの柄を捨て去って臣下にそれを勝手に使わせたなら、君主はかえって臣下に制御されることになるであろう。」(中略)
 「君主が臣下の悪事を止めたいと思えば、臣下の実績と名目とをつきあわせてよく調べよ、というのは、その進言したことばと実際に行った仕事とのことである。人の臣たる者がその意見を述べると、君主はその意見によってそれに見あう仕事を与え、専らその仕事についてそれに応じた実績を要求する。そして、実績がその仕事にかなっており、仕事の内容がさきに述べた意見どおりであれば賞を与えるが、実績がその仕事に相応せず、仕事の内容がさきの意見どおりでなければ罰を与える。だから、群臣のなかで、言うことは大きいくせに実際の業績は小さいという者は処罰するが、これは業績があがらないことを罰するのではない。実際の実績が進言したことばと一致しないことを罰するのである。群臣のなかで、言うことが小さいのに実際の業績は大きいという者もまた罰するが、これは大きな業績を歓迎しないというわけではない。進言したことばと実際の業績とが一致しないというその害の方が、大きな業績があがったことよりも重大だと考えるから、そこで罰するのである。」(中略)「だから、賢明な君主が臣下を養うばあいには、臣下は自分の職務をこえて業績をあげることは許されず、意見を進言してそれが実際の仕事に一致しないということも許されない。職分をこえれば死刑にされ、ことばと仕事が一致しなければ罪になる。それぞれの官職ごとに職分が守られ、進言したことがぴったり行われるということなら、群臣たちは私的な党派を組んで助けあうということもできないのである。」
(韓非(B.C.280頃-B.C.233)『韓非子』二柄 第七、(第1冊)p.114,117-118、岩波文庫(1994)、金谷治(訳))
(索引:賞罰権、刑、徳)
(原文:7.二柄韓非子法家先秦兩漢中國哲學書電子化計劃

韓非子 (第1冊) (岩波文庫)



韓非(B.C.280頃-B.C.233)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)
(出典:twwiki
「国を安泰にする方策として七つのことがあり、国を危険にするやり方として六つのことがある。
安泰にする方策。第一は、賞罰は必ず事の是非に従って行うこと、第二は、禍福は必ず事の善悪に従ってくだすこと、第三は、殺すも生かすも法のきまりどおりに行うこと、第四は、優秀か否かの判別はするが、愛憎による差別はしないこと、第五は、愚か者と知恵者との判別はするが、謗ったり誉めたりはしないこと、第六は、客観的な規準で事を考え、かってな推量はしないこと、第七は、信義が行われて、だましあいのないこと、以上である。
 危険にするやり方。第一は、規則があるのにそのなかでかってな裁量をすること、第二は、法規をはみ出してその外でかってな裁断をくだすこと、第三は、人が受けた損害を自分の利益とすること、第四は、人が受けた禍いを自分の楽しみとすること、第五は、人が安楽にしているのを怯かして危うくすること、第六は、愛すべき者に親しまず、憎むべき者を遠ざけないこと、以上である。こんなことをしていると、人々には人生の楽しさがわからなくなり、死ぬことがなぜいやなのかもわからなくなってしまう。人々が人生を楽しいと思わなくなれば、君主は尊重されないし、死ぬことをいやがらなくなれば、お上の命令は行われない。」
(韓非(B.C.280頃-B.C.233)『韓非子』安危 第二十五、(第2冊)pp.184-185、岩波文庫(1994)、金谷治(訳))
(原文:25.安危韓非子法家先秦兩漢中國哲學書電子化計劃

韓非(B.C.280頃-B.C.233)
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